サラリーマンが退職・転職を行うと、勤務先で加入していた社会保険は脱退する。スムーズに転職しない場合、年金に関しては国民年金に加入する。健康保険に関しては国民健康保険に加入するのが原則だが、勤務先の健康保険に任意継続で加入できる場合もある。
任意継続保険と国民健康保険では、払う保険料も変わってくる。保険料は安い方が一般的にお得だと言えるので、計算方法をおさえておき最適な選択をしたいものである。
退職者が原則として加入する国民健康保険
国民健康保険は本来自営業者が加入することを想定しているが、退職すると勤務先の健康保険は脱退となるので、退職者の受け皿でもある。
国民健康保険は地方自治体が運営し、個人単位でなく世帯単位での加入となる。
世帯内で職場の社会保険に加入してない、もしくは社会保険の扶養家族になっていない人は加入する。
世帯単位で加入するため、保険料には世帯単位で一定額を平等割があり、固定資産税額に対する保険料として資産割もある。ただ、資産割や平等割を払う自治体は少なくなっている。
むしろ加入者1人1人に対して一定額の支払いが課される均等割のほうが、ほぼ全ての自治体で対象となっている。
また保険「料」となっている自治体と保険「税」となっている自治体があるが、滞納分の時効に違いがあるものの、金額の有利不利には影響しない。以下国民健康保険料と表記するが、保険税のことも指すものとする。
任意継続が選べる条件とは
任意継続で加入できる条件として、まず資格喪失日(退職の翌日)から20日以内に手続きを行わなければならない。この期限を過ぎてしまうと、国民健康保険に加入することになる。
そして、保険料を期日までに滞納することなく払い続けることも求められる。1回でも滞納があれば、脱退となる。
この2点を組み合わせて考えると、とりあえず任意継続に入っておき、不利だと分かった時点で保険料を払わず脱退し国保に加入する方法が想定される。
なお最長で2年加入でき、その後も転職してない場合は国民健康保険に加入する。
任意継続保険料と国民健康保険料の大きな違い
任意継続と国民健康保険では、保険料の計算は大きく異なる。
大まかにいえば任意継続保険料は、退職時の給与をもとに決まる。国保料は世帯・個人ごとに決められた定額負担(個人毎は均等割、世帯毎は平等割)のほか、前年の所得に基づいて決まる所得割、固定資産税額に基づいて決まる資産割もある。
前年の所得は、勤務先からの給与以外の所得も含まれる。不動産所得・雑所得・譲渡所得など確定申告を行った所得すべてが算定対象となる。
中には上場株式の配当所得や譲渡所得(源泉徴収がされたもの)のように、税金が徴収されているために申告対象を選べるものもある。
前年以前の損失があるなどの理由で確定申告を行って節税になることがあるが、国保を押し上げる要因にもなる。逆に申告対象としなければ、国保の算定対象とはならない。
任意継続保険料の計算方法
ここからは、保険料計算方法の詳細について触れていきたい。
退職した月の給与、厳密には「標準報酬月額」によって決まる。標準報酬月額に運営団体ごと(協会けんぽの場合は都道府県によっても異なる)に決められた保険料率をかけて健康保険料が計算される。
厚生年金も含めて、勤務先で加入する社会保険は、勤務先と加入者本人が半分ずつ負担することになっている。ただし任意継続保険料は退職後に払うため、事業主負担分も含めて全額加入者負担となる。
標準報酬月額20万円(退職した月の給与が20万円程度)であれば、東京都の事業所で協会けんぽに加入していた場合、任意継続保険料は2.3万円程度である。介護保険に加入するかどうか(40歳以上で加入)でも保険料率が若干変わるが、10%~15%程度の負担が出る。
限度額
なお任意継続保険料の算定にあたっては、標準報酬月額に限度額が設定されている。2019年度は30万円だが、年度により若干の変動がある。このため、2019年度は月3.5万円弱が保険料の限度と言える。
扶養家族分の保険料負担は発生しないが、これは任意継続についても適用される。
納付対象の月
任意継続保険料は退職した月の分から、転職した月の前月分まで支払う。ただし月末日退職の場合は、退職した月の翌月からとなる。
国民健康保険料の計算方法
続いて国民健康保険料であるが、任意継続保険料より複雑である。
年度・納付対象の月
まず国民健康保険料の年度は4月~翌3月であるが、住民税決定後に決まるため、6月~翌3月の10回分割払いとしているところが多い。
退職した場合の保険料額は、年間の保険料×(退職した月~翌3月までの月数)÷12と、月数按分して計算される。
転職して次の会社の社会保険に入った場合は打ち切り清算され、年間の保険料×(退職した月~転職した月の前月)÷12 となり、超過して納付した保険料は還付される。
所得割の計算方法
確定申告もしくは住民税の申告で申告した所得は原則としてほぼ全てが算定対象ではあるが、退職所得は除外されるので、退職金の大きさを心配する必要はない。
所得割は所得合計から33万円を引いた金額に、保険料率をかけて計算する。東京都内の所得割料率は11%前後の自治体が多い。
厳密には、医療分・後期高齢者支援分・介護分から構成される。後期高齢者支援分は75歳以上の医療のために、75歳未満が負担することを意味している。介護分は介護保険に相当するもので、40歳以上の加入者のみ課される。
介護分の料率は2%未満の自治体が多いので、40歳未満と40歳以上で保険料率に大きな差はないが変わってくる。
また資産割が課される自治体は、課されない自治体に比べ所得割の料率は小さくなる傾向がある。
世帯単位の限度額
国保には医療分・後期高齢者支援分・介護分ごとに、世帯単位で限度額が設定されている。
2019年度は、医療分が61万円、後期高齢分が19万円、介護分が16万円である。つまりどんなに高くても、世帯単位で96万円ということになる。なお年度によって、この数字は増減する。
任意継続保険料と国民健康保険料の比較例
任意継続保険料と国民健康保険料のどちらが低くなるか、参考になる例を示したい。以下いずれの例も、任意継続保険料の保険料率は11.5%とする。また国保の所得割料率は11%で、均等割の金額は7万円、平等割・資産割は課されないものとする。
例1
退職前の給与(標準報酬月額):20万円
前年の所得:給与所得のみ(年収240万円=給与所得150万円)
扶養家族:1人(年収120万円=給与所得55万円で健康保険の被扶養者であった)
とした場合、国保所得割の算定基準は本人150万円-33万円=117万円、扶養家族分も同様に計算して22万円である。年額の所得割保険料は15.3万円であり、国保は計29.3万円となる。
任意継続保険料は月2.3万円、年額で27.6万円となる。
このケースではやや国保が高いが、本人・扶養家族に関して、少し状況の違うケースを例2・例3で考える。
例2
例1に比べ、本人の年収が倍のケースを考えてみる。退職前の標準報酬月額40万円、前年の年収480万円=給与所得330万円とした場合、標準報酬月額の上限は30万円のため、保険料年額は41.4万円である。
国保所得割の本人の算定基準は297万円となり、年間の所得割保険料は約35万円となって、均等割と合わせると約49万円と任意継続の方が有利になる。国保では扶養家族分の負担も生じること、任意継続では標準報酬月額の上限があることが影響している。
例3
例1の扶養家族の年収が95万円=給与所得30万円となったケースを考える。給与所得が33万円のため、扶養家族からは国保の所得割は生じず、均等割7万円のみとなる。このため国保は計26.9万円となり、やや国保が有利となる。
同じ健康保険の被扶養者であっても、国保の所得割が生じる水準かそうでないかで状況は変わってくる。ただいずれにしても、均等割が生じる点は注意したい。
例4
退職前の給与(標準報酬月額):20万円
前年の所得:給与所得150万円、雑所得20万円
扶養家族:なし
任意継続保険料は、例1と同じく27.6万円である。
所得割の算定基準は150万円+20万円-33万円=137万円と計算されるため、所得割保険料は約15万円となり、国保の合計は約22万円である。
国保のほうが有利であるが、給与以外の所得がもっと大きくなれば任意継続が有利になってくる。給与以外の様々な所得が大きいほど、任意継続の保険料が有利になると分かる。
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