UAE(アラブ首長国連邦)のドバイと言えば、世界的なタックスヘイブンです。
タックスヘイブン(tax haven)とは、法人税や所得税などの課税が、著しく低い国や地域のことを指しますが、中でもこのドバイは法人税が0%ということもあり、数ある世界のタックスヘイブンの中でも代表的な存在であると言えるでしょう。
加えて、ドバイでは1985年より100%外資の企業を設立できる“フリーゾーン”を設けています。外国の企業を積極的に誘致することで、外貨の獲得を目指したものですが、結果として、ドバイには世界100カ国以上から6,000を超える企業が進出することとなりました。
ドバイのフリーゾーンは外国企業を誘致するために、様々な優遇策を取っていますが、タックスヘイブン(法人税0%)はその中の一つだとも捉えることができます。
中東の金融セクターとなったドバイ
元々原油産業を中心に栄えていたドバイ(UAEですが)、石油依存の経済体制を脱却することを目的とし、製造業や物流事業を中心に外貨を獲得しようとこのフリーゾーンを設けました。
外国企業誘致の一環としての、タックスヘイブンですが、製造業や物流だけでなく、一部の事業(外国の銀行、石油・ガス・石油化学会社)を除いた全ての事業について非課税となっています。
また、ローカル・スポンサー(サービス代理人)が不要であったり、資本・利益の本国送金が自由であること、外国人労働者の雇用制限が無いなど、様々な優遇措置が取られています。
これらの優遇措置に目をつけたのが、金融業界です。非課税という圧倒的な収益性の向上と、様々な優遇措置に着目し、世界の証券会社やヘッジファンドはこぞってドバイに拠点を移しました。
また、非課税(0%)であるという点は、世界に存在するタックスヘイブンの中でも、最も注目を集めた点でしょう。香港やシンガポールに代表される、他のタックスヘイブンでは、課税割合が小さいとはいえ、数%~20%前後の課税をするところも少なくありません。そんな中、法人税が“0%”であるドバイにはことさら世界中の企業が集まりました。
これを受けてドバイ(UAE)は、自らを国際的な金融センターとするべく、積極的な姿勢を見せている。独特のルールがあるイスラム圏の金融と世界を繋ぐハブを担うだけでなく、今世界的な注目を集めているフィンテック(Fintech)にも積極的な取り組みを見せています。
タックスヘイブンがヘッジファンドにもたらす効果
こぞってタックスヘイブンに進出するヘッジファンドですが、なぜそこまで「非課税」であることが重要なのか、その効果を検証してみましょう。
ドバイの法人税を0%、日本の法人税を30%として比較すると、同じ“利益”に対し、日本では70%しか“収益”を受け取ることができません。
つまり、ドバイに拠点を移すだけで、そのファンドは収益性を1.43倍、40%以上も向上させることができるということです。
リターンが1.4倍近く違うというのは、中長期で見ると非常に大きな差につながります。
会社の事業“収益”と、投資家へのリターンが連動する(会社の収益が2倍になれば、投資家へのリターンも2倍。半分になれば、同じく半分になる)ファンドの場合、ドバイで年20%×10年間運用すると約6.2倍になるのに対し、日本で年14%(20%×0.7)/10年運用しても約3.7倍と、およそ1.7倍の差がつきます。
これほどまでに、法人税の影響は大きいのです。
ヘッジファンドを評価する(選ぶ)ときには、ファンドの「パフォーマンス」や「手数料」といった、そのファンドが設定する数値にばかり目が行きがちです。
しかし、そのファンドが選択している地域の課税についてもしっかりと目を向けるべきではないでしょうか。