2017年も約1ヶ月が過ぎ、確定申告の季節が近づいてきました。この時期はどの個人事業者様も確定申告の準備に追われているかと思います。

個人事業を初めて1年目の方の中には、確定申告がそもそもどういう手続なのかをよく知らない方もいらっしゃるかもしれません。今回は確定申告の意味、方法、期間などをまとめてざっくり説明させていただきます。

確定申告は所得を確定し申告する手続き

確定申告とは、個人事業主の1年の所得を確定させ、そのことを申請する手続きのことです。売上、経費、所得、課税所得、税額などをまとめて計算し、確定申告書類にそのことを記載して、2月16日~3月15日(曜日の関係で前後することがあります)に税務署に提出し、後日税金を支払います。

会社員の場合は通常、会社が確定申告をしてくれるので自分でする必要はありませんが、個人事業主の場合は原則自分でやらなければなりません。

所得税と住民税は所得に比例する

今の日本には所得税、住民税、法人税、自動車税、消費税、揮発油税など様々な税金がありますが、確定申告は基本的には所得税と住民税の金額を確定させるための手続きです。そして、所得税と住民税は、どちらも所得(正確には課税所得、意味は後述)に比例します。所得税は所得の金額に応じて0~40%の累進課税制、住民税は一律10%で、控除があります。

また、前年の所得が290万円を超えている場合は個人事業税を、前々年の課税売上高が1000万円を超えている場合は消費税を納付する必要があります。

支払期日は税金によって異なる

税金の支払期日はまちまちです。所得税は原則として、確定申告書類の提出期限、つまり通常は3月15日までに現金で納付する必要があります。ただし、銀行口座からの口座振替を利用する場合は、支払日が少し遅くなります。2017年の場合は、口座振替を選択すると4月20日まで支払いが猶予されます。

住民税は確定申告と同時に支払う必要はありません。確定申告を済ませると、6月上旬から中旬頃に住民税の通知が送られてきます。この通知に従って住民税を払います。支払い方法には一括と分割があり、一割の場合は6月にまとめて払います。分割の場合は6月、8月、10月、翌年1月の4回に分けて払います。

個人事業税は8月に納税通知書が送られてきます。(納税通知書が来ない場合は個人事業税は発生していないので支払う必要はありません)、納税は8月と11月に2回庭けて行います。

消費税の納付期限は3月31日までです。

なお、確定申告の納税方法には現金払い(金融機関やコンビニ、税務署で直接支払う)と口座振替、電子納税の中から選ぶことができます。口座振替や電子納税は便利ですが、事前の届け出が必要になります。

確定申告をしないと追徴課税が発生する

確定申告をしなかった場合、もしくはしたものの所得に記入漏れがあった場合などは、追徴課税が発生します。追徴課税とは簡単に言えば税金が高くなる仕組みのことです。税金を本来払うべき金額納めかなった場合は、余計に税金が高くなってしまうのです。

追徴課税には過少申告加算税(修正申告の場合に課される)、無申告加算税(期限後に申告した場合に課される)、不納付加算税(期限後に納付する場合に課される)、重加算税(隠匿や偽装をした場合に課される)があります。いずれの場合も追徴課税利率は10%以上です。追徴課税など支払っても何もいいことはないので、必ず期限内に申告漏れがないように申告しましょう。

確定申告は日々の帳簿付けから

確定申告は年に1回だけ行うものですが、その念に1回の確定申告を行うためには様々な準備が必要になります。中でも帳簿付けはすべての個人事業主に欠かせないものです。帳簿とは決算書作成のために作る、売上や経費などを記録するものです。ものすごく大雑把に言えば、家計簿やお小遣い帳を複雑にしたものです。確定申告の書類は必ず帳簿をもとに作ります。逆に言えば、帳簿がなければ確定申告もできないわけです。

帳簿には主要簿と補助簿があります。主要簿は取引全体を記録するためのもので、複式簿記という簿記を採用する場合は必ず作成しなければなりません。主要簿には仕訳帳と総勘定元帳があります。

一方、補助簿は必要に応じて補助的に作成するものです。こちらは必ず作成しなければならないものではありませんが、作成しておくと後でお金がどのように動いているのかを確認しやすくなります。

青色申告で税金が安くなる

先ほど複式簿記という単語が出てきたのでこちらについてもちょっと説明します。簿記には複式簿記と単式簿記の2種類があります。簡単に言えば複式簿記は複雑な簿記、単式簿記は単純な簿記です。帳簿は複式簿記か単式簿記、どちらかでつけていきます。どちらを選んでもいいのなら単純な単式簿記のほうがいいと思われるかもしれませんが、一概にそうとも言えません。

実は確定申告には青色申告と白色申告があります。青色申告をすると、白色申告よりも税金を安くすることができます。例えば、所得が400万円、所得控除(後述)が38万円の場合、白色申告を選ぶと所得税と住民税の合計額は約67万円になりますが、青色申告だと約51万円になります。つまり、青色申告のほうが約16万円も節税効果があるわけです。実際には国民健康保険料も青色申告のほうが安くなるため、メリットはさらに大きくなります。

また、それ以外にも赤字が繰り越せたり、親族への給料を経費にできたりと、青色申告には様々なメリットがあります。

しかし、青色申告を行うためには原則として複式簿記で帳簿を作成しなければなりません。単式簿記の場合は、節税効果がない白色申告しか選べないのです。

専用ソフトやクラウドなら簡単に書類が作れる

かつては複式簿記は知識がなければできないものでしたが、現代では複式簿記と青色申告のための専用ソフトや専用クラウド(オンラインで利用できるサービス)がたくさんあるため、それを使えば知識は殆どなくても複式簿記で帳簿を作成できます。ソフトやクラウドを利用するためにはライセンス料が必要になりますが、せいぜい年間で1万円程度なので、節税メリットのほうが遥かに大きいです。ある程度所得がある場合は、青色申告を選んだほうがいいでしょう。

青色申告の手続きは前年中に行う

青色申告をする場合、最寄りの税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。提出期限は個人事業を新規開業してから2ヶ月(1月1日~1月15日開業の場合は3月15日まで)です。また、白色申告から青色申告に変更する場合は、変更する年の3月15日が提出期限です。

例えば、2016年3月30日に開業した場合は、2016年5月30日までに申請書を提出すれば、2017年に2016年分の確定申告を青色申告で行えるようになるわけです。提出していなかった場合は白色申告しか選べません。

なお、青色申告への申請は1回済ませれば翌年以降も青色申告を自動的に選ぶことになります。再び白色申告に戻したいという場合を除いて、何か申請する必要はありません。

確定申告に於ける「収入」「所得」「課税所得」の違い

収入と所得と課税所得は確定申告においては全く違う意味の言葉ですので注意が必要です。

収入とは簡単に言えば、売上、年商のことです。つまり、1年間にいくらお金が入ってきたか、を示す数字です。

一方、所得とは収入から必要経費を引いたものです。通常、事業には経費がかかります。例えば飲食店経営ならば食材や飲料の仕入れ、厨房器具の購入、店舗の家賃、コックやウエイターへの給料などが必要経費になります。仮に収入が2000万円あっても、経費が800万円かかっている場合、所得は1200万円となります。

課税所得とは、所得から所得控除を差し引いたもので、これが実際の税金の計算に使われます。所得控除とは、一定の条件を満たした場合に、課税所得を減らせる仕組みのことです。

例えば社会保険料を払っている場合は社会保険料控除が受けられますし、本人や家族に障害者がいる場合は障害者控除が受けられます。控除は全部で14種類あります。

所得が1200万円で、所得控除が200万円の場合、課税所得は1000万円となります。この1000万円をもとに実際の税額が計算されます。

つまり、経費や所得控除が増えれば、課税所得が減って税金が安くなるわけです。

確定申告に必要な書類

白色申告の場合は、以下の書類が必要になります。

  • 収支内訳書
  • 確定申告書B

青色申告の場合は、以下の書類が必要になります。

  • 所得税青色申告決算書
  • 確定申告書B

いずれの場合も、確定申告専用のソフトやクラウドなどを使えば簡単に印刷できます。これらの書類はいずれも税務署でも配布されていますので、手書きで提出しても全く問題ありません(面倒なのでオススメはしませんが)。

また、特定の条件をみたす場合は、添付書類も提出しなければなりません。前述の所得控除を受ける場合は、所得控除証明書と呼ばれる証明書を添付します。国税庁のウェブサイトで控除証明書を貼るための台紙がダウンロードできるので、それに各所得控除証明書を糊付けしてください。

控除証明書は種類にもよりますが、多くのものは10月~当年の1月ぐらいに送付されてきます。例えば、国民健康保険領の支払いを証明する控除証明書は前年の年末に日本年金機構から送付されてきます。生命保険料の支払いを証明する生命保険料控除証明書は、同時期に生命保険会社から送付されてきます。送られてこない、もしくは紛失してしまったという場合は、各機関まで連絡しましょう。

なお、国民年金保険料の支払いのを証明する控除証明書は発行されませんので、必然的に添付する必要もありません。確定申告の際に控除額を提出書類に記載するだけでOKです。

確定申告にマイナンバーは必要?

国税庁のウェブサイトには、このような記載があります。

Q2-3-2 申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号を記載していない場合、税務署等で受理されないのですか。

(答)税務署等では、社会保障・税番号<マイナンバー>制度導入直後の混乱を回避する観点などを考慮し、申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合でも受理することとしていますが、マイナンバー(個人番号)・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出してください。なお、記載がない場合、後日、税務署から連絡をさせていただく場合があります。

この記述だけを見れば、マイナンバーを記載しなくても受理されるはずですが、一方で義務なので正確に記載して提出してくださいとも書いてあります。なんとも煮え切らない書き方でもやもやしますが、当サイトでは基本的にマイナンバーを書いた上で提出することをおすすめします。後で面倒になっても困りますからね。

通知カードを受けったけれど紛失してしまったという場合は、市区町村役場まで問い合わせましょう。再発行には数週間程度時間がかかるので、早めに連絡してください。なお、自治体によっては、住民票の写しを発行するだけでもマイナンバーが確認できるケースがあります。

確定申告の提出方法は3種類

確定申告書類の提出方法は全部で3つあります。手渡しで提出するか、郵送するか、e-Taxというシステムでインターネットを通じて提出するかです。税務署で提出する場合は、必ず所轄の税務署で提出しなければなりません。所轄の税務署がわからないという場合は、国税庁のホームページから検索してみてください。

確定申告が間に合わない場合はどうする?

確定申告は前述の通り原則として3月15日までに終わらせなければなりませんが、仕事の都合などでどうしても3月15日までに終わらせられないこともあるかもしれません。間に合わなかった場合は、延滞日数に応じて延滞税がかかってしまいます。

また、青色申告の基礎控除額が減らされたり、それが続くと青色申告の権利自体が取り消されてしまったりすることもあります。いいことなどなにもないので、必ず間に合わせましょう。

なお、間に合わなそうな場合は、税務署に連絡してみるといいかもしれません。ルールですから延滞税がなくなったりすることはありませんが、どうすればいいかのアドバイスはもらえるはずです。税務署はきちんと申告しようとする人には概ね親切なので、怖がらずに連絡してみましょう。

自力では大変な場合は税理士に代行してもらうことも可能

日々の帳簿付けや確定申告用の書類の作成は個人事業レベルなら大した手間にはならないことが多いですが、それでも規模が大きくなってくると大変なこともあります。

そのような場合は、それらの業務をまとめて税理士に代行してもらうこともできます。すべてを任せてしまえば、個人事業主は領収書や通帳などのコピーを税理士のもとに送るだけでよくなるので使える時間が増え、本業に専念しやすくなります。

税理士報酬は税理士によって異なるのでなんとも言えませんが、記帳代行は月額1万円~2万円程度、確定申告代行は5万円~10万円前後です(基本的に、売上高が多いほど費用は高くなります)。利益が少ない事業者にとっては結構な負担ですが、利益が多い場合は大した負担にもならないので、思い切って丸投げしてしまってもいいでしょう。

利益が多い場合は法人成りで節約が可能

個人事業の規模が大きくなり、利益も増えて安定している場合は、個人事業をやめて法人(会社)を設立したほうがいいかもしれません。法人成りには

  • 事業主に対する退職金を経費にできる(個人事業だとそれはできません)
  • 生命保険料の一部もしくは全部が費用になる(個人事業では所得控除にしかならないので節税メリットは小さいです)
  • 法人税率は一律23.9%(中小法人は一定の条件を満たせば15%)なので、利益が多い場合は節税効果が大きい(個人事業だと税率は最大40%になる事がある)

など、多くのメリットがあります。反面、

  • 従業員がいる場合はその数にかかわらず従業員を社会保険に入らせないといけない
  • 法人設立に費用がかかる。株式会社ならば30万円程度、合同会社なら15万円程度。
  • 記帳が難しくなるので必ず税理士を雇わないといけなくなる

などのデメリットもあります。

個人事業の確定申告はソフトやクラウドを使えばちょっと勉強した素人でも問題なくできますが、法人の確定申告はその程度の知識ではまず行えません。利益が少ない段階での法人成りはデメリットも大きいので、よく検討してから行いましょう。

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