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英データ分析会社によるフェイスブック(FB)の個人情報不正流用問題に端を発し、いわゆる「GAFA」(Google、アマゾン、FB、アップルの4社を指す造語)の株価が大きく揺れ動いています。これまでその成長性に期待する投資家を多く惹きつけてきましたが、それ以外にも余り知られていないコアな投資家層がいました。「ESG投資家」です。

「ESG投資」とは?

運用の世界では最近、「ESG投資」という言葉を聞くことが非常に増えました。「ESG投資」とは、「環境(Environment)」「社会(Society)」「企業統治(Governance)」といった分野での企業の取り組みも企業分析に取り入れて投資をするという手法です。こうした財務面以外の、倫理面とも言える部分にも注目した投資は昔からありましたが、ここ数年は特に普及に弾みがついています。ESG投資は色々な形を取り得ますが、2006年に国連が提唱したPRI(国連責任投資原則・・・運用にあたってはESGに配慮をしよう!という原則)に署名した機関投資家の数とその合計運用資産で見ると、2017年4月時点で署名の数は1700以上、運用資産額は約70兆ドルとなっています。2006年の発足当初に署名した機関投資家はわずか63で、合計運用額も2兆ドル程度でした。

今のESG投資の考え方では、社会貢献はその絶対的な目的ではありません。ESGに配慮する会社こそ長く健全に収益を上げていくだろうという期待に基づき、中長期的な投資のリターンを高めていくことが主目的です。このため、最近世界的に増えているESG投資を謳うETF(上場株式信託)も、少しでも高い収益をあげることを狙っています。

ESG面での評価も高かったGAFA

ESG投資のやり方にも色々ありますが、最も古くからあり、今でも多く使われているのが、「ネガティブ・スクリーニング」と呼ばれる手法です。これは、ESGの観点からは評価の低い特定のビジネスに関わる企業を投資対象から外すというものです。武器やたばこなどのビジネスが典型ですが、最近では環境への関心が高まる中、石炭関連企業も相当敬遠されています。一方で、多くのESG上場投資信託が最近まで好んで保有していた銘柄の中にGAFAがあります。

これら大手ハイテク企業はその成長性だけでなく、ESG面でも比較的高い評価を受けてきました。再生可能エネルギーを使う方針を積極的に打ち出し、またその進捗などについても定期的に公表していたためです。FBがジョージア州に新たに建設する2020年完成予定のデータセンターは、100%再生可能エネルギーで運営されるといいます。また今年4月10日には、アップルが世界各地にある同社の施設が100%クリーンエネルギーで電力調達をしていると発表しました。

ESGファンドとGAFAの良い関係にも変化の兆し

ブルンバーグの調査によると、5年以上の運用実績があり、1億ドル以上の運用資産を持つ15のESG上場投資信託のうち、10のファンドが昨年、米国の包括的な株価指数であるラッセル3000指数を上回るパフォーマンスを見せたと言います。そしてそれら10のファンドが共通して保有する銘柄の中に、GAFAが多く見られたというのです。GAFAにとってESG上場投資信託は比較的安定的な株主であったといえ、またESG上場投資信託にとってはGAFAはその運用成績を大きく押し上げてくれるものでした。まさにWin-Winの関係であったと言えます。ただそれも、これからは大きく変わる可能性が出てきました。

FBは今回情報を盗まれた側ですが、事件をきっかけに同社の情報管理体制やプライバシー侵害の可能性についても批判が一気に高まっています。こうした状況下、オーストラリア最大のESG上場投資信託である「ベータシェアーズ・グローバル・サステナビリティ・リーダーズETF」が先月半ばにFBを投資対象から除外すると発表しました。また、ETFではありませんが、スウェーデンのノルデア銀行も、FBを同社のサステナブル投資のブラックリストに載せたことをツイッターで明らかにしています。FBのマーク・ザッカーバーグCEOは今月の10日、11日に議会証言を行いましたが、それでも同社のビジネスモデルについての議論は収まりそうにありません。FBのみならず、膨大な個人情報を取り扱うその他の大手ハイテク企業も含め、「ネガティブ・スクリーニング」するESG上場投資信託が増える可能性もありそうです。

ただこれは、ESGファンドにとっても頭の痛い問題かもしれません。これまでGAFAのお陰で市場平均を上回る成績を上げてこられた部分も大きく、今後はその説明責任と運用成績でより一層真価が問われそうです。

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北垣愛 国内外の金融機関で、グローバルマーケットに関わる仕事に長らく従事。証券アナリストとしてマーケットの動向を追う一方、ファイナンシャルプランニング1級技能士として身近なお金の話も発信中。