2019年には一時期、日本株よりも好調なことで注目されてきている米国株を推奨する投資関係者も多く現れた。
外国株投資においても配当金が得られるが、国外からの配当は国内の配当と税制上の取り扱いが違うことに気をつけたい。
日本と現地の二重課税になってしまう場合もある。ただ二重課税は税制の世界ではよくないとされているので、確定申告によってある程度は解消されるしくみがある。
国内株配当の配当控除
外国株配当の税制を理解する前に、多くの日本人に関わる日本株配当に関する税制について知っておきたい。
収入を受け取った場合には通常課税されるが、支払った側は通常経費として処理して節税の手段とすることができる。配当を受け取った際にも課税されるが、支払った側は法人税計算上の損金(経費)にはできない。
このため、国内株であっても二重課税の問題はある。この問題に一定の調整をおこなうために、所得税と住民税には配当控除という税額軽減措置がある。
配当控除は、原則として配当所得の10%を所得税から、2.8%を住民税から差し引ける控除である。ただし課税所得が1,000万円を超えた分からは、半分(所得税5%・住民税1.4%)しか引けない。
総合課税で申告することが要件
配当控除を受けるためには条件がある。国内上場株式の配当は所得税15.315%・住民税5%差し引かれて入金されるため、確定申告は必須ではない。
ただ配当控除の特典を受けたいのであれば、確定申告を行うことが必要だ。さらに上場株配当の申告は、総合課税・申告分離課税の2方式から選択できるが、申告分離課税では配当控除の特典は受けられない。
申告分離課税は、上場株式の取引で生じた損失と配当所得を相殺することで、配当から徴収された税を取り戻すための課税方式である。配当所得が減額されることが多いため、配当控除による特典は受けられないようになっている。
外国株配当に対する二重課税
外国株の配当は、国内株配当とは徴収のされ方が異なることを理解しておきたい。
米国株の配当は、まず米国のほうで課税される。まずドルベースで10%分だけ税金が差し引かれる。10%は、日米の租税条約で決められた税率である。
その後、外国税差引後の配当に対して日本側でも円ベースで課税される。日本側の税率は所得税15.315%・住民税5%と国内株配当と同じである。
これでは米国と日本で二重課税されており、税率も30%程度と重い。
なお米国の取引所においては、通常の株式の他、株式を裏付けとして金融機関が発行しているADR(米国預託証券)の取引も可能である。
ADRを所有している場合でも配当を受け取ることができるが、この場合は米国でかかる10%の税金は徴収されないこともある。
外国株配当に配当控除は使えない
外国株配当でもう1つ留意すべきなのが、配当控除の対象外であるということだ。
外国株は外国で法人税を納めており、日本でも法人税を納めているとは限らない。配当控除は日本の国・地方に入る税金を減額するが、日本で法人税を納めているとは言えない外国企業の株式配当まで調整する必要は無いという理屈である。
ただし、二重課税の問題自体は解消されているわけではない。日本と外国の二重課税を調整するための控除は別にある。これが外国税額控除になる。
外国税額控除は、まず所得税の確定申告において計算が行われ、その計算結果に基づいて住民税からも差し引かれる流れになる。
外国株配当においても申告の対象としないことが可能だが、この場合は外国税額控除を受けることはできない。またNISA口座で配当を受け入れる場合、国内では非課税になるがこの場合も外国税額控除は受けられない。
まず、所得税の外国税額控除から説明したい。
所得税の外国税額控除
所得税の外国税額控除に関する計算であるが、配当控除よりも複雑である。
外国で徴収された税額のうち、下記の金額分を上限に差し引ける。
差引所得税額 × 国外所得 ÷ 合計所得金額
外国株配当以外の国外所得を得ていない場合、国外所得=外国株配当の額である。
例えば、
合計所得金額:350万円(給与所得346万円、外国株配当4万円)
差引所得税額(※):13.5万円 復興特別所得税額:2,835円
※外国税額控除以外の控除まで行った後の所得税額
の場合は、外国株配当から徴収された外国税4,000円のうち
13.5万円 × 4万円 ÷ 350万円 = 1,542 円
が外国税額控除として所得税額の軽減に回る。
この他、復興特別所得税に関しても
2,835円 × 4万円 ÷ 350万円 = 32 円
が外国税額控除として差し引ける。
住民税の外国税額控除
上記の事例では、外国所得税4,000円のうち1,574円が国内所得税の軽減に回ったが、2,426円は取られっぱなしである。
実はこの2,426円のうち、住民税から差し引ける分もある。ただし、住民税から引ける額は低く設定されている。
所得税の外国税額控除額のうち、3割を住民税から差し引ける。上記事例では1,542円×30%=462円となる。なお住所地が政令指定都市かどうかで、30%の内訳(道府県民税分と市町村民税分の内訳)が異なる。
控除限度超過額の3年間繰り越し
住民税からの外国税額控除を考慮しても、外国税額4,000円のうち1,964円分は徴収されたままである。控除限度を超過した分は、翌年以降3年間に国外所得が発生した際、控除することが可能である。
総合課税と分離課税で控除額は異なる
配当所得に関しては、総合課税と申告分離課税の2方式から選択して申告できることはすでに説明した。
総合課税と申告分離課税では配当控除の有無、損失との相殺の可否、そして税率が変わってくるため、所得税や住民税の数値も変わってくる。
外国税額控除の控除限度額は、差引所得税額により変わってくる。このため、総合課税と申告分離課税で外国税額控除の額も当然変わってくる。
上記の計算事例は、総合課税によってなされたものとし、総合課税の所得税率は10%で計算していたものとする。
外国株配当4万円に対する総合課税の所得税は、4,000円となる。申告分離課税で申告した場合は、15%で計算されるため6,000円である。
差引所得税額は2,000円増え、13.7万円となる。復興特別所得税額はこの2.1%にあたるため2,877円である。
所得税の外国税額控除額は少し増え1,565円、復興特別所得税の外国税額控除額は32円となる。住民税の外国税額控除額も少し増えて、468円である。
所得税と住民税の外国税額控除はあわせて2,065円であり、翌年に繰り越せる控除限度超過額が1,935円に減る。
外国税額控除を考慮したとしても、申告分離課税よりは総合課税のほうが有利なケースである。この比較を通じて知ってほしいのは、課税方式の選択により外国税額控除額も変わってくる点である。
申告分離課税を選択し損失と相殺する場合
上記事例では、総合課税も申告分離課税も合計所得金額は350万円である。しかし上場株式の譲渡損失があり申告分離課税を選択した場合、配当所得から差し引いた分だけ合計所得金額が減る点には気をつけたい。
例えば譲渡損失が2万円だった場合、総合課税を選択した場合の合計所得金額は350万円であるが、申告分離課税を選択した場合は348万円となる。
所得税と住民税で異なる課税方式の場合
配当の課税方式を所得税では総合課税、住民税では申告不要とするなど、両者で異なる課税方式をとって申告できることも知られてきている。この場合、外国税額控除の取り扱いはどうなるのだろうか?
外国税額控除は、所得税額と所得税で申告した各種所得の金額によって決まった後、所得税控除分の3割が住民税から控除される。このため、所得税の課税方式に影響されると考えて良い。
たとえば前述の計算で、所得税では総合課税、住民税では申告分離課税を選択した場合は、所得税の外国税額控除額は1,542円、復興特別所得税が32円、住民税が462円である。
住民税で申告分離課税を選択しているからと言って、住民税の外国税額控除が468円に増えるわけではない。
外国税額控除の繰越限度超過額は、翌年の申告で利用できるが、確定申告書で記載した金額(上記で言えば462円)と異なる金額を書くわけにもいかないからである。
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