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米国市場でOIS金利とLIBOR金利の差がリーマンショック以降最大となり、注目を集めています。
これは一体、どういう事象なのでしょうか?

OIS と LIBORの金利差拡大

OIS(Overnight Index Swap)とは翌日物金利スワップと訳されるスワップ取引の一種ですが、政策金利の見通しを反映するものとしても注目されてます。一方でLIBORとは、ロンドン市場で銀行同士が資金取引を行う際の平均金利のことを言います。LIBORは翌日物から12か月物まで7つの期間の金利が毎日集計されていますが、こちらには政策金利の見通しに加え、市場の流動性リスクや銀行の信用リスクも反映されると考えられています。より多くのリスクを織り込むLIBORの方がOISより高いのは当然なのですが、その差(スプレッド)は0.2%以下であるのが近年では概ね通常とされます。しかし昨年末からこのスプレッドが急速に拡大し、足元では0・6%ほどとなっているのです。

リーマンショック時以外にこの差が大きく拡大したのは、2016年にマネーマーケットファンド(MMF)改革により短期金融市場で需給構造が大きく変わったときや、2011年から2012年にかけて欧州の債務危機が深刻化した時くらいです。今回の動きの背景にはどういった理由があると見られるのでしょうか。

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その背景と考えられるもの

今のところ原因を完全に特定することはできませんが、いくつかの要因がマーケットでは取りざたされています。

① 2月初旬に議会で債務上限が引き上げられた後に財務省短期証券(T-Bill)が大量に発行されたため、需給が悪化して短期金利が全般的に上昇したというもの。

② 1月に決定したレパトリ減税を受けて、企業が海外に保有する資金を現金化する動きがあるとみられる。これまでは銀行が発行する短期のコマーシャルペーパーや譲渡性預金(CD)などで運用されていた資金が現金化されているため、銀行にとってはそれ以外の方法での資金調達ニーズ、すなわち銀行間借入へのニーズが高まっているというもの。

③ 1月の税制改革に含まれた「税源浸食・租税回避防止税(BEAT)」条項により、日本や欧州の大手銀行の米国内子会社が本社から資金を借り入れた際、その利子に課税されるようになった。このため、米国内子会社は自身で米ドルの資金調達をするようになったため、銀行間での資金需要が強まったというもの。

恐らくどれもが正しく、さらにタイミングが重なった結果、影響がより大きく出たものと考えられます。

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市場への影響と今後の見通し

今回のスプレッド拡大は金融システムへの不安から生じたものではないため、特に問題はないとの見方が現時点では多いようです。しかし、米連邦準備理事会(FRB)が慎重に0.25%の利上げを先月に決定した一方、市中の短期金利はそれに加えて更に0.6%上昇しているのです。ドル建てLIBORは、世界全体で350兆ドルに上る金融取引の基準金利となっているとされます。このため、スプレッドが更に拡大し、また長期化すれば、景気への影響も配慮する必要が出てくると考えられます。スプレッド拡大が先に挙げた3つの要因で説明できるとするなら、①の要因は今月には多少減退しそうです。

4月は税収が入ってくるためで、実際先週の短期証券の発行額は前週より減額されました。しかし、米議会予算局(CBO)が9日に発表したところによると、18年度(17年10月~18年9月)の財政赤字は8040億ドルとなり、17年度の6650億ドルから大きく増加するといいます。さらに2020会計年度には、1兆ドル(約106兆円)も突破すると試算しています。トランプ政権が先ごろ決定した大型減税と歳出拡大によるものですが、短期証券が再度発行増大に転じるのは間違いないと思われます。また、②と③の要因についても当面は続く可能性が高そうです。

実は、LIBORは2021年末で基準金利としての役割を終える見通しとなっています。LIBORは実際の取引に基づいたデータではなく、銀行の申告に基づいて集計されるものです。銀行が容易に操作できる仕組みともいえ、実際2008年の金融危機時には不正操作が見つかり、複数の大手銀行に巨額の罰金が科されました。この反省を踏まえ、各国がLIBORの代替金利について議論を重ねており、米国については4月3日から新たにSOFR (Secured Overnight Financing Rate)の発表が開始されました。ただ新たな指標への移行は非常に複雑で、かつ時間がかかるものと思われます。まだまだ多くの金融取引がLIBORに依存する状況が続くため、今後はFRBの政策だけでなく、OIS-LIBORスプレッドの動きにも注目する必要があると考えます。

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