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今週のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利のフェッド・ファンド・レート(FF Rate)の誘導目標を0.25%引き上げ、1.00~1.25%としました。これは市場の予想通りでした。誘導目標の上限金利の推移を下記のグラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙WSJ)で示しました。
2007年9月18日FF Rate:5.25%から4.75%に0.50%緊急に利下げを実施しました。リーマンショックの金融危機から利下げセッションが始まりました。そして一昨年のFF Rate :0.25%から0.25%引き上げから、引き上げセッションが続いています。昨年12月には0.75%、そして今年は3月に0.25%引き上げ、そして今月0.25%引き上げ1.25%に引き上げました。そして今年中にもう一回0.25%引き上げられるという見方が有力となっています。

短期金利中心に見る筆者としては、まだ今年中に利上げがされるのかどうか定かではありません。FRBメンバーの来年以降のFF Rate予想を見ると、2018年3回(合計0.75%)、2019年3回(合計0.75%)の利上げとなっています。そうなると、最終的に2019年年末には3%となります。グラフでは緑の矢印で加筆しています。まだここ10年のFF Rate最高値5.25%には遥かに届かない水準と言えます。まずは数年の間に、平常な金融経済情勢の中、ある程度の水準に戻したいという意向が働いているのではと思います。中期的に見ると、今後金利が上昇に向かうというシナリオに確信が持てる状況と言えます。

筆者は今年中に更に1回利上げには確信が持てないと前段で申し上げました。年後半の景気後退も予想されます。FRB(米連邦準備理事会)がインフレ指標で重視しているPCEコア・デフレーターの数字が、直近4月1.5%前年比と、FRBのインフレ目標2.0%には達していません。
GDPを見ても、昨年第4四半期2.1%前期比年率であったのですが、今年第1四半期1.2%に落ち込んでいます。個人消費が落ち込む傾向が見られるのかもしれません。筆者はその意味では原油価格を見ています。WTIで現在45ドルを下回っています。

確かにOPEC(石油輸出国機構)で減産合意が上手く機能していないという面があり、また米国のシェール・オイル・ガス生産が伸びているという材料があります。しかし米国のガソリン需要がそれ程伸びていない面もあるのではと密かに思っています。つまり景気後退の気配を感ずることになります。
このことで、金利・債券ディーラーは、金利が今年いっぱいは大きく上昇しないのではと悲観的に見ているのではないかと思います。金利が上昇する局面、つまり景気の後退を払拭し、長期、短期金利が上昇する局面を示さないといけないのではと思っています。長期金利米10年債で見ると2.50%方向、短期金利先物ユーロドル(3ヶ月物)12月限1.50%方向が見えてくると、金利・債券ディーラーが景気に対してポジティブな見方に変化して来たなと感ずることになります。
その意味で長短金利水準を常にチェックしておきたいものです。金利が上昇しないということは、リスク商品への投資に対する意欲が強くないということを意味します。しかし大きく金利低下の動きは予想できなく、緩やかな株式市場の活況が続くのではないかと推測します。そしてドルも底堅い動きになるのではと、金利面からは判断できると言えます。

そして今回のFOMCでもう一つの重要なことは、資産縮小(テーパリング)の工程表の発表でした。FRBはリーマンショック以来、金融市場から米国債や資産担保証券(MBS)を購入し、膨大な流動性を供給してきました。いわゆる量的緩和政策を打ち出してきました。現在の金融市場そして経済を見ると、金融危機は収まり、そして通常のように金融市場は機能しています。
FRBは通常に戻す必要があります。今回資産縮小がイエレン議長の口から発せられました。内容的には縮小額を米国債月額60億ドル、MBS月額40億ドルを上限として、3ヶ月ごとに上限を引き上げ、米国債月額300億ドル、MBS月額200億ドルに達するのを目途としています。来年末には縮小規模が3,250億ドルを下回ると推測されます。このことは0.25%の利上げの半分に相当するとの試算もあるようです。
下記のグラフ(出所:WSJ)はリーマンショック後のFRBの資産購入の量的数字を示しています。青線をご覧ください。現在4.5兆ドルに達しています。これを正常に戻そうとの意思を今回強くFOMCは示したことになります。イエレン議長は「比較的早い適切な時期に保有資産の正常化に着手する。縮小の終了はおそらく数年先になる。」と記者会見では述べています。9月もしくは12月のFOMCで縮小開始発表があるのではとの観測が強いです。下記グラフの青線の推移を見ると、WSJは今年年後半に開始し、2020年末には2.5兆ドルまで縮小することを予想しています。2007年のリーマンショック前の水準は1兆ドルを下回っています。

その意味から察するに、この縮小計画は道半ばのように個人的に思います。2020年以降は次期FRB議長にゆだねることとなります。そしてFRBの保有資産の縮小は、金利上昇の局面を迎えることを意味します。市場参加者が現在市場金利上昇を予想していない中の、資産縮小は、FRB幹部にとっては好条件と言えます。つまり、金利が上がらない所で、資産を縮小できるということです。意外と速いペースで縮小上限額を引き上げることが予想されます。
米国債入札で購入需要が盛り上がらないと、必然的に金利は上昇します。ある程度リスク回避のセンチメントがあると、安全資産としての国債の需要は上がります。その場合は金利低下の動き。反対に、不動産、ITバブルが発生すると投資家はリスク志向に向いますので、米国債への需要は減退する。この場合は金利上昇。こんなことが2020年末までに起こらないとは限りません。正常な経済状況が続くと考えると、来年以降は緩やかな金利上昇局面が続くのではと推測します。

今回のFRBの決定を読むと、利上げには積極的、そして資産縮小も急ぐ傾向にあるように思います。それは市場の慎重姿勢と対照的です。慎重姿勢がイエレン議長のモットーでしたから、今後リスク要因が生まれた場合には、その姿勢を変更することも予想されます。トランプ大統領が国民からの信任が得られていないことがリスクとして浮上することになります。
メインシナリオを描くと、金利はここ数年緩やかに上昇する、そして株式市場も金利が緩やかに上昇する限りにおいては、活況に推移するのではと読めます。そしてドル金利上昇は為替ではドル高で推移すると読めます。こんな方向性から、これからの皆さんのポートフォリオの構成内容を調整することになります。ミドルリスク、ミドルリターンは保険の意味で一定水準程度保有する方針で行きたいものです。

«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。

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