株を始めたいけど「難しい」「どの銘柄を買えばよいのか分からない」という理由で株式投資を始められない初心者がたくさんいらっしゃいます。また、株式に投資して大損することを恐れる初心者がいるのが現状です。
ところが、株式投資の知識が少ない方におすすめできる銘柄はある程度決まっていることをご存知でしょうか。その選び方はアメリカでは数十年前から知られており、今でも活用されている方が多いのです。
そこでこの記事では、株初心者でも投資しやすい銘柄を推奨する「バリュー投資」の考え方を解説します。そして銘柄の選択基準と、それに基づいて算出された日本株のおすすめ銘柄を紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
バリュー投資とは「投資先を割安な銘柄に絞る投資手法」
バリュー投資とは日本語で「割安株投資」と訳されます。したがってバリュー投資とは割安な株価で取引されている銘柄に投資することで、適正な株価との差額で利益を得ようとする投資手法です。
そして株式の「割安度」を計測する際、企業が発表している決算書類を分析します。その上で算出された企業の本質的な「企業価値」より取引されている株価が安ければ、投資を行うのです。
ベンジャミン・グレアムとはウォーレン・バフェットを育てた「バリュー投資の父」
バリュー投資はアメリカでは60年以上前から推奨されている投資法です。初めて提言したのはニューヨークにあるコロンビア大学ビジネススクールにて投資の講義を行っていたベンジャミン・グレアム氏です。氏は1929年の世界恐慌による株価の大暴落を経験し、それを機に企業の価値に基づいた株式投資を行うことを研究し、推奨し始めました。
さらに1949年、グレアムは投資家や株初心者にバリュー投資の考えを広めるために「賢明なる投資家(The Intelligent Investor)」という書籍を出版しました。こうした活動をした結果、バリュー投資で成功を収める投資家が数多く出てきたのです。世界でも指折りの大富豪と呼ばれているウォーレン・バフェットもグレアムの指導を直接受けた一人として知られています。
グレアムが株初心者に推奨するのは「防衛的銘柄」への投資
「賢明なる投資家」では、株式投資の知識が少ない方や株取引をする時間が限られている方がどのようにして銘柄を選ぶべきかが書かれています。グレアムは株式投資を専業で行えない投資家は「防衛的投資家」と定義し、最低限の知識と時間で十分な成果を上げるための銘柄選択基準を定めたのです。
銘柄選択のキーワードは「健全な財務」と「安定成長の大手企業」
では、株初心者はどのような基準で銘柄を選ぶべきなのでしょうか。本書を読み解くと以下のように書かれています。
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財務内容の良い有名な大企業
一定の規模がある業界で主たる地位を占めていること
総資産のうち自己資本が過半数であること(公益企業は30%以上)
適切な流動資産(製造業:流動比率200%以上、長期負債が純流動資産以下)
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長期にわたる継続的な配当金支払いの実績
過去20年間無配当の年が無い
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収益の成長性・安定性
過去10年間赤字決算が無い
過去10年間のうち、直近3年間の平均収益が最初の3年間の平均収益より33%以上伸びていること。
これらの条件を満たす企業は安定した収益と株主還元の実績が十分にあるといえます。したがって将来性が全くない業界でなければ、安心して投資できる銘柄だといえるのです。
投資する株価は企業価値を大きく上回らない水準
さらに本書では投資をすべき株価水準について言及しています。株初心者が最も不安になる事は割高な水準で株式を買ってしまうことです。そこで本書では以下のような基準を推奨しています。
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株価収益率(PER)15倍以下で株価純資産倍率(PBR)1.
5倍以下 -
もしくはPER×PBR=22.5以下になる
これら基準に従って株式投資を行えば、企業価値に基づいた適切な株価で投資をしているのだと本書では提言しています。また、この基準は現代のアメリカでも「グレアム指数」として株価の割安さを示す指標として用いられているのです。
バリュー投資に基づいた銘柄をスクリーニング
では、バリュー投資に基づいた銘柄選択で今投資できる日本株はあるのでしょうか。そこで今回は楽天証券のスクリーナー機能を利用して防衛的投資家向けの銘柄を抽出してみました。(2019年10月24日時点の株価にて抽出)
今回用いたスクリーニング基準は以下の通りです。
- PBR1.5倍以下
- 自己資本比率50%以上
- 流動比率200%以上
- 大型株・中型株
この条件で抽出された銘柄から、上記条件では検証できていない「配当金の実績」と「過去の利益(成長)」について精査しました。その上でバリュー投資の観点から初心者向けの投資対象を以下に紹介します。
株初心者におすすめ銘柄【1944】きんでん:基準に見合った利益成長
きんでんは1944年、電気設備を中心とした総合設備工事会社の国内大手です。関西電力のグループ会社として近畿地方を地盤に全国・海外へ事業展開しています。
きんでんの当期純利益推移(きんでんホームページより引用)
きんでんの配当金と配当性向の推移(きんでんホームページより引用)
過去の利益(成長)
2010年では100~150億円程度だった純利益が250億を超える水準です。また赤字決算もありません。したがって十分に安定した業績と成長を達成している企業です。
配当金の実績
過去20年間、全期にわたって配当実績があります。
※過去の会社四季報を元に調査しました
さらに直近10年間は配当性向を維持しつつ、倍額まで増配しています。したがって株主還元も十分に行える企業です。
株価と指標(2019年10月25日終値)
株価:1,624円
PER:11.55倍
PBR:0.78倍
株価の変動は企業の業績以外にも起こりうるため、きんでんの株価が上昇するという保証はできません。しかし十分な利益と株主還元の実績がある企業にしては割安な株価です。したがって比較的安心して投資できる銘柄として株初心者におすすめできます。
おわりに
今回は株式投資初心者におすすめできる「バリュー投資」の考え方に基づいた銘柄選択を解説しましたがいかがでしたでしょうか。この調査の情報源は株式のスクリーニング機能と企業のホームページから得られた情報がほとんどです。したがって無料でかつ短時間で健全な投資先を選ぶことができます。
多くの方がバリュー投資の考え方を知っていただき、株式による資産形成に役立ててもらえることを願っております。
※この記事は読まれた方が株式投資で利益を得ることを保証するものではありません。株式投資は自己責任にてお願いします。
ライター:福井廉太
理学療法士とMBAの資格を活かして「ポートフォリオ・ワーカー」をしています。
Twitterアカウント:@NOLIMIT_MBA
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