Fintech(フィンテック)という言葉をご存知でしょうか。
これはFinance(金融)とTechnology(技術)から作られた造語であり、今世界で最も注目を集めているキーワードの一つです。
このFintechには様々なものがあり、代表的なところではBitcoinなどが挙げられるでしょう。
Bitcoinとは、データとして存在する仮想通貨の一つであり、近年規模が拡大し、また価格を大きく高騰させたことでも話題となりました。「Bitcoin長者」などという言葉も耳にするようになり、一時期のFXブームに次いで、Bitcoin投資ブームが来ているようにも感じます。
Fintechには、こういった仮想通貨だけでなく、決済のサービスや会計ツールなど様々なものが存在し、そのそれぞれがしのぎを削りながら躍進を続けています。
こういった背景の中で、世界中に存在する数多くのヘッジファンドがFintech事業やそれに関連する企業への投資を進めています。
KPMG(世界四大会計事務所Big4の一角)の調査によると、既に世界のヘッジファンドの90%以上がFintechに関係する何かしらの事業・企業に投資を進めています。
確かに、Fincech業界は今後の躍進が期待され、世界の経済やビジネスそのものに大きな影響を与えるでしょう。そこに大きな投資対象としての魅力があることも確かです。
しかし、ここではあえて“投資対象”としてのFintechではなく、“投資方法”としてのFintechに注目してみたいと思います。
投資対象としてのFintechに注目が集まっていることを説明してきましたが、投資(運用)そのものにも、Fintechが関わってきています。
その中でも代表的なものの一つが「 ロボアドバイザー 」です。
ロボアドバイザーとは、その名の通りロボット(コンピューター)が投資のアドバイスをしてくれるサービスです。
従来の資産運用サービス(投資判断やアドバイス)は、人間によって行われてきましたが、それがシステムに置き換わりつつあります。
この背景としては、ビッグデータの活用や人工知能(AI)の実用化などが挙げられますが、既にJPモルガンなど、大手の金融機関でも導入が進んでおり、サービスが一般に浸透しつつあります。
「まだまだ価値があるかはわからない」「過度なIT化はサイバー攻撃などのリスクがある」といった保守的な意見がある一方で、積極導入していないまでも「今までにない視点の獲得に役立つ」として部分的に導入しているケースは少なくなく、今後ますますサービスが拡大する見込みになっています。
既に日本でも、ユーザーの好みの戦略(リスクをとるのか、堅実にいくのかなど)や資金・投資機関などに応じて、推奨ポートフォリオ(オススメの投資信託銘柄の組み合わせ)を提案してくれるサービスなどが始まっており、私たちにとっても身近な存在になりつつあります。
ロボアドバイザーのメリットは、より広く・細かい情報から分析・評価をしてくれる点や、感情的にならずに意思決定を行える点、機械学習によりその精度が向上していく点など、様々挙げられます。
また、Fintechサービスは、インターネット上で受けられるといった利便性や、コスト(費用)があまりかからないといった経済性もあり、投資家にとってはいいことずくめです。
では、これまで必死に運用してきた、優秀なファンドマネージャーは、その立場や仕事をAIに奪われてしまうのでしょうか。
これまで、ヘッジファンドのファンドマネージャーといえば、金融のみならず経営や経済、ときに政治や科学技術にまで精通し、あらゆる角度から企業を評価・投資判断を行う、運用のプロフェッショナルでした。
確かに、分析やデータ収集といった点において、コンピューターは人間よりも速く・正確です。
今までは考慮しきれないとされていた様々な要素(人の感情や市場の特性など)も、ビッグデータの登場によって取り扱えるようになるかもしれません。
ですが、資産運用(投資)とは、「銘柄の選定」が勝負の全てではありません。
プロの投資家は、株を売り買いするだけではないのです。
代表的なものに、アクティビスト活動というものがあります。これは、株主として、ヘッジファンドのファンドマネージャーなどが、企業の経営陣に働きかけ、経営の改善や投資家の利益向上に努めて行う活動のことをさします。
この中で行われる活動には、画一的でデジタルなものだけでなく、人と人との交渉や折衝といった、アナログなものも多分に存在します。
どんな企業も、経営するのは“人”であり、やはりそこには人間が関与して働きかけることが重要になってくるのです。
ここで紹介したのは一例にすぎませんが、他にもファンドマネージャーが“人”として行なっている活動には様々なものがあります。
今後Fintechはますます普及し、AIを活用するヘッジファンドも増えていくことでしょう。しかし、全てがAIに置き換わる時代はそう簡単に来るものではないと考えられます。
最先端の技術に注目することは重要ですが、決して安易にならずに、ヘッジファンドの活動や存在意義について、改めて見直す必要があるでしょう。