ドイツの連立政権樹立を左右する、SPDの党員選挙

2月13日、ドイツで驚きの急展開がありました。

昨年9月の連邦議会選挙から4か月以上もかけた協議の結果、メルケル首相率いる保守陣営(CDU・CSU)と第2党である社会民主党(SPD)との間で連立政権樹立が大筋合意されたのは、2月7日のことでした。

BREXITや加盟各国でのポピュリズム台頭に苦しむEUにとって、ドイツの安定は命綱です。そのドイツでの政治空白がやっと埋まることに、マーケットも安堵したのです。

が、それもつかの間、新政権の外相にも決まっていたSPD党首であるシュルツ氏が、13日には引責辞任することになったのです。

背景には、SPDの存在感低下に対する党員の危機感や、世代交代を求める若手議員の反発があったようです。そこに、同党幹部が与党との連立を何度も否定しておきながら、結果的に閣僚入りという餌につられ(たかのように)連立政権樹立に動いたことで、地方組織の不満が爆発しました。

もともとこの連立政権樹立の最終条件は、2月20日から3月2日にかけて行われる、SPDの一般党員(46万4千人)による投票で承認されることでした。

しかし今回の事態を見ても想像できる通り、3月4日にも判明するこの投票の結果は、ますます見通せなくなりました。

投票で連立政権樹立が否定されれば、少数与党で不安定な政権を築くか、再度選挙をやり直すことになると思われます。しかしいずれの場合でも、ドイツ政治が更に長らく不安定な状態で停滞することになります。

イタリアでは三つどもえの総選挙

そしてこの3月4日という日、実はイタリアでも総選挙があるのです。

ここでは3陣営による戦いとなっていますが、今のところ、どこも過半数はとれないと見られています。

そして実際にそうなれば、ここでも選挙後の連立交渉で政権が決まることになります。

現在のところ、単独政党としては、EU離脱なども訴えていた大衆迎合政党「五つ星運動」がトップを走っています。同党はこれまで他党との連立を否定していましたが、ここにきて他党との協力も示唆し始めました。

反EUである五つ星運動が政権入りした場合、その影響は欧州全体にも及ぶため懸念されています。

マーケットへの影響は?

奇しくも同じ日に欧州では2つの注目すべき選挙の投開票が行われるわけですが、マーケット的にはどんな影響が考えられるでしょうか?

国際政治がマーケットに与えるインパクトとしては、ここ数年かなり小さく、或いは短期的になっているのは確かです。しかし、マーケットには今月初めの株式相場急変動のショックがまだ残っている可能性もあり、注意はしておくべきだと思います。

短期的には特に、最近の高値圏にあるユーロの動きには注意が必要かと思われます。

ECBが量的緩和の縮小に動き出したことで進んできたユーロ高ですが、IMMの投機ポジションを見ても、ユーロ・ロング(ユーロの対ドルでの買い持ち)が足元でまだ相当たまっていることが見て取れます。

(IMMポジションというのは、シカゴ・マーカンタイル取引所に上場している国際通貨先物の建玉のことです。通貨ごとに、商業ポジションと投機ポジションに分けて発表されており、特に投機ポジションの大きさや偏りはマーケットのセンチメントを図る材料の一つとして注目されています。)

こうしたユーロ・ロングの一部が、選挙リスクを嫌って、ユーロ売り/ドル買い戻しにつながる可能性には留意したいところです。

また、ドル/円も現在、106円台後半という1年3か月ぶりの高値水準にあります。

上記に述べたようなユーロ売りが起った場合、その余波で、対円でもドルの買い戻しが進む可能性は意識されます。

ただ一方、対ドルでは円高に見えますが、実効為替レート(主要通貨との各為替レートを、貿易額等に応じて加重平均し、算出したもの)で見ると、円は長期平均から見てまだ割安だとの指摘もあります。

マーケット心理的にも、今のような中途半端な水準ではなく、105円を試すかどうか、またそれをホールドするかどうか確認したい気分が強まっている気がします。

円高の修正か、それとも円の独歩高なのか?

バウム・クーヘンの日でもある3月4日の投開票結果は、為替市場の先行きを見通す材料を示してくれるでしょうか?

注目したいと思います。

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北垣愛 国内外の金融機関で、グローバルマーケットに関わる仕事に長らく従事。証券アナリストとしてマーケットの動向を追う一方、ファイナンシャルプランニング1級技能士として身近なお金の話も発信中。