私はファイナンシャルプランナー資格を持っていると同時に、現在、大手保険会社に勤務している。その為、多くの方々から保険に関しての相談受ける。今回は、その中でも最も質問が多い生命保険(特にがん保険を含める三大疾病保険)についての気を付けてほしいポイントを記したいと思う。
三大疾病保険の良い保険、悪い保険とは
皆さんは、生命保険の加入を検討する際に、気をつけている、拘っているポイントはあるだろうか?保険金額、保険期間、保険料、保障内容、特約、無料の付帯サービスなどなど…人それぞれさまざまであると思う。また、独身なのか、結婚しているのか、結婚して子供もいるのかによってもそれぞれニーズは異なるのは当然である。
その中でも、良い保険、悪い保険があるのは事実である。考えは人それぞれであるが、私が思う良い保険、悪い保険の概念は、「良い保険=いざというときに保険金が出る保険、悪い保険=いざというときに保険金が出ない保険」である。この概念の差が、もっとも出やすいのが、がん保険を含めた「三大疾病保険」である。
皆さんは、「三大疾病保険」と聞いて3つの疾病が思い浮かびますか?
答えは➀がん、②脳卒中、③急性心筋梗塞の3つである。日本人がもっともなりやすい疾病であるとともに、最近では有名芸能人なども、この疾病にかかり亡くなっているニュースも多く報道されているため、もっとも恐れられている疾病だ。同時に、保険に加入するニーズの高い疾病でもある。
三大疾病の死亡率は約52%
厚生労働省の『平成27年人口動態統計の年間推計』によると、平成27年の死亡数130万2,000人のうち、①悪性新生物(がん)が37万人、②心疾患が19万9,000人、③肺炎が12万3,000人、④脳血管疾患が11万3,000人となっており、三大疾病が死亡原因の52.4%を占めている。
また「肺炎」による死因も、三大疾病に関連していることが多く、実際の発生率はデータの数値よりも高い可能性がある。
この三大疾病にかかったときに備えるために加入するのが『三大疾病保険』である。その三大疾病保険で保険会社によって、良い保険、悪い保険の格差があったらどう感じるだろうか?保険という商品は、保険金が支払われないにこしたことはない。ただ、いざというときに支払われなかったら、なんの意味もない。
しかし、この三大疾病保険においては、いざというときに保険金が支払われなかった、支払われるのに相当の時間がかかったというケースが多々ある。今、この記事を読んだ方には、私の概念の中の良い保険、つまりいざというときに保険金が支払われる生命保険に加入してほしい。その生命保険選びのポイントを覚えてもらい、今後の生命保険加入、保障見直しに役立ててほしい。
「三大疾病保険」の支払い要件比較
では、下記で実際にある保険会社を例にあげて、「三大疾病保険」の“支払い要件”を比較していきたいと思う。
※支払い要件の言葉は分かりやすくアレンジしているもので表現。A社、B社ともに①~③に該当したときに「三大疾病保険」を支払うこととしている。
【A社】
➀ がん・・・所定のがんと診断されたときに保険金を支払います。
② 脳卒中・・・所定の脳卒中と診断されてから、その状態が60日間継続した場合に保険金を支払います。
③ 急性心筋梗塞・・・所定の急性心筋梗塞と診断されてから、その状態が60日間継続した場合に保険金を支払います。
【B社】
➀ がん・・・所定のがんと診断されたときに保険金を支払います。
② 脳卒中・・・所定の脳卒中と診断されてから、その状態が60日間継続した場合、または、脳卒中の治療のための手術をした場合に保険金を支払います。
③ 急性心筋梗塞・・・所定の急性心筋梗塞と診断されてから、その状態が60日間継続した場合、または、急性心筋梗塞の治療のための手術をした場合に保険金を支払います。
診断後60日間は保険金が支払われない保険
上記のようになる。皆さんには違いが分かっただろうか?
「➀がん」については、A社、B社ともに変わらないことが分かる。ただ、「②脳卒中」と「③急性心筋梗塞」はどうだろうか?決定的な違いがある。B社は「脳卒中」、「急性心筋梗塞」と診断されてから、その状態が60日間継続した場合、または、急性心筋梗塞の治療のための手術をした場合に保険金を支払う、とあるのに対し、A社は、「脳卒中」、「急性心筋梗塞」と診断されてから、その状態が60日間継続した場合に保険金を支払う、のみとなっている。言い換えてみれば、A社の場合は、「脳卒中」、「急性心筋梗塞」と診断されてから60日間は、保険金が支払われないということである。
イメージしてほしい。もし、自分の家族が、「脳卒中」、「急性心筋梗塞」と診断された場合、診断されてすぐに医師に治療(手術等)をしてもらう選択をするだろう。そんなときに多額の費用がかかるはずだし、ここで保険金を治療費にあてたいはずである。そんなときにA社の場合、保険金が支払われない。60日後には支払われるかもしれないが、最悪のケースだと60日を待っている間に、お金がないために十分な治療を選択できずに死に至るケースもあり得る。これでは生命保険の意味がまったくないではないか。
しかしながら、このような状況は現実に多くある。むしろ、A社のような支払い要件の保険会社の方が少なく、ほとんどがB社と同じような支払い要件であるのが実態だ。私のように、毎日、保険のことを考えている人間であれば、生命保険の加入時に各社の違いを見極めて納得できる保険を選択することができるが、一般の方では、支払い要件にこんな格差があることに気づけない可能性の方が高いはずだ。あなたが、現在加入している生命保険、もしくは、今後加入を検討している生命保険の支払い要件はいかがだろうか?すぐに確認してほしい。
がん保険の見落としがちなポイント
これまでは「三大疾病保険」の「②脳卒中」、「③急性心筋梗塞」の支払い要件について記載してきた。一見「➀がん」については格差がないと思っただろう。しかし、ここにも見落としがちなポイントがあるので記したいと思う。
皆さまは、「上皮内新生物」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
がん保険について調べるとこの言葉をよく目にするはず。「上皮内新生物」とはつまり“がん”のことだ。がんは大きく分けると「悪性新生物」と「上皮内新生物」に分かれるが、言葉だけ聞くと何が違うのか疑問を持つ人も多いと思う。
簡単に言うと、「悪性新生物」は、転移の可能性があるもので一般的にがんと言われたときに思い浮かぶものだ。対して「上皮内新生物」は、治療を行えばほぼ完治し転移の可能性も低いものであり、「悪性新生物」に比べるとそれほど怖くないものでる。
そんな中、生命保険にも「悪性新生物」は保険金の支払い対象であるが、「上皮内新生物」は支払い対象でない場合もある。現在では、多くの保険会社で「上皮内新生物」も支払い対象になってきているが、保障内容には格差があるため、具体的にどう保障内容が異なるのか記したいと思う。
もう一度言うが、現在のがん保険は、ほとんどが「上皮内新生物」も保障している。ただし、「悪性新生物」と比較すると給付金額が異なる場合もある。なぜなら、「上皮内新生物」は適切な治療を行えば、ほぼ100%治ると考えられているからだ。例をあげると下記のようになる。
【例】
「悪性新生物」と診断されたら100万円
「上皮内新生物」と診断されたら10万円(悪性新生物の保障金額の10%)
上記のようになる。「上皮内新生物」に該当した場合、「悪性新生物」の10%~50%程度の給付金となっている場合が最も多い。しかし最近では、「上皮内新生物」でも「悪性新生物」と同額の給付金が支払われるがん保険も登場してきている。
注意してほしいのは、全ての保険会社が「上皮内新生物」を支払い対象にしているわけではないということ、そして、給付金額も異なるということだ。現在、がん保険に加入している方はもちろん、これから、がん保険の加入を考えている方も保障内容をしっかりチェックしてほしい。
まとめ
今回は生命保険(特にがん保険を含める三大疾病保険)についての気を付けてほしいポイントを記した。読んでみて、もしかしたら皆さまが今まで見落としていたポイントがあるかもしれない。現代は生命保険の加入方法も、対面方式(いわゆる保険のおばちゃん等の営業職員からの提案)、来店方式(いわゆる保険の窓口等)、インターネット方式(インターネットからの加入)等さまざまである。情報も手に入りやすい分、間違えた情報が多いのも事実である。ぜひ、今回の記事も参考にしてもらい、自分自身が納得できる生命保険に加入してほしいと心から願っている。
≪記事作成ライター:くま男≫
大手保険会社に勤務。自らも営業現場に立ち、生命保険と損害保険の販売を行っている。AFP資格も持っており金融商品(特に保険)においての知識もあり、顧客目線でのコンサルティング力に自信を持っている。
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