欧州金融情勢は、先週のECB(欧州中央銀行)の定例理事会での議論、結論内容に注目が集まりました。注目された資産購入額が、来年1月から9月末までは、これまでの月額600億ユーロから300億ユーロへと半額への決定がされました。市場予想は、400億~200億ユーロでしたから、概ね予想通りでした。しかし、金融市場は、ドラギECB総裁の記者会見の発言に敏感に反応しました。

「テーパリング(段階的縮小)ではない。単なる小規模化である。資産買入れプログラムが突然終了することはない。金利は現行水準で、QE(量的緩和)後も維持する。」と発言されました。
現在約4兆ユーロ規模に膨らんでいるECB保有資産が、急速に減額されることはないことを意味します。これは物価動向、つまり消費者物価指数とも関係します。

直近のユーロ圏9月消費者物価指数・速報値1.5%前年比となっています。年初来の動きとしては、1月1.8%、2月2.0%と順調にECBのインフレ目標2%に近づく動きでした。それが6月、7月と1.3%に落ち込み、ユーロ圏の景気の落ち込みさえも懸念する事態となりました。

そして8~9月は共に1.5%となり、現在に至っています。これでECBの各国メンバーは、景気対策を怠るべきではない意見が続出したのではと推測します。景気が一定の水準を保つためには、中央銀行が一定の資金供給を続けることが必要です。低利で潤沢に資金繰りが出来るという安心感が企業の資金担当者にはあります。

そのためのQEつまり量的緩和と言うことで、ECBとその配下のユーロ圏各国中央銀行は国債等の資産を購入することで、市場に資金を供給しています。その資金を来年1月から9月末までは半減するということです。

そして量的緩和を来年9月以降も継続すると明言しています。相当に景気に配慮したと筆者は推測します。つまり慎重に量的緩和の縮小は急がないと言っているのです。
リーマンショック後の2兆ユーロ規模のECB保有資産額に近づけるには相当の期間を要するのではと推測します。また購入対象国債、機関債など買入れ可能な資産が底をつき始めているのも事実なようです。

ギリシャ債、イタリア債、ポルトガル債など利回りの高いリスク国債をむやみに購入することは出来ません。ECBのバランスシートが傷んでしまいます。あくまでもリスクに配慮した購入が求められます。

また「金利は現行水準で、QE後も維持する。」とのドラギ総裁の発言を市場は重視したようです。現在のECBの政策金利は、メイン・リファイナンシング・オペレーション0.00%です。米国のフェッド・ファンド・レートに相当するものです。金融機関が中央銀行から借り入れができる基準となる金利です。

そして預金金利-0.40%、貸出金利0.25%となっています。ゼロ金利の金利水準が、QE後も維持することから、ECBの来年の政策金利変更はなく、2019年以降に、利上げはずれ込むのではとの観測が台頭してきています。

筆者は今年前半には、ひょっとして今年後半ないしは来年には利上げを実施するのではと思っていましたから、これは想定外の動きとなりました。あくまでも景気対策重視の資金供給を続けることには変化がないことを確認したという意味では、ドラギ総裁の重要な発言でありました。
6月のポルトガルでのセミナーでは、「デフレ圧力から、リフレへと変わりつつある。」と発言され、金融市場は、意外に利上げは近いのではとの観測が強まりましたが、見事に裏切られた金融市場と言えます。

下記は、ユーロ短期金利先物ユーリボー(3ヶ月物)9月限の利回りの推移を示しています。筆者が金利の動きで注視しているものです。2年間の期間で示しています。現在の価格は100.295です。マイナス体系となっており、現在-0.295%です。これを見ると、左側の100を超えた時期が去年の1月です。つまりマイナスの金利体系に移行した時期です。この時期から、多少の波はあるものの、一貫してマイナス体系を維持しています。

今年前半の消費者物価水準が2%近くに跳ね上がった時期には100に近づく動き(丸部分)はあったものの、その後は-0.20~-0.30%の範囲で推移しています。このチャートで、右肩下がりに売られる状況にならないと、金利は上昇してきません。そうならないと本格的にユーロには投資資金が集まらないのではと言えます。

そして欧州では、スペインのカタルーニャ自治州の独立問題で引き続き揺れています。この問題につきましては、歴史的経緯を含めて今月前半のレポートにまとめてあることは、皆さんご承知であると思います。その後の変化についてまとめておきたいと思います。

ついに、スペイン中央政府はカタルーニャ自治州の自治権をスペイン議会の承認をとり、停止しました。憲法155条(地方政府が国家の利益を大きく害する場合などに、中央政府が「必要な措置」と強制できると規定する。)の発動です。

これにより、プチデモン・カタルーニャ自治州首相や州閣僚はすべて解任されました。また12月21日に州議会選挙を実施すると発表しました。プチデモン・カタルーニャ自治州首相も、カタルーニャ独立宣言をカタルーニャ自治州議会でしています。中央政府とカタルーニャの対立構造がより鮮明になりました。

10月1日の住民投票では90%以上の住民が独立賛成票を投じたと報道されているが、独立に反対する住民が棄権したようであり、投票率が低かったようです。ここに来て、カタルーニャ州でも大規模な独立反対集会が起きています。

カタルーニャはスペインで一番経済的に裕福な州であり、スペイン各地から多くのスペイン人が移住してきています。また、既に1,200社以上の企業がバルセロナなどカタルーニャ州から本社を移転することを決めており、経済への影響を心配する声が出ています。
スペイン政府は、来年GDP(国民総生産)を2.6%から2.3%に引き下げています。スペイン政府、欧州諸国ともに、カタルーニャの独立を認める空気はまったくなく、カタルーニャ独立推進派は四面楚歌の様相です。

スペイン継承戦争(1701年)以来続く、独立のDNAは受け継がれており、前首相となってしまったプチデモン氏としても、簡単に矛を収めるという訳には行かないでしょう。まだまだ混乱が続くカタルーニャ独立問題と言えます。

為替の世界では、カタルーニャ問題が尾を引き、ユーロ安の相場形成の一要因となっているようです。注意したいと思います。今回ECBの量的緩和縮小が急激ではなく、金利も上昇するような局面ではなく、またカタルーニャ問題が加わり、欧州に火種有との印象を強めました。皆さんのポートフォリオの参考材料にして頂けたらと思います。

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