税金には様々な種類のものがあります。これだけ税金の種類が多いと、面倒くさいから一本化してくれという気持ちにもなりますが、税金の種類が多いのにもそれなりの理由があるのです。

国税と地方税

税金には、課税主体が国である国税と、課税主体が地方自治体である地方税に分類できます。地方税はさらに、都道府県が課税する都道府県税と、市町村が課税する市町村税があります。

国税として集められたお金は国家予算に組み込まれ、地方税として集められたお金は各地方自治体の予算に組み込まれます。

ただし、国税として集められたお金が地方自治体に分配されることもあります。地方自治体間の格差を是正するためです。

直接税と間接税

税金には、納税義務者と税負担者が同じ直接税と、それが異なる間接税があります。例えば、所得税は納税義務者と税負担者が同じ直接税で、消費税は納税義務者が事業者、税負担者が消費者の間接税です。

直接税は基本的に収入や財産に対してかけられるため、税負担能力の高い個人、あるいは法人ほど納税額が高くなります。そのため、格差を解消するのには適していますが、大きく稼ぐほど高率で税金を取られてしまうため、優秀な人々の勤労意欲をそいでしまう可能性があります。

一方、間接税は基本的に消費や流通に対してかかります。消費や流通がなくなるということはありえないので、必ずある程度の財源を確保するのには向いています。一方で所得の多寡にかかわらず税率がおなじになるため、低所得者の負担が相対的に大きくなりやすい一面もあります。

現時点での日本の直接税と間接税の比率は67:33程度となっています。米国は直接税の割合がさらに高く、ヨーロッパ諸国では低くなっています。

経常税と臨時税

税金には、毎年繰り返し規則的に課される経常税と、臨時的に課される臨時税があります。税金の殆どは経常税ですが、何か特別大きな財源が必要になった場合は臨時税が課されることもあります。例えば、日本では2011年から所得に対して復興特別税がかかることになりましたが、これは臨時税の一つです。

目的税と普通税

税金には、使い道が予め決められている目的税と、そういった目的を定めず、国や地方自治体の裁量で使い道を決められる普通税があります。

税金は原則として普通税として集めることになっていますが、広く薄く負担を求めるのが合わない場合(受益者が一部に限られている場合)などは目的税が採用されることもあります。例えば、国民健康保険税は市町村が課税主体の目的税の一つです。

こんなにもある日本の税金

現在、日本には約50種類の税金があります。所得税や住民税などは皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、入湯税やゴルフ場利用税と言ったマイナーで殆どの人には関係のない税金も存在しています。すべてを解説しようとすると無意味に長くなってしまうため、ここではこの中でも特に代表的な税金を幾つか紹介します。

所得税とは

所得税とは、個人の所得に対してかかる税金のことで、国税の一種です。我々は毎年仕事をしてその対価としてお金を得ていますが、その全てが自分のものになるわけではありません。所得に応じて所得税を支払わなければなりません。

所得税を計算するためには「年収」「所得」「課税所得」という3つの概念を理解する必要があります。

年収は1年間で得たすべてのお金です。それに対して所得とは、年収から経費を引いたものです。例えば、自営業者の場合は利益を上げるために仕入れをしたり、備品を買ったり、交通費を使ったりします。このような仕事にかかった費用が経費です。例えば年収が1500万円あっても、経費が500万円かかっていれば、所得は1000万円となります。

課税所得とは、所得から各種所得控除を差し引いたものです。所得控除とは、特別な事情がある場合に適用される、税金を減らすための制度です。

個人の所得税負担能力は基本的に所得に比例しますが、所得が同じならば税負担能力が全く同じかというと必ずしもそうとはいえません。

例えば、所得が500万円で独身の人と、所得が500万円で専業主婦(主夫)の配偶者がいる人では、後者のほうが生活費がかかるため、税負担能力は低いはずです。このような差を穴埋めするのが所得控除です。

例えば配偶者がいる人は配偶者控除、もしくは配偶者特別控除という控除を受けることができるため、独身の人よりも課税所得が低くなります。所得控除はこの他にも障害者が使える障害者控除、医療費をたくさん払った人が使える医療費控除などがあります。

課税所得がわかったら、いよいよ実際の所得税を計算します。所得税の計算式は以下のとおりです。

所得税=課税所得×税率-控除額

所得税の速算表(平成27年分以降)

課税所得
税率
控除額
195万円以下
5%
0円
195万円を超え330万円以下
10%
97,500円
330万円を超え695万円以下
20%
427,500円
695万円を超え900万円以下
23%
636,000円
900万円を超え1,800万円以下
33%
1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下
40%
2,796,000円
4,000万円超
45%
4,796,000円

例えば、課税所得が500万円の場合は、「330万円を超え695万円以下」に該当します。よって所得税額は以下の通りになります。

所得税=500万円×20%-427,500円=572,500円

なお、このように所得に応じて税率が変わる仕組みを累進課税制度と言います。

源泉徴収・年末調整とは?

自営業者の場合は自分で所得税額を計算し、確定申告表を提出する必要がありますが、会社員の場合は給料から毎月自動的に天引きされるため自分で何かする必要はありません。このような仕組みを源泉徴収と言います。会社がその社員の想定課税所得を計算し、その1/12に相当する額を毎月差し引いて社員に渡すわけです。

しかし、会社が想定した課税所得と、実際の課税所得が一致することはほぼありません。大抵の場合払いすぎたり、払い足りなかったりするものです。これを調整するのが年末調整です。所得税を払いすぎていた場合はお金が戻ってきますし、払い足りなかった場合は差額が徴収されます。

なんでこんな面倒なことをするのだ、と思われるかもしれませんが、もし所得税を年末にまとめて請求すると、払えなくなってしまう社員が現れるかもしれません。そのような自体を避ける上で、源泉徴収は非常に有効なのです。

住民税とは

住民税とは、地域社会の維持発展のために必要な財源を確保するための税金で、都道府県民税と市町村民税に分けることができます。住民税には個人に課される個人住民税と、法人に課される法人住民税がありますが、ここでは個人住民税について解説します。

個人住民税はある年の1月1日時点での住所が課税地となります。例えば1月1日時点で世田谷区に住んでいた場合は、東京都と世田谷区が課税地となります。その後1月2日に神奈川県川崎市に転居したとしても、その年の分の住民税を神奈川県、及び川崎市に支払う必要はありません。

住民税は前年の所得に応じて決定される所得割と、所得金額にかかわらず定額で課税される均等割があります。所得割の方は所得税と同じような計算式で計算され、控除も存在します。所得割額は都道府県税が4%、市町村民税が6%で合計10%です。かつては所得税のような累進課税制度が採用されていましたが、現在は一律10%です。

一方、均等割額は都道府県民税が1000円、市町村民税が3000円で計4000円です。従って、住民税の合計額は課税所得×10%-控除+4000円となります。

法人税とは

法人税とは、株式会社、合同会社、協同組合などの法人が事業で得た課税所得に対してかかる税金です。会社が払う所得税、という考え方でだいたい間違いありません。

自営業者などは毎年自分で課税所得を計算し、そこに税率をかけて所得税を計算して確定申告を行いますが、法人も同様のことを行います。ただし、個人と法人では課税所得の概念が微妙に異なります。

法人税を求めるためには、まず会計上の利益を求める必要があります。会計上の利益とは収益から費用を引いた額です。次に、税法に従って課税所得を求めます。これは益金-損金で求められます。収益と益金、費用と損金はほぼ同義ですが、わずかにずれが生じることもあります。

会社の経理担当者でもない限りは、同じものとして理解しておけばだいたい問題ないでしょう。法人税には所得税と違い、個々の事情に配慮する所得控除は存在しません。

次に法人税を計算します。所得税は累進課税制度が採用されていますが、法人税はそのような決まりはなく、原則としてすべての普通法人が23.4%ということになっています。ただし、所得が年間800万円以下の中小法人は例外的に15.0%となります。

また、法人は法人税とは別に法人事業税、法人住民税も支払わなければなりません。名前や目的こそ違いますが、どちらも法人の所得に対してかかってくるという点では同じです。

法人事業税は資本金や年収、所得等によって異なります。また、法人住民税は自治体によって税率が異なります。

法人税、法人事業税、法人住民税をすべて加えた、実質的な法人に係る税率を法定実効税率と言います。法人税、法人事業税、法人住民税のいずれも事業者によって異なるので、法定実効税率も法人ごとに異なります。例えば東京都23区内に存在する所得が800万円以上の普通法人の場合、法定実効税率は約34.34%です。

つまり、会社の利益を100とした場合、大体34が税金として取られるわけです。

これに加えてさらに法人住民税には個人に対してかかる住民税と同じように均等割の部分が存在します。なんともややこしいですね。

消費税とは

消費税は間接税の代表的な存在で、消費をした時にかかる税金です。消費税の税率が8%だというのは皆さんも御存知かと思いますが、実はこの消費税はさらに国税部分と地方税部分に分けることができます。

現在の法律では、8%のうち国税部分が6.3%、地方税部分が1.7%となっています。例えば10万円の買い物をした場合、消費税は8000円取られますが、そのうち6300円部分が国税、1700円部分が地方税となるわけです。

消費税はものやサービスを消費した時にかかる税金です。逆に言えば、ものやサービスを消費しない取引をしても、消費税がかかることはありません。

また、一定の事例に該当すれば、ものやサービスを消費した場合でも消費税がかからないことがあります。消費税がかからない取引には不課税取引、非課税取引、免税取引の3種類があります。

不課税取引とは、そもそも課税の対象にならない取引のことです。例えば、お金の無償提供(寄付や祝い金、香典、贈与など)はものやサービスの消費を目的としたものではないので、消費税はかかりません。

また、日本の消費税は日本国内の消費に対してかかる税金ですから、海外の法人から買物をしても日本の消費税が適用されることはありません。

非課税取引とは、ものやサービスの消費は関連しているものの、取引の性格上、あるいは政策的見地から消費税を課税しないほうがいいとされている取引のことです。

例えば、身体障害者が使用するための自動車は非課税取引の対象となっています。本来は自動車なのですから消費税がかかるはずなのですが、身体障害者の事情を考慮し、あえて非課税にしているわけです。この他、土地の譲渡や貸付、有価証券の譲渡、火葬や埋葬などの提供も非課税取引の対象となっています。

免税取引とは、国内で行われる試算の譲渡であっても、実際の消費地は海外である取引のことです。実際には課税取引であるのですが、税率を0%にする、と言ったイメージです。

街中でたまに免税店を見かけることがありますが、あれは外国人旅行者などが消費税を支払わないでも買えるお店なので、日本に居住している日本人が言っても免税にはなりません。ただし、日本人であっても、外国に勤務している場合は免税の対象となることもあります。

消費税の免税事業者とは

消費税を消費者から回収した事業者は通常、それを納税しなければなりませんが、一定の条件を満たせば消費税を免除してもらい、受け取った分を自分の懐に入れることができます。このような事業者を免税事業者といいます。

前々年度の売上高が1000万円以下の場合は、免税事業者になれます。そのため、開業2年目までの事業者は必ず免税事業者になります。

ただし、免税事業者になると消費税のかかる仕入れを行なってもその税金を控除できなくなってしまうので、コストアップにつながるケースもあります。その場合は、免税事業者になれる場合でも、あえて課税事業者になることも可能です。

固定資産税とは

固定資産税とは、固定資産(償却資産とも呼ばれる)に対してかかる税金のことです。所得税や法人税は所得、消費税は消費に対してかかりますが、固定資産税は資産に対してかかります。

固定資産税の対象となる資産は土地、家屋、償却資産のいずれかです。償却資産とは簡単に言えば、消耗性のある資産のことです。具体的には車両や運搬具、機械、備品、工具などが対象です。

ただし、これらに該当する場合でも、元々の価格が低い場合は資産とはみなされないこともあります。固定資産に該当しないものは、いくら保有していても固定資産税の対象にはなりません。

固定資産税はその年の1月1日時点でその固定資産を保有していた者が支払います。例えば平成29年1月2日にAさんがBさんから土地を買った場合、平成29年分の固定資産税はBさんが、平成30年度以降の固定資産税はAさんが支払います。

固定資産税率は1.4%です。ただし、購入時の金額ではなく、固定資産税評価額の1.4%です。固定資産税評価額とは、市町村が個別の固定資産に対して下した評価額のことです。市区町村が自らこの家屋は500万円だとか、この車両は300万円だとか決めていくわけです。

どのようにして評価額を決めるかのプロセスは固定資産の種類にもよりますが、例えば家屋の場合は経年に寄る原価分が考慮されるため、新築よりも中古のほうが低くなります。評価額が低くなれば、その分固定資産税も減額されます。固定資産評価額は概ね時価の70%となります。計算根拠に異議がある場合は、市町村役場まで出向いて申し出てください。

なお、固定資産税にはいくつかの軽減措置があります。例えば、住宅用の土地は免責が200平米以下の部分については評価額が6分の1に、それを超える部分は3分の1になります。例えば評価額が1200万円、免責が60平米の土地を持っている場合、評価額は1200万円の6分の1、つまり200万円まで減らされます。評価額が低くなるので、その分固定資産税も安くなります。

都市計画税とは

都市計画税とは都市計画区域のうち、市街化区域内に所在する土地・家屋に対してかかる税金です。一部の地域でだけ発生する固定資産税の子供みたいなものです。

こちらも固定資産評価額に税率をかけて計算します。税率は市区町村によって異なりますが、上限は0.3%で、多くの市町村が0.3%を採用しています。

自動車税・軽自動車税・自動車重量税・自動車取得税とは

税制の中でも特に複雑なのが自動車周りの税金です。この複雑な税制は自動車によるメリットを享受できる人とそうでない人の格差の是正のために取り入れられたものですが、このわかりづらさが自動車の普及を妨げている感は否めません。

まず、自動車税・軽自動車税はどちらも毎年発生する税金です。4月1日時点でのその自動車、もしくは軽自動車が税金負担者かつ納税義務者になる直接税の一種です。年度の途中で新規登録をした場合、新規登録をした月の翌月から3月までの月割分で計算されます。したがって、新車を購入するのを月初めにすると、月末にした場合と比べて約1ヶ月分の節税になります。

その自動車の用途や排気量によって税額が決まります。参考までに、総排気量が2.0~2.5Lの自家用自動車の自動車税額は年間5万1000円、自家用軽自動車は総排気量にかかわらず1万800円です。

ただし、環境性能に優れた、いわゆる「エコカー」に乗っている場合、大幅な自動車税の優遇措置があります(エコカー減税)。例えばいわゆる次世代自動車を所有している場合、自動車税は概ね75%の減税となります。逆に一定期間が経過した環境負荷が大きい自動車は税金が高くなります。

自動車重量税はその名の通り、自動車の「重さ」によって税額が決まる税金です。自動車の新規登録時、および車検の際に先払いで支払います。自動車重量税自体は毎年発生しますが、実際に支払いを行うのは車検が行われるペースと同じで原則2年に1回です(新規登録時は3年)。

税額は車両重量0.5tごとに4100円です。例えば、1.7tの場合は4100円×4=1万6400円で、新規登録の場合は3年分をまとめて払うので1万6400円×3=4万9200円を支払うことになります。

自動車重量税にもいわゆるエコカー減税があり、例えば次世代自動車の場合は自動車重量税が100%減税となります。

自動車重量税は次回の車検までの分を前払いする性質の税金であるため、車検を迎える前に登録を抹消してしまうと、払い過ぎになってしまいます。その場合は所定の手続きをすると税金が還付されます。

自動車取得税は自動車を取得することによってかかる税金で、性質としては消費税に近いです。利率は取得価額(自動車を取得するために必要な金額。カーナビやステレオなどの付加物の価額も含む)の3%です。

自動車取得税にもエコカー減税があり、例えば次世代自動車を取得した場合自動車取得税は100%減税となります。

税収の推移と割合

国や地方自治体が行う様々な事業を支える税金です。国としては国民生活の税収は多いに越したことはないのですが、当然税金を上げれば国民から反発を食らいますし、税収を増やしたせいで消費が落ち込み失業者が増え、返って国家財政が悪化する可能性もあります。このあたりのバランスをどうやって取っていくかが政府の腕の見せ所です。

また、国や地方自治体の税収は毎年変化します。基本的に好景気なときほど国民の税負担能力が高くなるため税収は増え、不景気の時には景気刺激のために減税が行われ。個人や法人の所得も減るため税収は減ります。平成27年時点の国の一般会計税収(一般的な経理による税収)は約56.4兆円でした。これは約25年ぶりの高水準です。

また、国の税収の内訳を見た場合、所得税、法人税、消費税の3つが柱となっています。平成27年時点では所得税が17.6兆円、法人税が17.1兆円、消費税が12.2兆円でした。

所得税や法人税は景気に左右されるためここ10年でも大きく変動していますが、消費税は税率が一定の間は同じくらいのところで安定しています。国家が所得税や法人税を引き下げて消費税を上げたがる一因として、消費税による税収が安定していることが上げられるのかもしれません。

税金と国債

国や地方自治体は毎年税金を集め、それを財源に様々な事業を行います。前述の通り、国の平成27年時点での一般会計税収は約56.4兆円でした。一方で、ここ数年、日本政府は毎年約100兆円前後の支出を行っています。

収入よりも支出のほうが約40兆円も多いのです。普通収入よりも支出のほうがこんなに大きかったらあっというまにお金が続かなくなり破産してしまいますが、今のところ日本政府に財政破綻の兆しは見られません。一体なぜでしょうか。

実は国家は国債という債券を毎年発行しています。国債とは国庫債券の略で、要するに国が借金するために発行するものです。投資家は国債を買い、毎年発行時に定められた利息を受取、償還日が来たら元本を受け取ります。

債券には企業の発行する社債や地方自治体の発行する地方債などがありますが、国債は国が発行元であり、他の債券と比べると信頼性が高いというメリットがあります。国が信頼されている限りは国債を買いたがる投資家が存在し続けることになり、彼らのお陰で国は赤字を出しても問題なく事業を行えるのです。

しかし、国債は借金ですから当然、毎年利子を払わなければいけませんし、償還日が来たら元本も返済しなければなりません。国家の支出のうち、国債の利子や元本の支払いに当てるお金を国債費と言いますが、毎年日本は国債費を約23兆円払っています。これが払えなくなったら国は投資家からの信頼を失うので国債を買い取ってもらえなくなり、財政破綻します。

国債は税収が落ち込む景気後退局面で発行額が増えます。平成21年には過去最高となる約52兆円の国債発行が行われました。平成27年には36.4兆円まで減りましたが、依然として高い水準が続いていることは間違いありません。国の支出に占める国債発行の割合は約40%前後です。

国債費の負担を減らす方法

国債費を減らす方法はいくつかあります。まず、国債を新規発行するのを辞めてしまえば、当然国債費は減ります。しかし、この方法はうまくいかないでしょう。社会保障を0にしてもまだ足りず、地方交付税(地方自治体間の格差解消のために国から地方に支払われるお金)も減らさなければいけません。これは無理でしょう。

二つ目の方法はインフレを起こすというものです。インフレとは物価が上がり、お金の価値が下がる仕組みのことです。お金の価値が下がると、現時点で保有している現金資産の実質的な価値は目減りしますが、一方で現時点で抱えている債務の重みも小さくなり、借金の実質的な負担も小さくなります。

極端な話ですが、所得が100倍、物価も100倍になれば額面上の税収も100倍となり、借金の実質的な負担は100分の1になります。これは流石に現実味のない話ですが、所得と物価が上がれば相対的に借金の重みが小さくなるのは事実です。

税金の使い道

次に税金の使い道を見ていきましょう。一般会計の枠内における国の税金の使いみちトップ5は「社会保障費(31.5兆円)」「国債費(23.5兆円)」「地方交付税交付金等(15.5兆円)」「公共事業(6.0兆円)」「文教及び科学振興(5.4兆円)」です。

社会保障費とは

社会保障費とは、医療や介護、年金などに関連した費用です。例えば、通常、公的保険に加入している人は病院にかかっても窓口では3割しか医療費を払いません。残りの7割は国が払ってくれるわけです。この7割部分が社会保障費に該当します。社会保障費は介護、医療、年金の3本柱から成り立っていますが、この中でも特に急激な勢いで伸びているのは年金です。少子高齢化が進んでいるので当然といえば当然ですが。

国債費

国債費は前述の通り、国債の利子や元本の支払いに当てる費用です。利子に当てる分を利払費、元本に当てる分を債務償還費といいます。平成27年の利払費は約9兆円、債務償還費は約14兆円です。

地方交付税交付金等

地方交付税交付金などとは、国から地方自治体に向けたお金を支出します。地方自治体は、それぞれ自治体ごとに住民に対して警察、消防、福祉などの様々な公的サービスを提供します。

しかし、地方自治体ごとに財政力はまちまちです。豊かな自治体もあれば、貧しい自治体もあります。自治体が貧しいという理由で必要最低限の公的サービスすら実施されないようでは困ります。そのため、国が回収した国税を貧しい地方自治体に回すことによって、バランスを取っています。

国の地方交付税交付金なしでも運営ができる自治体を不交付団体と言います。本来は地方と国が対等な立場であるためにもすべての自治体が不交付団体となることが望ましいのですが、平成27年時点での不交付団体は都道府県が1(東京都のみ)、市区町村が59と少数派にとどまっています。

人も企業も多い一見財政的に余裕がありそうな政令指定都市は1つも不交付団体になっておらず、むしろ地方の中小自治体のほうが多いです。原発がある自治体は電源三法交付金という交付金を受け取れるため、不交付団体となっているところが多いです。

公共事業費

公共事業とは、簡単に言えば国が公共の福祉や利益のために行う事業のことです。基本的に多くの人によって必要とされる財は市場を通じて適切に供給・配分されますが、市場に任せているだけでは適切に供給・配分されない財もあります。

例えば道路や港湾、公共施設など、多くの人が使えて、しかも費用を負担しないでも使えるものに対しては誰も費用を出そうとしないので、市場に任せていてもいつまでたっても供給されません。そこで国はこうした多くの人に必要な財を作るために、強制的に税金という形でお金を回収しているわけです。

無駄な公共事業は何かと批判されがちですが、公共事業の支出自体は社会保障費の5分の1程度に過ぎず、削る対象としてはあまり適していません。支出が大きなところから削るのは無駄をなくすための大原則であり、まずは社会保障から手を付けるのがセオリーです。

文教及び科学振興費

文教及び科学振興費は教育、科学技術発展のために使われるお金のことです。例えば公立学校の教師の給料や学校の改修費用、宇宙開発や海洋開発の振興のためなどに使われます。

この分野は将来的に国の税収を増やすためには強化が必要不可欠なはずなのですが、効果が出るまでに時間がかかりやすいため軽視される傾向があります。特に教育にお金をかけたメリットが享受できる頃には亡くなっている高齢者からの反発が大きいです。

一般会計と特別会計

政府の予算には一般会計とは別に、特別会計というのがあります。特別会計は、特定の事業を行う場合に一般の収入や支出などとは区別して整理するためのものです。特別会計は一般会計とは切り離されて考えられます。

通常、国や地方公共団体の会計はすべてを一つにまとめる(すべて一般会計の枠内で処理する)ことが原則です。しかし、すべてを一つにまとめてしまうと、どの事業の費用対効果が大きいか、あるいは小さいかということがわからなくなってしまいます。そのため、一部の特定事業については一般会計とは別に特別会計でまとめることによって、各事業の費用対効果を図っているのです。

特別会計は特定事業についてのための予算であり、その事業のためにしか使われません。別の味方をすれば特別会計は決まった用途にしか使えない、ということでもあります。一般会計の中では「予算が余ったから別の事業に回す」ということができますが、特別会計の場合はそれができません。

特別会計は特定の事業にしか使われないため明朗な予算と見られがちですが、一方で用途が限定されているために議論が形式的なものになり、また余ったお金を別の事業に回せないため、予算を使い切るために不要な事業まで行われがちという欠点もあります。

特別会計も含めた国の予算は約240兆円です。一般会計が100兆円ぐらいですから、特別会計は140兆円ということになります。実はテレビでよく報道される一般会計は全体の半分にも満たないわけです。

基礎的財政収支とは

基礎的財政収支とは、国の収入と支出のバランスのことです。収入とは税収及び税外収入、支出とは国債費を除いた支払いのことです。基礎的財政収支が+、つまり収入のほうが支出よりも大きくなれば、借金に頼らずに国債の支払い意外を賄える状態になります。日本政府は2020年までに基礎的財政収支を黒字化することを目標としていますが、現時点では見通しは立っていません。

ドーマーの定理

ドーマーの定理は、1944年にアメリカのドーマー博士が提唱した、国家が財政破綻しないための条件をまとめたものです。内容は簡単で、毎年の国債発行がGDPの一定割合に留まるならば、国債残高の対GDP比は一定の値に収束し財政破綻は生じない、というものです。

仮に建国当初から国債発行額を対GDPで10%に固定し続けると決めていれば、国債残高の対GDPは常に10%にとどまるため、財政破綻は生じません。GDPが増えればそれに対する国債発行額も増えますが、比率が変わらないので大丈夫、というわけです。

財政赤字を賄うための国債発行額は単純に額面で見るのではなく、GDPとの比較で見るのが正しいとされています。GDPとは簡単に言えば日本で日本人が1年の間に稼いだ合計金額のことです。

例えば国債発行総額が1000兆円あっても、GDPが10京円あれば、国債発行総額はGDPの1%、つまり約3日分にしか過ぎないということになり、簡単に返済は可能です。しかし、GDPが10兆円しかなければ、国債発行総額はGDPの1万%、つまり100年分ということになり、返済はほぼ不可能です。現在の日本の国債発行総額は約1060兆円、GDPは約500兆円なので、その比率は約200%ということになります。

社会民主主義、リベラリズム、リバタリアニズム

どこまで国家が強制的に税金を回収していいか、という基準はそれぞれ違います。税金は高くなってもかまわないから社会保障や教育などを充実させるべきだ、と考える人もいれば、政府の国民に対する干渉は極力避け、国民の自由を最大限保証すべきだ、と考える人もいます。

非常に大雑把に考えれば、高福祉・高負担を是とする考え方を「社会民主主義」、低福祉・低負担を是とする考え方を「リバタリアニズム」、その中間に位置するのを「リベラリズム」と言います。(大枠での括りです)。いずれの考え方も資本主義、議会政治の枠組みを基礎とする点では同じですが、国民に対する介入度が違います。

社会民主主義は資本主義、議会政治により発生する貧困、失業などを政府が積極的に介入し、実質的な公正や機会平等を重視します。共産主義とは異なり、暴力革命は否定し、議会の中で社会の改良を目指します。

リバタリアニズムは他者の財産権を侵害しない限りは行動の事由は確保されるべきであるとする自由至上主義的な考え方です。

「徴税」によって富を再分配する行為は、その目的がどんなに正しいものであったとしても、公権力による財産権の侵害以外であり、してはいけないことであると考えます。もちろん豊かな人間が自分の意志で貧困者を助けるのは勝手ですが、それを国が矯正してはいけない、というわけです。国家の強制的な財産権の侵害には反対ですから、国民皆保険や国民年金にも反対します。各人が自分で民間の保険や年金に入ればいい、という考え方です。

リベラリズムは個人の自由を確保するために政府に寄る富の再分配や法的規制を肯定します。元々貧しい人が奴隷になり自由を侵害されるのを避けるために、ある程度の徴税はするべきであるという考え方です。

リバタリアニズムとリベラリズムはどちらも自由を善とするという点では同じですが、自由を保証するための方法で意見が別れているわけです。

国民負担率とは

GDPに対する税負担+社会保険料負担の割合を国民負担率といいます。国民負担率が多くなると個人や企業が自由に使えるお金(手取り収入)が減りますが、その分社会保障が充実します。国民負担率が高くなるとそれとは逆の現象が起きます。日本の平成278年時点での国民負担率は約44%で、OECD加盟国の中では下位に位置していています。

加盟国の中で最も国民負担率が高いのはルクセンブルクで約95%、最も低いのはメキシコで約22%です。その他ドイツは約53%、イギリスは約47%、米国は約32%と鳴っています。

税金を払わないとどうなるか

税金は正確に申告し、決められた期限までに納税しなければなりません。会社員の場合は会社が勝手に申告・納税してくれますが、自営業者の場合は自力でやらなければならないため申告漏れを起こす可能性があります。また、会社員でも固定資産税などをうっかり滞納してしまうケースは考えられます。

税金を滞納してしまった場合、まずは自宅に督促状と呼ばれる書類が届きます。これは簡単に言えば「税金を払ってください」というお願いの書面です。督促状が届くまでの期間は税金の種類によって異なりますが、例えば所得税の場合は本来の納期期限から原則50日以内に督促状が送られてきます。

また、延滞をするとその理由にかかわらず延滞税が発生します。延滞期間が2ヶ月以内の延滞税率は原則7.3%ですが、現在は2.7%に減免されています。延滞期間が2ヶ月を超えた部分の延滞税率は原則14.6%ですが、現在は9.0%に減免されています。

督促状が来たにも関わらず支払いを行わなかった場合、財産の差し押さえが行われることになります。ただし、差し押さえがいつどのようなタイミングで行われるかは各自治体の判断によるため、督促状が来てから何日以内、とはいえません。自治体によっては督促状が2回送られてくることもあります。

仮に差し押さえになったとしても、すべての財産が持って行かれてしまうわけではありません。例えば、給料は全額差し押さえられることはありません。それをやられると生活ができなくなってしまうからです。

給料の差押が禁止される金額(手元に残る金額)は給料や家族の人数によって左右されますが、一人暮らしならば概ね10万円程度、生計を一にしている親族がいる場合は1人増えるごとに4万5000円が追加されると考えてください。

税金が払えない場合の適切な対処法

税金が払えない時は、まずは早急に所轄の税務署に連絡して、相談しましょう。普段あまり馴染みのない税務署ですが、相談すれば意外と親身に対応してくれます。逆に逃げ回っていると納税する意志がないとみなされ、対応もおざなりになります。すぐには納税できなくても、まずは納税をするという意思を見せることが大切です。

税金が払えない場合は、納税の猶予もしくは換価の猶予で支払いを待ってもらうことができます。あくまでもまってもらうだけで、払わないでよくなるわけではないので気をつけてください。

納税の猶予とは、その名の通り納税をまってもらうことです。例えば以下のような理由があって納税ができないという場合は、納税を最大で1年猶予してもらえる可能性があります。

  • 財産について災害を受け、又は盗難にあったこと
  • 納税者又はその生計を一にする親族が病気になったり負傷したこと
  • 事業を廃止し、又は休止したこと
  • 事業について著しい損失を受けたこと
  • 修正申告により税額が確定したこと

一方、換価の猶予とは、差し押さえられている財産、もしくは今後差し押さえの対象となりそうな財産をお金に変えられてしまうのをまってもらうことです。税金を払うと事業の継続や家計の維持が困難になりそうな時に最大で1年まってもらうことができます。

猶予が見込めないときは?

上記の条件に当てはまらず、猶予が望めない場合でも、税務署に真摯に相談すれば分割での支払いに応じてくれることがあります。本来、税金は決められた額を一括で支払うものですが、税務署が融通を利かせてくれるのです。

ただし、それは滞納者が支払う意志を見せることが前提です。税金を最初から払う気がないような滞納者に対しては、税務署も冷たくなります。税務署から連絡が来た場合は無視してはいけません。

逆に、無理してできない約束をするのもいけません。誠意を見せたいがあまりに短期間での完済を約束し、結果払えませんでしたではそちらのほうが返って信用を失います。できる約束だけをしましょう。

税金は自己破産でも消えない

税金を滞納している状態で自己破産をしても滞納分が帳消しになることはありません。自己破産は原則としてすべての債務がなくなる=相手方の債権がなくなる手続きですが、例外的に自己破産でもなくならない債権もあります。このような債権を非免責債権と言います。非免責債権は全部で7種類あり、税金もこの中に入っています。税金が払えないからと言って自己破産をしても何の意味もないということです。

仮に税金の滞納分と民間の金融機関等などからの借金の両方を抱えている場合は、まずは税金から払っていくのがベターです。金融機関などからの借金はいざという時には自己破産でチャラになりますが、税金の滞納分はそうならないからです。

電子納税とは

納税は銀行、口座振替、税務署の窓口などで行うのが一般的ですが、最近は電子納税を使う人が増えてきています。電子納税とはインターネット経由で納税の手続きを済ませられるシステムです。金融機関や税務署まで出向く必要が無いため、いつでも行えるというメリットがあります。ただし、電子納税の場合領収書は発行されません。領収書が必要な場合は、税務署の窓口まで行きましょう。

納税証明書とは

納税証明書とは、その名の通り納税をしたことを証明してくれる書面のことです。銀行に融資を依頼したり、収入を証明したりする際に使います。納税証明書には市区町村が発行するものと税務署が発行するものがあります。納税証明書は直接市役所や税務署に出向くほか、郵送やインターネットでも請求できます。

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