社会保障制度には所得制限つきのものが数多く存在する。所得制限は確定申告・年末調整など税務情報に基づくものが多い。

所得制限は全国一律のもの、地域によって異なるものもあり、また税額に基づくもの、所得額に基づくもの様々であり、所得の算定方法も制度によってバラバラである。

ここでは比較的広範囲で利用できる社会保障制度であり、かつ厚生労働省が定めた特徴的な所得算定方法に基づく児童手当支給基準と国民年金保険料免除基準を紹介したい。

なお新型コロナ緊急経済対策に伴う児童手当の臨時特別給付も、所得制限に基づいて行われることになる。

扶養親族等の数によって変わる所得制限

まず児童手当・国民年金免除いずれにおいても、扶養家族の数が多いほど有利になる。いずれも一定限度額に対し、原則として38万円×扶養親族等の数が加算される。

勤務先に「扶養控除等申告書」で記載した扶養親族や、確定申告書に配偶者控除・扶養控除の対象として記載した親族が該当する。16歳未満の扶養親族も該当する。

児童手当と国民年金免除の違い

「原則として38万円×扶養親族等の数が加算」と説明したが、例外的取り扱いが児童手当と国民年金免除で異なる。

児童手当では、扶養親族等が70歳以上の場合は、1人あたり44万円が加算される。一方国民年金免除では、例外となる範囲がもう少し幅広く加算額も大きい。

国民年金の一部免除の場合、扶養親族等が70歳以上の場合1人あたり48万円が加算と大きいほか、16歳以上23歳未満も1人あたり63万円と大きい。所得税の所得控除額にあわせている(ただし所得税では、16~18歳の扶養控除額が38万円)。

国民年金の全額免除では、年齢にかかわらず1人あたり35万円を加算する。

例えば扶養親族の状況が年収150万円の配偶者1人、子2人(16歳未満1人・16歳1人)、70歳以上の老親1人の場合を考える(この事例は今後の事例紹介でも利用)。配偶者は配偶者特別控除の対象のため、扶養親族等には該当しない。

児童手当の所得制限限度額には、38万円×2人+44万円=120万円が加算される。

国民年金一部免除においては、地方税法上の配偶者特別控除額33万円+16歳未満38万円+16歳63万円+70歳以上48万円=182万円加算される。

児童手当の所得制限

児童手当は夫婦の内、前年の所得合計額が高いほうで所得制限を判定する。

所得の合計額から控除額を差し引いた金額が、所得制限限度額(622万円+扶養親族等の数に応じた加算額)未満の場合に、本則の給付(1人あたり月1万円または1.5万円、児童の年齢により異なる)がもらえる。

上記扶養親族の事例で言えば、120万円が加算されるため、所得制限限度額は742万円となる。

なお、所得の合計額と控除額の詳細は後述する。所得制限限度額以上の場合でも、1人あたり月額5,000円の特例給付がもらえる。

国民年金全額免除の所得制限

前年の所得合計額(本人および世帯主・配偶者)が22万円+35万円×(扶養親族等の数+1) 以下の場合に、翌年7月からの1年間、国民年金保険料は全額免除される。

上記扶養親族の事例で言えば、配偶者は扶養親族等に該当せず、扶養親族等の数は3人のため162万円が限度額となる。

国民年金一部免除の所得制限

国民年金一部免除は、免除割合が4分の3・半額・4分の1と3段階あり、割合によって所得制限も異なる。

4分の3免除は、所得の合計額(本人および世帯主・配偶者)が78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等以下の場合に受けられる。扶養親族等控除額が扶養親族の数によって決まる加算額であり、上記の事例で言えば182万円である。

社会保険料控除額等以下に関しては、児童手当の所得制限における控除額と似た概念であるが、詳細は後述する。

なお78万円の部分は、半額免除では118万円となり、4分の1免除では158万円と増える。

所得の合計方法

所得制限で勘案される所得の合計額は、全ての所得が対象となるわけではないが、児童手当・国民年金免除ともに似たような基準が適用される。ただし、両者で細かい違いは見られる。

確定申告書第三表に記載される分離課税の所得がない場合、確定申告書第一表「所得金額」の合計欄(住民税で申告不要とした配当は除外される)が総所得金額であり、所得制限で勘案される所得の合計額である。

分離課税の所得がある場合、主なものとしては不動産の譲渡所得(短期譲渡所得・長期譲渡所得いずれも)、先物取引等に係る雑所得等、山林所得は所得の合計額に算入される。

一方で、株式等の譲渡所得(一般・上場いずれも)、上場株式等に係る配当所得等は対象外であり、退職所得も勤務先が源泉徴収義務者であれば対象外である。

児童手当と国民年金免除の違い

児童手当と国民年金免除で扱いが異なるのは、不動産の譲渡所得で特例(マイホームを売却した場合の最大3000万円控除など)を受けている場合である。

例えば、事業所得・給与所得などを合算した総所得金額が290万円、長期譲渡所得が特別控除100万円を差し引いた結果0円のケースを考える。

児童手当の場合は、長期譲渡所得は特別控除を差し引いた後の0円とするため、所得の合計額は290万円である。しかし国民年金免除においては、特別控除を差し引く前の100万円が長期譲渡所得金額となり、所得の合計額は390万円である。

もともと税制上の合計所得金額や総所得金額等は、特別控除は差し引かない。しかし東日本大震災後に特例を使って不動産を譲渡したケースにおいて、所得制限で不利になるのは被災者に対する配慮に欠けると批判された。

この経緯があり、児童手当の所得制限では特別控除を差し引くようになった。ただ制度間のばらつきもあり、国民年金免除においてこの取り扱いは導入されなかった。

所得から差し引かれる金額・社会保険料控除額等

児童手当の所得から差し引かれる金額、国民年金一部免除の「社会保険料控除額等」の両者に共通する所得控除は下記のとおりである。全ての控除が対象になるわけではないので注意したい。

・雑損控除の全額
・医療費控除の全額
・小規模企業共済等掛金控除の全額
・寡婦・寡夫控除27万円(特別の寡婦は35万円)
・障害者控除27万円(特別障害者は40万円)
・勤労学生控除27万円

なお、国民年金全額免除では考慮されない。

児童手当と国民年金一部免除の違い

年末調整や確定申告で申告する寡婦・寡夫は、一旦結婚していないと該当しないが、児童手当においては未婚ひとり親もみなし寡婦・寡夫として、27万円もしくは35万円が控除できる。

国民年金の一部免除においては、このような優遇はない。そのかわり、社会保険料控除額を控除額に含めることができる。また児童手当の所得制限では、だれでも8万円を控除できる。

例えば社会保険料控除50万円、生命保険料控除10万円以外の所得控除が無い場合、児童手当所得制限の控除額は8万円だけだが、国民年金の一部免除における社会保険料控除額等は50万円である。

住民税申告・確定申告・年末調整が影響する

児童手当・国民年金免除の所得制限はいずれも、マイナンバーに記録される住民税の所得情報に基づく。

この所得情報は、本来は市区町村に住民税の申告を行った情報であるが、年末調整や確定申告の情報も市区町村に伝送される。

上記の事例においては結局、児童手当の所得制限において所得合計額290万円-控除額8万円<
所得制限限度額742万円のため、満額支給の対象となり新型コロナの臨時給付ももらえる。

国民年金の免除においては、所得合計額390万円>全額免除の所得制限限度額162万円のため、全額免除の対象にはならない。一方158万円+扶養親族等控除額182万円+社会保険料控除額等50万円=390万円となり、4分の1免除の対象にはなる。

扶養控除その他の人的控除、医療費控除、iDeCoの掛金は児童手当・国民年金免除の所得制限にも影響するため、控除漏れがないようにしたい。

また近年、株式配当に関する住民税申告不要制度が知られてきている。株式に関しては所得があったとしても所得制限に影響することは少ないが、上場株配当を総合課税で確定申告した場合は、所得制限に影響するため、住民税で申告不要としたほうがよい。

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