6月の米国FOMCの利上げを経て、大方の市場の予想では明確な方向感がでるものと期待されていましたが、実際に蓋を開けてみるとテーマを失い方向感のない相場展開が続いています。
しかも債券と株式市場の相関は完全に切れた印象で、もはやファンダメンタルズでは理解しがたいランダム相場がはからずも到来した状況です。
やがて金融引き締めに対する相場の反応が明確に示現することになるものと思われますが、当面は足元の不思議な相場状況をとにかく乗りきることを考えなくてはなりません。
今回は現状の相場状況を再度検証してみたいと思います。
確実に異なる債券市場と株式市場の先行きに対する見方
FOMCにおいて追加利上げされ、早ければ9月から資産の縮小のための債券売りも明確に示唆されたにも関わらず、債券市場は金利が上がらない状況です。
もともと利上げに踏み切ってもFRBがコントロールできる金利は短期のみで、長期金利は市場がその利率を決定していくものですが、結局のところ市場はここからFRBが見ているように景気が回復していくとはまったく見ていないことがよくわかります。
実際景気の先行指標はかなり悪いものが目立ちはじめており、本来金利上昇要因がFRBから提示されてもまったく相場はその方向に動こうとしないのはこれが大きな原因であり、ここからもずっと調子が続くのかどうかが非常に大きな問題です。
債券金利と完全にシンクロしているドル円は米10年債金利が上昇しない限り上方向に上がることはまったく期待できない状況で、まずここからファンダメンタルズのロジックと相場が乖離してしまっていることがわかります。
今後長期金利が上昇しないとなると短期金利だけが上昇してイールドカーブがフラット化することで株式相場がかんしゃくを起こすリスクはかなり高まることになります。
株式市場はそれでもトランプの夏の政策期待から上昇維持
一方米国の株式相場は一瞬NASDAQでFANG銘柄が大きく売られて、大幅価格調整かと緊張させられましたが、NYダウのほうが比較的堅調さを保ち、なんとか崩れないままにジリ高を形成中です。
ウォール街と米系のファンド勢の一部は引き続きこの夏にトランプが打ち出してくる減税案の具体的な内容と、ボルカールールの改訂による金融機関の収支改善に大きく期待しているようで、足元では金融株が再上昇するなどの動きが見られ、簡単に相場が下落するようには見えません。
債券市場と株式市場はまったく先行きに対する見方が相反しており、どちらかが間違っていることがはっきりするのにはまだまだ時間がかかりそうです。
NYダウは一気に走るような気配はないものの、ジリ高を続けており、こうした動きが継続している限りは大きく下落することも想定しにくい状況となっています。
しかし、金利上昇やバランスシート縮小にまったく反応しない株式市場というのもすさまじいものがあり、どこかで修正が一気にくる時間がやってきそうで非常に怖いものを感じます。
石油価格もまさかの大幅下落でインフレは遠のくばかり
5月初旬に1バレル52ドルをつけて安定的な高値を維持したはずの原油価格はここへきていきなり10ドル近く値を下げることとなり、これが資源国通貨を圧迫し、クロス円の円高によってドル円も上値を抑えられるという事態が再燃しはじめています。
5月の22日にOPECが減産を継続したばかりだというのにカタールとサウジアラビアをはじめとする周辺国の国交断絶、リビアの増産など統制の取れない中にあって米国とカナダが原油の増産をしていることから、市場では完全に需給のバランスが崩れている状況で、こちらも資源国通貨安からクロス円の下落がドル円の上昇に重くのしかかる状態で、足元ではドル円の上昇の目途が全く立たなくなりつつあります。
こうなると本来は金利上昇からドル円は多少なりとも上方向を目指すシナリオを考えていた市場参加者にとってはまったくその先の相場予測ができなくなってしまっているのが実情で、ここからの相場の見立ては想像以上に難しい状況です。
この先WTIの原油価格が1バレル40ドルを明確に割るような事態となれば、ドル円も影響を受けて下押しが考えられることになりそうで、これがどのタイミングででるかはまさに相場次第といった感じです。
ジェフリーガンドラックは株価下落を警告
こうした状況を相場のプロはどう見ているのでしょうか?
まず新債券の帝王の異名をもつダブルラインキャピタルのジェフリーガンドラックは、夏相場に対して警鐘を鳴らし始めており、長期金利は年末までに2.7%近くまで上昇し、株式市場はそれに耐え切れなくなって下落すると予想しており、いまから株は危ないので売っておいたほうがよいといいはじめています。
またビセンダ・アセット・マネジメントのフェリックス・ツラウフCIOは、足元の株式相場の状況がまるで1999年の終わりごろのようだと語っており、やはり株式ピーク説を強く唱えています。
こうしたことからプロの投資家の世界でも、足元の相場に弱気で一旦市場から退場して様子をみる層と引き続き最後にもう一段高を期待する向きとが混在する形でその結果が株と債券の相場の乖離を示現する結果になっているともいえそうです。
7のつく年の鬼門月がいよいよ到来
7のつく年は7月以降に株式相場が調整しやすいといったアノマリーがいよいよ近づいています。
米国の大統領が代わった年は6月以降に相場が大きく調整するアノマリーもあることから、実際にどうなるかは別としても7月はなにかと株式相場が下方向を意識する機会が多くなります。
果たしてこれが今年どこまでワークするかはまったくわかりませんが、調整が出る可能性があることだけは常に意識しておく必要がありそうです。
相場はある意味生き物ですから、投資家の思惑通りには動かないことのほうが多いものですが、さすがに今回のFOMCの利上げ以降の相場の動きは過去3回に利上げ時とはまったく異なる反応になっていますし、かと言ってすべてを大きく変化させるほど経済状況はよくなっていないのが実情です。
さらに原油価格の下落が再度始まっていますので、インフレは進行しにくい状況です。
こうなるとFRBがさらなる利上げをするのも難しくなりますから、この先の動きを予測するのはかなり難しくなりつつあります。
この夏ほとんど調整せずに相場が乗り切れた場合には、足元の中央銀行バブルが米国の中間選挙あたりまで継続することも一応は考えておく必要がありそうです。
市場全体が理解に苦しんでいる
現状の相場状況は多くの市場参加者がどう理解するか悩んでいるのが実際のところで、専門家であっても見方は二分されています。いまのところ誰の見立てが正しいのかはまったくよくわかりませんが、膠着した相場はやがてエネルギーを蓄積してどちらかの方向に大きく動き出すことになります。
そこまではむやみに売買して損失を出さないように我慢しながら様子を見るというのもひとつの投資姿勢になりそうです。
思いのほか難しい相場がいきいなりやってきた感がありますが、変化には必ず何らかの兆候が現れるものです。
方向感がわからなくなったときにはじっくりその兆候をみつける作業をしてみるのもひとつのアプローチになりそうです。
こういうときこそ思い込みは排除してテクニカルに相場を検証してみるというのもいいかもしれません。いずれにしてもこの夏必ず相場は動き始めますので、そこにうまく乗れるようにしっかり準備をしておきたいものです。
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