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経済協力開発機構(OECD)の共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換について

2018年から正式に発動される「税務における金融口座の自動的情報交換制度」とは、脱税・租税回避を防止するための国際的な取り組みである。この取り組みによって税務当局が海外の口座情報を迅速に入手することが可能になると言われている。海外の金融機関に口座を持っている富裕層や個人投資家に大きな影響を及ぼすことが考えられる。

自動的情報交換制度の導入にいたった背景とは?

近年、富裕層や個人投資家が海外の金融機関に資産を移したり、海外で投資を行ったりすることが多くなった。こうした人の中には、国内での税金を逃れる目的で海外に資産を隠している人もいるようだ。

そのため、ここ数年で日本国内に資産を留めるための制度ができ、海外保有資産に対して報告義務が課せられ、不提出・虚偽報告には罰則が設けられている。しかし、あくまで自己申告であり、税務当局が情報を把握するには不十分な制度だった。また、「パナマ文書」の問題で、各国で海外口座に対する風当たりが強まった。

そこで、G20主導で海外の金融機関等を利用した国際的な脱税及び租税回避に対処するために各国の金融口座情報の自動的情報交換をすることが同意され、2014年2月に経済協力開発機構(OECD)において、各国の非居住者が保有する金融口座情報を自動的に交換するための国際基準である「共通報告基準(CRS)」が公表されたのである。

自動的情報交換制度の概要と制度が及ぼす影響とは?

日本においては、平成29年1月1日以降、新たに金融機関等に口座開設を行う場合、居住地国名等を記載した届出書を提出しなければならない。既に口座を保有している場合でも、金融機関等から届出書の記載を求められた場合には、提出する必要がある。

そして、金融機関等は毎年4月30日までに特定の非居住者の金融口座情報を所轄税務署長に報告し、その情報は、租税条約等の情報交換規定に基づき、各国税務当局と自動的に交換されることとなる。

日本の税務当局が情報を提供する一方で、各国の税務当局からも日本の居住者がその国の金融機関に保有する口座情報の提供を受けることになるのである。つまりは、海外に保有する資産が丸裸にされる制度と言える。

主に提供されることとなる情報は、以下の通りである。

1. 氏名、住所、生年月日
2. 納税者番号
3. 金融機関の名称、口座番号、口座残高
4. 利子・配当等の年間受取総額
5. 金融商品の償還や売却による収益の情報
6. 保険商品の時価、その他金融商品の評価額 など

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自動的情報交換制度の導入予定国や地域は?

既に自動的情報交換制度を開始することを表明している国・地域は、日本を含み100を超えている。今後の対策を考えるにあたって導入予定国や地域について確認しておいたほうがよいと思われる。

2017年の導入を表明している国

アングィラ、アルゼンチン、バルバドス、バミューダ諸島、ベルギー、英領ヴァージン諸島、ブルガリア、ケイマン諸島、コロンビア、クロアチア、キュラソー島、キプロス、チェコ、デンマーク、ドミニカ、エストニア、フェロー諸島、フィンランド、フランス、ドイツ、ジブラルタル、ギリシャ、グリーンランド、ガーンジー、ハンガリー、アイスランド、インド、アイルランド、マン島、イタリア、ジャージー島、韓国、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、メキシコ、モンセラト島、オランダ、ニウエ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サンマリノ、セイシェル、スロバキア共和国、スロヴェニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、トリニダード・トバゴ、タークス・カイコス諸島、英国

2018年の導入を表明している国

アルバニア、アンドラ、アンチグアバーブーダ、アルーバ、オーストラリア、オーストリア、バハマ、バーレーン、ベリーズ、ブラジル(時期未定)、ブルネイ(時期未定)・ダルサラーム、カナダ、チリ、中国、クック諸島、コスタリカ、ガーナ、グレナダ、香港、インドネシア、イスラエル、日本、クウェート、レバノン、マーシャル諸島、マカオ、マレーシア、モーリシャス、モナコ、ナウル、ニュージーランド、パナマ、カタール、ロシア、セントキッツ・ネイビス連邦、サモア、セントルシア、セントヴィンセント・グレナディーン、サウジアラビア、シンガポール(時期未定)、シント・マールテン、スイス、トルコ、アラブ首長国連邦、ウルグアイ、バヌアツ

参考 OECD「AEOI:STATUS OF COMMITMENTS」

米国は外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)があることを理由に自動的情報交換制度へは参加を表明しておらず、他にも参加を表明していない国・地域は多数ある。

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自動的情報交換制度への対策と対応について!

海外に資産を保有するにあたって、今後の対策等については以下の通りである。

1. これまで通り海外に保有し、法令を守り報告書や届出書を提出する。後ろめたい資産でなければ、法令を守ることが一番だと言える。

2. 海外から日本へ資産を持ち帰ることで、国外財産調書等を報告する必要がなくなる。しかしながら、違法に隠していた資産である場合には、簡単に国外へ持ち出せないかもしれない。

3. 自動的情報交換制度への参加を表明していない国・地域に資産を移す。この場合にも、違法な資産については難しいであろう。

4. 資産を保有する外国の居住者になることで、自動的情報交換制度の適用から除外される。可能である場合は、居住地を変更するという手もある。

今日の世界では所得格差が拡大し、著しい不公正が生じているが、富裕層の租税回避が原因の一つとなっている。
結局のところ、グローバルな税務制度の導入により、富裕層や個人投資家が海外の金融機関等を利用した税金逃れは難しくなる。今後は、法令を遵守したうえで、海外で資産を保有し分散投資するのが賢明と言える。

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