昨年あたりから金融投資のアルゴリズムにAI(人工知能)が実装され、さらにリターンを稼ぐようになりつつあるようです。
実際株や為替市場を見ていますと、これまでのアルゴリズムの「瞬時に動く」という取引手法からまたちょっと売買の仕方が変わりつつあることを感じます。
今回はこうしたAI投資全盛時代に果たして裁量トレードを行う個人投資家はどう生き残るべきなのかについて考えてみたいと思います。
AIトレードはファンドマネージャーの裁量取引のざっと5倍のリターン
Eurekahedgeというヘッジファンドのデータ分析会社が今年の年初に発表したヘッジファンドの平均リターンによりますと、
- AIを利用したものが8.59%
- 人による売買が1.75%
- CTAが4.49%
という結果になっているそうで、今年はまだ発表にはなっていませんが、AIを実装したアルゴリズムによる売買がもっとも高いリターンをたたき出しているという結果が報告されています。
昨年ベースだけでみてもAIは人の取引のほぼ5%程度の運用益を積み増しているわけですから、人間のファンドマネージャーはかなり肩身の狭い思いをしていることは容易に想像できる状況です。
今後もますますこうしたAI重視の傾向は強まるようで米系の大手銀行の証券部門ではAIをコントロールするマネージャーはいても、裁量取引をする人のファンドマネージャーは激減中で、この傾向は為替にも押し寄せてくるのは必至の状況です。
とくにヘッジファンドのマネージャーはなかなか成果を出せないのが実情で、相場はAIを実装したアルゴリズム同士の戦いになりつつあることがよくわかります。
短い足でもトレンドが出ればどんどんついていくAI
AI実装のアルゴリズムの一つの特徴としては、長い足から短い足までチェックしていてトレンドが出たとなると、どれだけ高値からでも平気で順張りでついていくことが非常に多くなっています。
昨年のドル円のトランプラリーのときの順張りもそうですが、トレンドさえ出ていれば裁量取引が敬遠するような高値からでも何のためらいもなく買い上げることになるため、ほとんどの個人投資家は参入できないまま高値を見ることになります。
そして、押し目を拾うあたりになるとすでにトレンドは終了しており、逆に相場が下抜けて串刺しにあうといった悲しい結末を迎えることも多くなります。
この局面は裁量売買の個人投資家がもっともAIに差をつけられる局面で、どのように同じような取引ができるようになるかが今後の大きな課題になりそうです。
※ドル円52日ボリンジャーバンド
チャートの型を見分けるのはAIのほうが断然得意~人はついて行けない
最近はパソコンでも10年前のオフコン以上のパフォーマンスを発揮するモデルが登場して個人投資家の情報処理能力はかなり高まっていると言えますが、米系の金融機関が利用するコンピュータはCPUとメモリの実装だけでも格段なボリュームで、そこにNvidiaで有名になったGPUのような仕組みで相場のチャート形状をあらゆる市場の過去のデータから一瞬にして拾ってくるわけですから、人が酒田五法などで有名なチャートの形を認識して売買してもはるかに及ばない状況が示現しはじめています。
このコラムでもすでにご紹介していますが、ユーロドルは10月末に典型的ともいえるかなりきれいな形のヘッドアンドショルダーを形成し、さらにそのネックラインを下抜けています。
これは日本でも有名な酒田五法ではいわゆる三尊天井の下抜けで、プロもアマチュアも多くの市場参加者が典型的な下落示唆モードに群がって売りで相場を責めましたが、結局1.155を下抜けることが出来ず、今度は一時的に猛烈なショートがたまったとここでスクイーズが入り、なんと1.185まで買い戻される動きを示現してしまいました。
この段階では下落についていったAIアルゴリズムが下がらないとみて反転買いを入れた可能性も高く、多くの市場参加者がショートの損切を余儀なくされています。
※ユーロドル三尊天井
またユーロ円でも最近ダブルトップをつけた市場では下抜けがはじまったところで多くの売りがでましたが、結局こちらも下げきれずダブルトップのはずがトリプルトップになり相場は持ち上がる形になってしまいました。
※ユーロ円トリプルトップ
それでも完全勝利は出来ないAI
こう書いてきますと人は投資の世界でもAIに全くかなわないような気分になりますが、実は囲碁や将棋のように投資の世界、とくに株、為替の世界ではAIはまだ圧勝できる状況にはなっていません。
彼らが得意とする過去の様々なケース、異なる市場から集めてきたようなチャートの形をいくらスマートに分析することが出来ても、確実にそれをトレースするように相場が動かないことを示唆してもので、ここにAIをひっくり返す盲点が潜んでいることがわかります。
人が動かしている生の相場はAIでは完全に掌握は出来ないことは明白です。これがある意味でディープラーニングの限界ともいえるものです。
例えば、ユーロでいいますと、ドイツの総選挙後メルケルは大勝はしなかったものの、連立政権を組んで政権を維持するとほとんどのメディアと市場関係者が思い込んでいたことから何のリスクも感じなかったわけですが、蓋を開いてみればまたリスクが顕在化してきている足元の状況はAIにもまったく予想できない事態で、ユーロドルとユーロ円の大きなショートカバーの先にはさらに下落が待っていたことになります。
つまり過去の事例では判断出来ない人が引き起こす、極めて人為的な相場の変化にはAIも非常に弱い立場にあることがよく理解できます。
はっきりとは判りませんがこのあたりに人が裁量取引で相場に突っ込み、AIに勝てる予知がありそうです。
AIに負けないためにとにかく注意すべきこと
AIがここまで相場に入り込んでくるとなりますと、ここから先はさらにレベルが高くなることが予想されます。
つまり、今後人がAIに簡単に勝てる状況は容易ではないことは明らかですが、少なくとも同じような動きで負けない領域というのはつくれそうな気配です。
まず物理的に高いとか安いといった印象をなるべく持たないことが重要になりそうです。
また思い込みでここからは上がるとか下がる、しかもどこまで上がりそうといった自己判断を頑なに信じてしまうと大失敗する可能性があることを相当肝に銘じることが必要です。
特にどこまで上がるかとか下がるかというのはFXの業界ではアナリストなどの分析では定番化していますが、正直なところこうした意識をもつことは殆どトレードには意味を持ちません。
むしろ、長い足から短い足まで見ていてトレンドが出たとなればストップを置いて果敢についていくという姿勢が重要です。
相場は上昇の途中から乗ることもできますが、できるだけトレンドの早い段階で乗って、適当な利益がとれたら早めに逃げるという姿勢を取り続けることが重要です。
結果から言うと全体収益の7割しかとれなかったといったことも多くなりますが、利食い千人力は間違いなく、欲張らないことが重要です。
またどう考えても理解できないような相場の動きの場合にはAIが人間ではわからない忖度(そんたく)をしている可能性があり、意外にそれがひっくり返されることもありますので、わからないときにはあえて相場についていかないということも重要です。
AIについてはまだ多くの個人投資家が意識していない状況にありますが、できれば早い段階でこうした動きを意識することが重要になりそうです。
今後AIがほかのAIの動きを忖度しはじめると、とんでもない暴落が起きることもありそうですから、早い段階から研究を始めることが大切といえるのではないでしょうか。
関連記事:
→海外投資/オフショアファンドの窓口【IFA無料紹介サービス】
→日本と世界の学資保険比較!元本保証140%の海外積立商品
→海外積立投資メイン3社の比較と評判
→ヘッジファンドは投資信託比較で手数料10倍!でもリターンは3倍!?