ついこの間まで、「日本株は割安だ。日経平均株価はとりあえず2万3000円をめざす。3万円時代に」と日本株相場に対して強気の見方が多くありました。根拠は、昨年11月のトランプショックによる1ドル=101円台から、その後、トランプラリーで米国株式高と1ドル=118円まで急速にドル高・円安が進行しムードが大きく好転したからです。それが今度は、1ドル=112円台までドル安・円高へと水準が変わるとムードが重くなり、急に弱気な見方が広がってきました。

投資で大事なこととは?

投資で大事なことは、現在の水準を見て投資を検討するのではなく、将来の相場展開を想定して、「そのとき、どうするか」をあらかじめ決めて、準備しておくことです。

たとえば、私の場合は、2017年ドル円相場は2006年のドル円為替の動きをイメージしています。2006年1月にライブドア本社に強制捜査が入り、いわゆる「ライブドアショック」が起こりましたが、多くの投資家は株高・円安は続くものと確信して始まった年です。前年2005年のドル円相場は、年初1ドル=100円台から年末120円目前までドル高・円安が進行し、多くの投資家は「100円割れのドルを待っていた。105円の時にドルを買っておけば良かった」と後悔していました。まさに、昨年2016年のドル円相場と同じ展開の年でした。

2006年ドル円相場はどうだったか。

2006年ドル円相場は、前年にドルが買えていなかった投資家のドル買い需要に支えられてジリジリとドル高・円安に向かうのですが、1ドル=120円程度までドル高が進むとドルの高値が警戒され、突然、大きく5円程度円高に振れては、また120円に戻るという神経質な展開を繰り返しました。そのため、特にFX取引のように短期で値ざやを稼ごうとする方にとっては、ドル高・円安基調を当てていながらも、「少しの利益を積み重ねては、突然、大きな損を抱える」といった、苦い経験をされた方が多かったと思います。その2006年ドル円相場に近い展開を2017年に想定している私としては、昨年からトランプラリーに対して、ドル高・円安を前提にした日本株相場の楽観ムードが長く続くとは思われず、この浮かれムードに「踊らにゃソンソン」と短期で臨むかどうかを割り切って投資する場面だと思っていました。

したがって、1ドル=120円を超えるドル高・円安になったらの展開や1ドル=110円に向かうドル安・円高になったらの展開で、どんな投資行動を取るべきかを決めています。今年は大きく儲けることよりも大きく損をしないことのほうが大事です。大きな損をしなければ、まずまずのところで満足して利益確定し新規投資の現金さえ確保しておけば、相場の急変は常にチャンスとして前向きでいられます。投資に確信がないときは慎重に、投資対象の動きが想定できないものには手を出さない。多くの専門家は、目先の株価や為替の動向を当てることが仕事で、あなたの投資のことを思ってアドバイスしてくれているわけではありません。専門家の意見には責任がないのです。

 まとめ

投資は自己責任。自己責任である以上、投資判断は人に委ねてはいけません。自分で理解できる投資の範囲を少しずつ広げていきましょう。今年は、世界中あちこちに変化・急変の種があります。投資の世界では価値が動くことはリスクですが、チャンスでもあります。

円高や株安で多くの人が大きく損をして後悔しているときに、「安く投資できる待ちに待ったチャンスが来た」と前向きに投資に取り組むことができる人は準備をしていた人です。その場、その場の対応で人に意見を求める人は投資に振り回されてしまいます。

トランプラリーは終わったで、「今後どうするか」と人の意見に振り回されるだけではなく、「こうなったら自分はどうするか」とハッピーな場面、アンハッピーな場面を想定して準備するときだと思います。

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1961年生 埼玉県在住。株式会社前川FP事務所アドバンス 代表取締役 83年に大和証券株入社。2000年3月に退職後、2002年から前川FP事務所アドバンスを開業独立。15年間、投資の悩みを聞き続け、その人が大らかに投資できるやり方を提案する。「債券投資は知っていて損のないもの」を持論にする債券投資ラブなアドバイザー。