最近メディアで頻繁に見かけるビットコインのニュース。これは従来の紙幣やコイン、クレジットカードなどとはひと味違った新しい貨幣、インターネット上で流通する仮想の通貨のことらしい。この通貨が今、ものの売買の決済だけでなく、新しい投資の対象となっていることで、にわかに注目を集めることになった。なにしろ、ここ1年くらいの価格の上昇は、銀行の金利や株の上昇とはけた違い。もちろん、その分リスクも大きいようだ。ビットコインに代表される仮想通貨の投資価値について考えてみよう。

仮想通貨、ビットコインっていったい何?

私たちがものを売ったり買ったりするとき、その仲介となるのは紙幣やコインなどの通貨だ。

それが、最近のインターネットの普及にともなって、実際に通貨を手にすることなく、新しい概念として、ネット上の仮想の貨幣を通してものの売買を行おうという動きが出てきている。これが「仮想通貨」と呼ばれるものだ。これまでも、クレジットカードの決済や、Suica(スイカ)や企業のポイントカードなど、電子マネーの決済で現物のお金を使わない売買方式はあったのだが、これらと仮想通貨は決定的に違う。

何が違うかといえば、従来の通貨のような国や銀行などの運営主体がないということだ。たとえば円では日本国政府や日本銀行という後ろ盾(信用)が支えているが、仮想通貨にはそうした運営主体はない。
では、なぜ通貨としての信用が維持されるかといえば、ブロックチェーンと呼ばれる独特の稼働システムにある。これは一言でいうと取引履歴の記録と保管だ。仮想通貨では、すべての取引が台帳に記載され、それがデータとして保存され、しかも改ざんできない仕組みになっている。この履歴保管システムが、仮想通貨の信用の裏付けになっているのだ。

仮想通貨は、ここ数年で急速に増えており、いまや1000種類もあるといわれている。ただ、信用のおけない、詐欺まがいの仮想通貨もたくさんあるので、うかつに手を出すのは危険だ。今、日本で流通している仮想通貨で、信用できるのは、下記に示したビットコインやイーサリアムなど。なかでもビットコインは8割以上のシェアを誇っている。ここから先は、ビットコインの投資価値について考えよう。

日本で流通している仮想通貨の種類とシェア PR TIMES

ビットコインの価格が急上昇、これってずっと続くの?

ビットコインをはじめとする仮想通貨が、決済手段として認知され始めた。

ビックカメラの一部の店舗でビットコインでの売買が可能になったことをはじめ、あるいは、三菱UFJ銀行が試験的に取り入れているなどの情報も伝えられている。さらにこのビットコインが、にわかに投資の対象として注目を集めている。むしろ今のビットコインブームは、投資商品としての側面が強い。全国各地でビットコイン投資のセミナーが開かれ、どこも満員というから驚きだ。

なぜ、このビットコインが投資の対象になっているのか

仮想通貨の大きなメリットとして、海外送金の手数料の安さなどがまず指摘されてきて、一部で積極的に購入され始めたのだが、ビットコインが投資商品として高く評価されているのは、発行枚数の上限が決まっていることによる希少性だ。
ビットコインはこれから先、最大で2100万枚までと発行枚数が決まっている。この通貨が売買されはじめたころは、だれもそんな先のことに関心はなかったのだが、少しずつ買い手が増えるにつれ、枚数制限に対する関心が高まり、その希少性に注目が集まり始めた。つまり、枚数の限界に近づけば近づくほど値が上がるのではないかという市場の心理が働き、今のうちに買っておこうという需要が、最近になって急速に広がり、それがまた高値を呼んで、ものすごい高騰につながっているといわれる。

ビットコインの価格の推移 ビットフライヤーチャート

図をみてもらうとわかるが、昨年10月頃には、まだ1BTC(ビットコイン)が、まだ7万~8万円だったのが、その後一本調子で上がり始め、今年の2月には10万円超え、さらには20万円、30万円と、とんでもない値上がりとなっている。7月現在では、25万円前後いったとところだ。

こうした値動きは、投資価値としては、一般的な投資信託やあるいは株の売買の常識を超えた値動きとなっている。セミナーにどっと人が集まるのもわかるというものだ。

ビットコインの購入の方法だが、これはとても簡単。ビットコイン取引所というのが、ネット上にたくさんあり、その中のひとつに登録するだけ。ただし、この取引所は無数にあるため、詐欺まがいの取引所にはくれぐれも注意が必要であることはもちろん、日本では、ビットフライヤー、コインチェックなどが、老舗として信用されているようだ。取引所に登録し、お金を払ってビットコインを購入することになる。その時点の相場が購入金額ということになる。

悪夢の、マウントゴックス破たん事件

3年ほど前、まだ世間の認知の低かったビットコインがにわかに注目を集める事件が起こった。

当時世界一の取引量を誇っていたマウントゴックス取引所が、65万ビットコインと28億円を消失したとして破たんした。代表のマルク・カルプレスは、当初、ハッキングを受けて顧客資産が流出したと語っていたが、実際にはハッキングによる流出はごく一部で、大部分はカルプレス自身による横領だったことがわかった。その後、カルプレスは逮捕された。

この事件によって、一時期ビットコインは、なんだか得体の知れない怖いもの、投資家からお金を奪う詐欺まがいのもの、といううわさが急速に広がった。しかしこれは、ビットコインの数ある取引所のひとつで詐欺行為が行われたことで破たんしたのであり、ビットコインそのものが投資者をだます詐欺通貨というわけではないということは、まもなく理解された。

しかしこの事件は、ビットコインの危うさを露呈したのも確かだ。つまり、取引所のシステム管理があまいと、ハッキングによってビットコインやお金が大量に流出する可能性があること、また、一部の不当な経営者によって詐欺や横領の余地を残す通貨だったということだ。こうした点に、まだまだこの通貨の歴史が浅く、世の中にこなれていないという弱点が露呈してしまうということになる。

ビットコインがかかえる投資のリスク

マウントコックス事件は、このビットコインの弱点をさらした形になったが、それを含め、ビットコインが抱えているリスクをここにまとめてみた。ぜひ、参考にしてほしい。

【リスク1】価格の乱高下が非常に激しい

ビットコインが株式などと大きく違う点は、価格の変動に業績などの実績がまったく加味されないことだ。業績が上がったから株価が値上がりするということがない。単純にビットコインに対する需要と供給のバランスで価格が上下する。今のように、みんなが買い始めるとどんどん価格は上がっていくが、たとえば海外投資家などがなにかのきっかけで売りに転じ始めると、今度は底なしに価格が下がる可能性もある。思わく先行の投資なのだ。株のようにストップ高やストップ安などの制度もない。
ちなみに、図は、7月23日の15時から24日の15時までの24時間のビットコインの価格の変動幅だ。

たった24時間のあいだに、29万7000円から30万9000円まで、1万2000円ほども価格が動いている。このように激しい動きをするのが今のビットコインだ。

ビットコインの24時間のうちの価格の変動 国内ビットコイン市況

【リスク2】取引所がまだ未成熟で、破たんのリスクを抱えている

まだ新しい通貨なので、新規の取引所がどんどん誕生している。株や為替などのように国が一定基準を満たした会社以外は取引所を開設できないといった規制も、ビットコインにはないので、経営基盤の脆弱な取引所も多く、初めから投資家からお金をだまし取ることを目的にした悪質な取引所もあるので、十分気をつけなければならない。

【リスク3】法制や税制がまだ未整備

これも新しい通貨ゆえのリスクなのだが、法制や税制がまた追いついていない。今年の4月に改正資金決済法が施行され、「仮想通貨」を通貨と認める法律はできたが、一連の高騰を受けての取引所に関する法整備はまだまだ追いつかず、また税制の面からも、ビットコインで得た収入に対する課税に関して問題でまだ手探りという状態が続いており、どんな税負担がこれから課せられるのかも不透明だ。

── このように、ビットコインに代表される仮想通貨は、投資の対象としてとても魅力的な反面、まだ歴史が浅いので、だれも予測していないようなリスクも抱えている。ハイリターンであるがゆえにハイリスクであることも十分認識して、あくまでも余裕資金で投資することが前提だ。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、この春退職。今後はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロデュースを手掛ける予定。

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