2019年の新たなトレンドとして、いま日本のジュエリー市場をにぎわせている「合成ダイヤモンド」。

天然ダイヤモンドと同じ化学式・結晶構造・輝きをもちながらも、価格は割安ということで、20~30歳代の若い世代にも購買層が広がりつつあるようです。

今年1月、東京ビッグサイトで開催された日本最大のジュエリー展示会「第30回 国際宝飾展」でも、「合成ダイヤモンド元年」といわれる2019年の日本市場を狙って、国内外の合成ダイヤモンド企業が続々と出展。宝飾マーケットの新ジャンルを築くムーブメントとして話題を集め、国内への流通も本格的に始まっています。

なぜ、いま合成ダイヤモンドが注目されているのか、また、天然ダイヤモンドとはどこが違うのか……。今回は、日本で人気が高まる合成ダイヤモンドの市場背景や、今後の消費マーケットの動向に迫ります。

合成技術の進化・低コスト化により工業用から宝飾用へ

半世紀以上前から、アメリカや日本の研究室で開発が進められてきた合成ダイヤモンド。
1955年にはアメリカのゼネラル・エレクトリック社が、世界で初めてダイヤモンドの合成に成功。ただ、ブリリアントカットが施せる宝飾質レベルの合成品を作るためには、天然ダイヤモンド以上のコストがかかるため、合成ダイヤモンドは主に工業研磨剤という用途で長年使われてきました。

そんな工業用の合成ダイヤモンドが、宝飾用として店頭に広く出まわるようになったのは、つい5~6年前のこと。2010年以降、中国の合成技術が飛躍的に進化し、宝飾質レベルの高品質な製品を低コストで作れるようになったからです。

天然物と見た目は同じなのに価格は10分の1!

天然のダイヤモンドができるまでには地中で何十億年もかかりますが、ラボで炭素などを原料に生産され「ラボ・グロウン」の合成品なら、わずか数週間で成長。天然物ではレアな色や大きさのダイヤモンドを「作れる」というメリットもあります。
そして何よりも最大の魅力は、その手ごろな価格。一般的な合成ダイヤモンドの1カラットあたりの価格は、天然ダイヤモンドの10分の1程度といいますから、かなり格安といえるでしょう。

また、合成ダイヤモンドはキュービックジルコニアなどの模造石とは異なり、化学的な成分や結晶構造が天然物と変わらないため、特別な識別装置を使わなければ見分けがつきません。見た目では区別できないことから、以前は合成物と天然物を取り違えるトラブルもあったようです。
とはいえ、販売ルートの明確なメーカーの正規品であれば、そのようなトラブルは起きえませんし、最近は天然物と合成物の住み分けが業界的に確立しているため、両者を取り違えるリスクは少ないとされています。

違法ダイヤモンドを排除する動きが広まる中で……

昔から多くの人たちを魅了してきた天然ダイヤモンドですが、かつては紛争の資金として不正取引されることも多く、「コンフリクトダイヤモンド(紛争ダイヤ)」「ブラッドダイヤモンド(血のダイヤ)」と呼ばれる違法品も存在しました。また、過剰採掘による環境破壊や児童労働が問題視されるなど、天然ダイヤモンドをめぐっては、なにかとネガティブな話題が付きまとっていたのも事実です。

こうした問題を受け、2000年以降、ダイヤモンドの産地証明を義務づける「キンバリープロセス認証制度」が国連で採択されるなど、違法ダイヤモンドを国際市場から排除する動きが活発化。紛争とは無縁のクリーンなダイヤモンドを求める流れが加速し、現在は世界に流通する天然ダイヤモンドの99%以上が、産地や販売ルートの明確なコンフリクトフリーとされています。

さらに近年、天然物と同じ輝きをもつ高品質な合成品が登場したことで、市場に新たなムーブメントが巻き起こりました。紛争を起こさない・環境を破壊しないなどの観点から、エシカル志向(環境や社会に配慮するライフスタイル)の海外セレブやミレニアル世代の間で、よりクリーンな合成ダイヤモンドを支持する動きが急速に広まっていったのです。

名門ブランド「デビアス」の参入で市場が一気に拡大

そうした中、昨年9月、世界最大手のダイヤモンドブランド「デビアス(英国)」が合成ダイヤモンド部門を立ち上げ、世界中の宝飾業界で大きな話題となりました。デビアスといえば「A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠に)」という企業コピーが有名ですが、国際市場をけん引する名門ブランドの新たな展開によって、合成ダイヤモンドはその存在感を一気に高めることになったのです。

海外市場の拡大とともに、国内の市場も本格的に動き始めています。昨年10月には、京都の老舗ジュエリーメーカー「今与(いまよ)」が、日本初の合成ダイヤモンドブランド「SINCA(シンカ)」を設立。シンプルなデザインの指輪やネックレス、イヤリングなどを展開し、日常使いのアクセサリーとして購入する若い女性や、婚約指輪を購入するカップルもいるそうです。

希少価値のない合成ダイヤモンドは淘汰される?

では、国内外で新たなムーブメントを巻き起こした合成ダイヤモンド市場は、今後どうなっていくのでしょうか。業界内ではさらなる市場拡大に期待が寄せられる一方、将来的なマーケットの展開は厳しいという声も聞かれるようです。

まず、「希少性」という宝石としての価値を満たしていない合成ダイヤモンドは、今後数年で宝飾市場から淘汰されていくという見方です。数十年前にもルビーやサファイアなどの合成石が登場して話題になりましたが、希少性がないことから存在価値が薄れ、いまや市場でほとんど見かけなくなったといいます。どれほど天然の宝石と同じ輝きをもっていても、希少性という「宝石の価値=永遠の価値」がなければ、合成ダイヤモンドも合成のルビー・サファイアと同じ道をたどるのではないかというのです。

また、合成ダイヤモンドの生産コストは技術開発とともに年々下がっており、買い取り価格もここ3~4年で半分程度にまで下落。安く購入できるのは良しとしても、人間の心理として「安価なものは価値が低い」と考えがちです。そうした側面から、今後は合成物と天然物の差別化が進み、むしろ天然物の価値が上がっていく可能性もあるといいます。

ダイヤモンドは消費者が自身の価値観で選ぶ時代に

とはいえ、時代とともに消費者の意識も価値観も変わりつつあります。
天然物と同じ輝きなら、よりクリーンで価格も手ごろな合成ダイヤモンドを選択する……。そんなエシカル消費の流れを受け、単に高価な宝石を所有することよりも、自分の気分に合ったアイテムに価値を見いだす消費者は確実に増えています。ファストファッションを好むミレニアル世代にも、これまでジュエリーの購買層だった中高年世代にも、大切な人へのプレゼント用にも、合成ダイヤモンドは魅力ある新たな選択肢となることは間違いないでしょう。

これからは、ブライダルなど思い入れのあるシーンでは天然ダイヤモンド、ファッションとして楽しむには合成ダイヤモンドといったように、消費者が自身の価値観で選択する時代になっていくのかもしれません。ということで……もし、あなたが購入するならどちらを選びますか?

※参考資料/国際宝飾展HP、朝日新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫  
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。

 

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