入院をして、手術をすることになった!
とてもショックで、色々なことに頭がまわらなくなると思います。しかも、入院にはそれなりの費用がかかります。お金のことで更にストレスがかからないよう、ここではいくつかの役立つ情報をご紹介したいと思います。
入院に係る費用は、平均で22万1千円
平成28年度の生命保険文化センターの調査によると、平均の入院日数は19.1日だそうです。5~7日と答えた人が25.4%と最も多かったのですが、8~14日と答えた人もほぼ同等の25.1%いました。一方、費用については、自己負担費用の平均は22.1万円です。これは、後で説明する「高額療養費制度」を利用した人も含みます。回答が最も多かったのが「10~20万円未満」 で、全体の39.3%を占めました。次いで、「5~10万円未満」が17.5%、そして「20~30万円未満」と「30~50万円未満」がともに13.1%だったそうです。
病院での医療費の計算には「包括支払制度」と「出来高払い制度」がある
包括支払制度という言葉をご存知でしょうか? 2003年4月から導入された制度です。それまでは、医療費の計算は診療行為ごとに計算する「出来高」計算で行われていました。一方、包括支払制度では、厚生労働省が定めた『診断群分類点数表』に当てはめ、1日あたりの金額を基に入院医療費が計算されます(制度の対象外の病気や治療法もあります)。
この場合でも手術やリハビリなどは従来どおりの出来高計算となりますが、投薬、注射、検査、画像診断、入院基本料等は、基本的にあらかじめ定められた金額を使って日数に応じた計算となります。医療の標準化や、その結果としての医療費削減を目指して導入されたものですが、患者側にもメリットはあります。この制度の下では、過剰な検査や投薬を受けずにすむということです。
検査を増やしても病院の報酬増につながらず、病院がやりたがらないためです。また逆に、必要な検査やお薬が増えた場合でも、治療費の大幅な増加を心配する必要がなくなります。ただ一方、病院が利益を少しでも増やすために過少診療となるのではないかとの懸念もあるかもしれません。この辺りは病院や医師との信頼関係にかかわる話でもあり、どちらの制度がいいか各人の考え方も違うと思います。
今では多くの急性期病院が包括支払制度に移行していますが、引き続き出来高払い制度を取っているところもあるので、どちらかの制度にこだわるなら病院を選ぶ際の一つの基準にしても良いと思います。
高額療養費制度の使い方のポイント
高額療養費制度は。公的医療保険で受けられる非常に有難い制度の1つです。医療機関や薬局でかかった医療費の自己負担額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額が支給してもらえます。自己負担額は年齢や所得に応じて異なるので、制度の詳細については、加入されている公的医療保険の組合や厚生労働省のウェブサイトなどで確認してみてください。
ここでは、この制度を利用する上で押さえておきたい3つのポイントをお伝えします。
① 月をまたいだ入院は損になる。
医療費の計算はひと月毎に計算されるので、月をまたぐと2か月分の自己負担額が発生します。
また因みに、年収の多い70歳以上の方については、今年の8月から自己負担額が引き上げられます。該当する方で入院を控えている方は、それまでに入院した方が医療費の観点からはお得です。
② 限度額利用認定書を申請しておく
70歳未満の人は、加入している保険組合に事前に「限度額利用認定書」を申請しておくと、それを病院の窓口で提示することによって、自己負担額の支払いのみですみます。逆にこれを先に取得しておかないと、いったん医療費全額をご自身で建て替えることになります(70歳以上の人はこの手続きは必要ありません)。
③ 家族の医療費は合算できる
高額療養費の計算では、同じ月の家族の医療費が合算できます。ここでの家族とは、同じ健康保険組合に加入している人のことを言います。違う会社で働く共働きの夫婦で、それぞれが勤務先の健康保険に加入している場合は、合算できません。
ただし、合算できる医療費は、70歳未満の場合、自己負担が21,000円以上のものに限られます。70歳以上75歳未満の場合は金額の条件はありません。さらに、75歳以上では、75歳未満の人の医療費と合算できません。75歳以上の人は、後期高齢者医療制度という別の制度に入っているためです。
医療費控除の使い方のポイント
これはご存知の方も多いと思います。確定申告が必要ですが、所得が200万円以上の人なら10万円を超える部分は所得から控除されますので、税金がその分安くなります。所得が200万円未満の人は、所得の5%までが控除できます。これも制度の詳細については国税庁のHPなどでご確認いただくとして、ここでは1つだけポイントをお伝えします。
① 民間の保険会社から出た保険金を正しく計算する
もし民間の医療保険に入っていて、そこから入院給付金や手術給付金、がん診断給付金などの保険金が出た場合、医療費控除の計算では、かかった医療費からそれら保険金を差し引かなければいけません。保険会社は保険金を払った際には税務署に報告しているため、差し引いておかないとバレると考えておいた方がいいでしょう。
但し、差し引く金額は、その保険金が支払われる事由となった病気やけがに関するものが限度となります。つまり、入院にかかる諸々の費用が10万円で、それに対し15万円の保険金を受け取ったとします。同じ年に、家族の医療費で12万円かかったとしても、医療費控除の計算で医療費から差し引くのは10万円までです。この場合では、12万円をかかった医療費として申請することができるのです。
傷病手当金は申請が必要
会社員なら、入院やその後の治療が長引き、会社を4日以上連続して休むことになってしまった場合には、傷病手当金という制度があることを知っておくと安心です。こちらも詳細は全国健康保険組合のHPなどに譲りますが、4日目以降の休業中にお給料が支払われないか、支払われても3分の1以上減ってしまった場合などに、最長1年6カ月間支払われます。但し、これも自分で申告をする必要があることに注意してください。
以上、入院する予定となったときに、知っておきたいお金の話をまとめてみました。
なるべくお金の心配をせず、治療に専念することに役立てば嬉しいです。