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年末調整・確定申告・所得制限つき給付金のような税制・社会保障制度の世界で「合計所得金額」という言葉がよく使われる。

所得税改革により配偶者控除・基礎控除といった所得控除にも、段階的に合計所得金額による所得制限がつくようになった。

合計所得金額は、所得の種類が給与・公的年金ぐらいであればまだ単純である。ただ損失がある場合などは、単なる所得の合計と思っていると思わぬ誤解も招く。

現役世代・高齢者問わず収入が多様化してきており、かつ合計所得金額を意識する局面も増えてきているので、考え方をおさえておきたい。

合計所得金額の基本的な考え方

合計所得金額は給与所得・事業所得など、全部で10種類ある所得の合計である。基本的な部分として次の点に気をつけたい。

所得控除は差し引かない

控除には給与所得控除・公的年金等控除のように各種所得の経費に該当するものと、扶養控除・医療費控除のように個人・世帯の状況により所得から差し引ける所得控除がある。

合計所得金額は各種所得の合計という意味で、前者の経費にあたる控除は差し引けるが、後者の所得控除を差し引く前の状態であることに気を付けたい。

所得控除も差し引いた後の所得を指す言葉として、課税総所得金額などがあるが、合計所得金額とは別物である。

 

損益通算できる損失は限定的

合計する際に、発生した損失を他の所得と相殺(損益通算)できるとは限らない。相殺できるのは事業所得・不動産所得・譲渡所得・山林所得に限定され、また譲渡所得は居住用財産の買換えの場合など、損益通算できる方が限定的である。

雑所得の損失を公的年金で生じた雑所得と相殺するなど、同種の所得とは相殺(内部通算)可能である。

また損益通算には、順番がある。各種所得は、大きく下記のように3分類される。

経常所得グループ:利子所得・配当所得・事業所得・不動産所得・給与所得・雑所得
譲渡一時グループ:譲渡所得・一時所得
その他のグループ:山林所得・退職所得

山林所得の取り扱いはここでは詳述しないが、まず経常所得グループ・譲渡一時グループのそれぞれで通算(第一次通算)し、その後いずれかがマイナスの場合は、両グループ間の通算(第二次通算)が行われる。それでもマイナスが残る場合は、第三次通算が行われる。

譲渡一時グループと山林所得・退職所得は、計算方法が特殊なため注意点がある。譲渡所得・一時所得・退職所得についての詳細は後述する。

 

3年前までの繰越損失は差し引かない

所得の合計を表す概念として、合計所得金額のほかに総所得金額等もある。

合計所得金額はその年の所得のみを合計したもので、3年前~1年前から繰り越した損失は差し引かない。

しかし総所得金額等は課税される所得の計算で用いられ、こちらは繰り越した損失を差し引く。

 

一時所得・譲渡所得・退職所得

合計所得金額を求める際、一時所得・譲渡所得・退職所得の計算には注意を要する。

分離課税の譲渡所得

事業所得・不動産所得・山林所得の損失は、不動産譲渡による譲渡所得や金融所得(株式等の譲渡所得や先物取引等に係る雑所得)など、租税特別措置法で定められた分離課税の所得とは相殺できない。

そして上場株式等の譲渡所得で生じた損失で損益通算できるのは、申告分離課税で申告した上場株式等の配当所得・特定公社債の利子所得だけである。

先物取引等に係る雑所得や、非上場株式等の譲渡所得における損失は、他の所得と通算できない。

また所得税と住民税の徴収が行われた上場株式等の譲渡所得は、申告するかどうかは選択できるが、申告した場合のみ合計所得金額に算入される。これは上場株式等の配当所得・特定公社債の利子所得についても同様である。

 

一時所得・総合課税の譲渡所得

一時所得・総合課税の譲渡所得の計算式は、下記のとおりである。

収入金額 - 収入を得るのにかかった支出 - 50万円

ただし合計所得金額を計算する際、一時所得と総合長期譲渡所得は上記の金額に1/2をかけてから合計する。

総合短期譲渡所得は1/2をかけず、このまま合計する。なお売却した資産の所有期間が5年以下なら短期に該当し、5年超であれば長期に該当する。

経常所得グループの第一次通算でなお損失が残る場合は、一時所得・総合課税の譲渡所得と相殺されるが、相殺する場合は1/2をかけない状態で行う。

経常所得グループの第一次通算で生じた損失が20万円で、一時所得の収入金額が120万円、支出が0円の場合は、一時所得の金額は70万円であり、第二次通算後の一時所得は50万円である。

合計所得金額は50万円ではなく、1/2をかけた後の25万円となる。

 

退職所得

退職所得金額は、下記の算式により計算される。

( 収入金額 - 退職所得控除額 ) × 1/2

退職所得控除額は、勤続年数により表1の通り計算される。

勤続年数 退職所得控除額
2年以下 80万円
2年超20年以下 40万円×勤続年数
20年超 40万円×20年+70万円×(勤続年数―20年)

表1:退職所得控除額

 

一時所得と異なり、1/2をかけた後の金額が退職所得金額であり、第二次通算後になお残った損失は山林所得金額・退職所得金額から差し引かれる。

第二次通算後の損失が20万円で、退職金が900万円、退職所得控除額が800万円(勤続年数20年)の場合は、退職所得金額は50万円であり、第三次通算後の退職所得金額は30万円となる。

 

公的年金等に係る雑所得

公的年金等にかかる雑所得は、年金収入額から公的年金等控除額を差し引いて計算される。

65歳以上に関して公的年金等控除額の計算式は、表2のとおりである。

年金年額=A 2019年以前 2020年以降
~330万円 120万円 110万円
330万円~410万円 A×25%+37.5万円 A×25%+27.5万円
410万円~770万円 A×15%+78.5万円 A×15%+68.5万円
770万円~1,000万円 A×5%+155.5万円 A×5%+145.5万円
1,000万円~ 195.5万円

表2:65歳以上の公的年金等控除額

なお2020年以降においては、公的年金等に係る雑所得を除いた合計所得金額が

・1,000万円超~2,000万円の場合:控除額が、上記の額-10万円
・2,000万円超の場合:控除額が、上記の額-20万円

となる。2020年以降は、合計所得金額に応じて控除額が変わり複雑化することに注意したい。

 

給与所得の注意点

給与所得は、給与の年収から給与所得控除額(表3)を差し引いて計算する。

給与年収=A 2019年以前 2020年以降
162.5万円以下 65万円 55万円
162.5万円~180万円 A×40% A×40%-10万円
180万円~360万円 A×30%+18万円 A×30%+8万円
360万円~660万円 A×20%+54万円 A×20%+44万円
660万円~850万円 A×10%+120万円 A×10%+110万円
850万円~1,000万円 195万円
1,000万円~ 220万円

表3:給与所得控除額

 

公的年金等控除額と同様、2020年以降は2019年以前と比べて概ね10万円減少するだけだが、年収850万円超になると、減少幅が増え最大で25万円も減少する。国が高所得者の税負担を増やしたいからである。

ただし子どもや特別障害者がいる世帯は、配慮(所得金額調整控除を控除額にプラス)により10万円の減少で済むようになっている。

 

高所得者に対する所得金額調整控除

年収850万円を超える高所得者のうち、下記のいずれかの要件を満たすことにより、所得金額調整控除が受けられる。

・23歳未満の扶養親族がいる
・本人が特別障害者
・合計所得金額48万円以下の同一生計配偶者が特別障害者
・合計所得金額48万円以下の扶養親族が特別障害者

特別障害者には、精神障害者1級以上・身体障害者2級以上・重度の知的障害者などが該当する。

 

年金受給者に対する所得金額調整控除

高所得者のほか、働く年金受給者に対しても所得金額調整控除が存在する。

給与所得控除額・公的年金等控除額ともに最低でも10万円の引下げが予定されている。両方の所得がある場合、20万円の引下げも予想され、このままでは基礎控除が10万円上昇しても増税となる。

増税がおきないように、所得金額調整控除が最大10万円、給与所得から控除される。正確には給与所得+公的年金等にかかる雑所得の額-10万円=Aが10万円に達しない場合は、Aが控除額となる。

 

申告不要の所得20万円以下とは

所得20万円以下が申告不要という話は、有名である。この申告不要制度は、年収2,000万円以下で年末調整を受けられるサラリーマン、もしくは公的年金+企業年金の年額400万円以下の年金受給者が使える制度であることに注意したい。

また20万円の基準は、所得税0円の範囲である合計所得金額38万円(2019年以前)もしくは48万円(2020年以降)以下の条件とも異なる。合計所得金額20万円以下ではないという意味だ。

この20万円は、損益通算を行わないで判定する。事業所得・不動産所得などの損失があっても、0円として計算し、他の所得との相殺は行わない。ただし、各種所得それぞれの内部通算は可能だ。

また年金受給者の確定申告不要制度に関しては、20万円の判定に給与所得が含まれる。この給与所得の金額は、年収額 - 給与所得控除額(最低55万円) - 所得金額調整控除額(原則10万円)となる。

このため公的年金以外の所得が給与しかない場合は、年収85万円が給与所得20万円になるため、年収85万円以下であれば申告不要制度が使える。

 

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