クラウドソーシングサイトを使って受注するWebライターやプログラマー、あるいはUber Eatsの配達員など、働き方多様化でフリーランスが増えてきている。

このような社会情勢をふまえ、2020年からの税制改正ではフリーランス優遇が見られる。税制改正された制度を含め、従来からあったフリーランスの税制優遇全般を基本から解説する。

フリーランス節税対策の基本は経費計上

所得税や住民税の計算上、サラリーマンが得る給与は給与所得、フリーランスが得る報酬は事業所得に該当する。

所得は収入の金額そのままではなく、経費を差し引いて計算する。給与所得の経費は給与所得控除額であり、原則として年収に応じて自動的に決まる。

それに対して事業所得の経費は、実際に収入を得るのにかかった費用を計上するため、支払った金額の領収書などを集計する必要がある。

確定申告を行うにあたって気をつける点として、科目別に分類して集計することのほか、業務に関係ない支払は経費にできないが、業務に関係する経費は業務従事割合だけ経費に入れるといった点が挙げられる。

経費計上による節税は地道にやるしかないが、それ以外にもフリーランスには税制優遇が多数ある。

節税の額に関する注意点

経費を増やしたら、その額だけ税額が下がるわけではないことに注意したい。あくまでも所得を引き下げるものであり、節税額を見積もるとすれば表1が参考になる。

課税所得 所得税率
195万円以下 5%
195万円超~330万円 10%
330万円超~695万円 20%
695万円超~900万円 23%
900万円超~1,800万円 33%
1,800万円超~4,000万円 40%
4,000万円超 45%

1:課税所得と所得税率の関係

表1は、課税所得195万円の部分に対しては税率5%、課税所得195万1円~330万円の部分に関しては税率10%、・・・という形で計算することを意味している。これに少額の復興特別所得税と標準税率10%の住民税が加わる。

例えば、20万円経費が加わって課税所得340万円から320万円に下がった場合、(340万円-330万円)×(20%+10%)+(330万円-320万円)×(10%+10%)=5万円だけ所得税・住民税が下がる(復興特別所得税は考慮していない)。

以下説明する税制優遇策についても、同様に考えてほしい。

小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)

老後にもらう年金の上乗せとなる、いわゆる「私的年金」にはいくつかの種類があるが、注目度が高いものとしてiDeCo(個人型確定拠出年金)がある。

iDeCoにおいては、現役時代は自身で定期預金や投資信託、保険に資金を拠出して運用を行う。運用益は非課税であり、さらに拠出した資金分は原則全額が所得の引下げに回る。

iDeCoによる節税

iDeCoの掛金拠出額には表2のように限度額が設けられているが、フリーランスは厚生年金に加入できず私的年金の果たす役割がサラリーマンより大きくなるため、限度額がサラリーマンや公務員より大きい。

年金の加入形態 確定給付型年金 企業型確定拠出年金 掛金上限
月額 年額
第1号被保険者 6.8万円 81.6万円
第2号被保険者(公務員) 1.2万円 14.4万円
公務員以外の第2号被保険者 未加入 未加入 2.3万円 27.6万円
加入 1.2万円 14.4万円
加入
未加入 2万円 24万円
第3号被保険者 2.3万円 27.6万円

2iDeCoの掛金上限額


年金の加入形態が第1号被保険者とは国民年金の加入者で、フリーランスはこれに該当する。第2号被保険者は厚生年金加入者でサラリーマンが該当し、第3号被保険者は第2号被保険者の扶養配偶者にあたる。

支払った掛金は全額が、所得控除の対象となる。この意味でも、iDeCoはフリーランスにとって高い税制優遇効果があると言える。 

小規模企業共済とは?

iDeCoが該当する小規模企業共済等掛金控除の「小規模企業共済」であるが、この共済もフリーランス向けの老後資金向けに役立つものである。

正確には、フリーランスが廃業・退職した際に退職金として受け取る資金を形成するために、現役時に掛金を拠出するものである。

掛金月額は1,000円~7万円で、最大で年間84万円所得を引き下げる効果がある。

基礎控除

誰でも所得から差し引ける控除として、基礎控除がある。2019年分までは所得税38万円・住民税33万円と国と地方で異なるが、画一的な金額である。

2020年からは原則として「2019年以前+10万円」の所得税48万円・住民税43万円となるが、所得によっても変わる。

合計所得金額2,500万円超は基礎控除額が0円となり、合計所得金額2,400万円超~2,500万円であっても、表3のように縮小される。

合計所得金額 基礎控除額 割合
所得税 住民税
2,400万円以下 48万円 43万円 満額
2,400万円超~2,450万円 32万円 29万円  2/3
2,450万円超~2,500万円 16万円 15万円  1/3
2,500万円超 0円 0

32020年以降の基礎控除額

ただ多くのフリーランスは、基礎控除10万円引き上げの恩恵を受けられる。基礎控除改正の趣旨は、働き方多様化に伴い過大な給与所得の控除額を縮小し、その分基礎控除に回すことにあったからだ。

青色申告特別控除

もう1つフリーランスがおさえておきたい重要な控除(税制優遇)は、青色申告特別控除である。収入・経費の集計を要する事業所得者・不動産所得者などが、適切に記帳することを推進するために青色申告制度がある。

青色申告特別控除は、帳簿の整備状況により額が異なる。2019年分以前は10万円と65万円の2種類、2020年以降は10万円・55万円・65万円の3種類である。

10万円と55万円・65万円の違いは、青色申告を行う際に作成する決算書で貸借対照表まで作成するかどうかで変わってくる。貸借対照表とは期末(個人の場合は各年12月31日もしくは廃業・死亡時)時点の資産・負債の状況をまとめた表であり、上場企業は開示している。

一方55万円と65万円は貸借対照表まで作成する点は共通するものの、帳簿もしくは決算書の電子化にどれだけ対応してくるかで変わってくる。

具体的には青色申告決算書をソフトで作成して電子申告を行うか、電子帳簿保存法に基づく保存の承認をもらうかいずれかを行うと、65万円の特別控除が受けられる。

2019年以前は電子化への対応を行わずとも、貸借対照表を作成できれば65万円の特別控除は受けられた。しかし2020年以降は対応しないと55万円に減額される。

ただし原則10万円基礎控除が上昇するので、合計所得金額が2,400万円を超えない限り増税にはならない。税制優遇を求めるのであれば、ソフトを使って貸借対照表を作成し、電子化に対応することが重要である。

電子申告・電子帳簿保存とは?

65万円の青色申告特別控除を受けるために必要な「電子申告」もしくは「電子帳簿保存」とは何だろうか?

まず電子帳簿保存から触れるが、これは個人のフリーランスが対応するにはハードルが高いので簡単に述べる。操作履歴の管理や保存手続きの規定整備などを行ったうえで税務署へ届出が必要だが、法人企業のような組織的な対応が前提とされている。

電子申告は抵抗感を持つ納税者が多いものの、電子帳簿保存に比べれば個人でできる範囲である。国税庁「確定申告書作成コーナー」からは、電子申告も可能である。

もともと電子申告はICカード(マイナンバーカードもしくは住基カード)とカードリーダーを必要とし、毎年セットアップも必要なため、普及に支障が出ていた。

ただ2019年からは税務署で本人確認を受けること、もしくはマイナンバーカード認証を行うことで利用者識別番号を発行している場合は、カードによる署名なしに電子申告を行うことも可能になった。

マイナンバーカードを利用する方式、利用者識別番号で認証する方式いずれでもかまわないが、確定申告書本体と貸借対照表つき青色申告決算書のいずれも電子送信を行うことで、65万円の控除を受けることができる。

青色申告の特典

青色申告による税制優遇は、特別控除を差し引けることだけではない。

国民健康保険料も減る

これは特別控除による影響であるが、青色申告特別控除は所得税・住民税だけでなく、フリーランスが払う国民健康保険料を下げる効果もある。

国民健康保険料の所得割は確定申告により申告した所得に基づき算定され、青色申告特別控除も考慮されるからである。

赤字が生じた場合に3年繰り越して税軽減が可能

事業で赤字が生じた場合に、同じ年分の他の所得(分離課税の金融所得や不動産の譲渡所得を除く)と相殺できるだけでなく、3年間繰り越すことも可能である。

例えば30万円の赤字が生じた翌年に30万円の所得が生じた場合は、翌年の所得税・住民税負担も無くなる。

少額減価償却資産の特例

10万円以上の資産を取得した場合、そのまま経費にすることはできず何年かにわたって分割し経費とする「減価償却」の手続きをとる必要がある。

青色申告者の場合は、30万円未満であれば少額減価償却資産として、減価償却せずに必要経費にできる。

青色専従者給与の特典

個人事業主が親族に払う給与は、原則として必要経費にはできない。ただし親族が専従者であれば税制上の特典があり、特に青色申告の場合は専従者給与の特例で給与を必要経費にできる。

ただし専従者には細かい要件があり、届出も必要で給与額の制限もあることには気をつけたい。

家内労働者等の必要経費の特例

最後にフリーランスが使える特例として、家内労働者等の必要経費の特例を挙げたい。要件の前に金額だけ挙げると、55万円(2019年までは65万円)を事業所得から差し引ける必要経費の特例である。

ただし金額的な条件を挙げると、「事業所得の必要経費+公的年金等以外の雑所得の必要経費+給与所得控除額」が55万円より少ないときに使える特例である。

フリーランス自身の状況としては、特例の名称からは内職をやっている人を想像しがちである。主な層としては内職者を想定しているが、特定の事業者から専属的に受注しているフリーランスでも使える。

高齢者の場合は、シルバー人材センターに登録して受注しているようなケースが該当する。現役世代でも、例えば1社の下請け的な働き方をするプログラマーであれば該当する。

必要経費が年55万円に届かない場合は、税制優遇の手段として使えるので検討したい。

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