クラウドファンディングは、起業家やクリエイターが資金を調達する手段として日本国内でも注目を集めているが、海外のクラウドファンディングの市場規模は桁違いに大きい。海外のクラウドファンディングの中でも人気を集めているプラットフォームは、米国のIndiegogoとKickstarter。この米国2大クラウドファンディングサイト「Indiegogo(インディーゴーゴー)」と「Kickstarter(キックスターター)」の比較と魅力を調べてみた。

最近話題となっているクラウドファンディングとは

起業家やクリエイターが資金を調達する手段として、近年注目を集めているのがクラウドファンディングだ。クラウドファンディングとは、製品・サービスの開発、もしくはアイデアの実現などの目的を持った事業法人や個人が、専用のインターネットサイトを通じて、その目的に共感した不特定多数の出資者から広く資金提供を募る方法である。

いまでは世界中に多くのクラウドファンディングサイトがあるが、日本では、2011年の東日本大震災後に被災地復興事業の資金調達が行われたことで、一気に注目されることとなった。

また、海外で日本の商品やサービスを販売するには、海外向けの個別ECサイトやAmazonへの出展、海外のトレードショーへ参加する方法があるが、どの方法をとっても集客が難しく、あまり良い結果が望めないのが実情であった。そんな中、新しい手法としてもクラウドファンディングが注目を集めている。

米国最大手のクラウドファンディングには、IndiegogoとKickstarterがある。数年の間にこの2大プラットファームが急成長し、出展数とユーザー数が爆発的に増加しており、クラウドファンディングが資金調達手段としていかに主流となってきているのかがわかる。2009年4月にアメリカの民間企業が立ち上げ、現在世界No.1のクラウドファンディングサイトのKickstarterは、2016年には10万件を超えるプロジェクトが成功し、累計20億ドル以上もの資金が集められた。

拡大するクラウドファンディングの市場規模

日本国内におけるクラウドファンディングの市場規模は、矢野経済研究所によると2015年には約363億円で、2016年には31.5%増の約477億円が見込まれている。また、2017年の全世界の統計予測としてStatistaのデータを参照すると、全世界の見込みは72億ドル、日本国内では8,100万ドルと予測された。

一方、米国の2017年の見込み数値は、日本の10倍以上の9.6億ドルである。米国は、2016年時点で全世界の20%程度を占めており、今後も世界のクラウドファンディングの市場規模はさらに拡大していくと予想されている。日本の規模は全世界の1%程度ではあるが、今後も成長していくのは確実であろう。

また、海外クラウドファンディングの大手IndiegogoとKickstarter は、どちらも報酬型のクラウドファンディングであるが、2つのプラットフォームを合わせると総プロジェクト数55万件、支援者数約1900万人、総投資額約29億ドル(2016年6月時点累計)と圧倒的な規模である。

参考:
https://www.statista.com
https://www.statista.com/outlook/335/100/crowdfunding/worldwide#market-transactionValue
http://www.yano.co.jp/press/pdf/1573.pdf
http://make.dmm.com/starter/

Indiegogoの特徴と魅力とは

Indiegogo(インディーゴーゴー)Indiegogoは、もともとは映画製作者のためのクラウドファンディングプラットフォームとして、2008年1月からサービスを開始した。本社はサンフランシスコである。現在はガジェト系やクリエイティブ関係のプロジェクトが多いようだ。

成功プロジェクト数や総投資額はKickstarterの半分以下ではあるが、誰でも気軽にプロジェクトを立ち上げることができるため、プロジェクト案件の総数では現在No.1のKickstarterと肩を並べるほどである。

Indiegogoには2種類の資金調達方法があり、1つは、設定した期間内に目標金額に達成しなかった場合、集めた資金は全て出資者に返還され、プロジェクト自体がスタートしない「Fixed funding」。もう1つは、目標金額に達成しなくても期間内に集まった資金を得ることができる「Flexible funding」で、95.6%のユーザーが「Flexible funding」を利用しているようだ。

また、Indiegogoはサイト掲載の審査が比較的緩いのが特徴である。誰でも気軽にプロジェクトを立ち上げることができるため、プロジェクトの成功率は低いがテストマーケティングとして出展されるケースも多いようだ。さらに、資金調達に成功した後もプラットフォーム上にプロジェクトを掲載し、出資額に応じて報酬を出すことができる「InDemand」というサービスがあり、EC(eコマース)と同様の役割も果たす。

Indiegogoの人気カテゴリーはテクノロジーやデザインだが、全部で24種類のカテゴリーがあり、Kickstarterよりも9種類多い。

Kickstarterの特徴と魅力とは

Kickstarter(キックスターター)Kickstarter は2009年にニューヨークで設立され、現在米国NO,1のクラウドファンディングプラットフォームである。2016年にはプロジェクト数が約28万件、そのうち成立プロジェクト数が10万件を超えた。

Kickstarterの資金調達方法は1種類しかなく、目標金額を期間内に達成したときにのみ、出資額を受け取ることができる「All or Nothing」というタイプである。(Indiegogoの「Fixed funding」と同様である。)Kickstarterによると、期間内に目標金額の60%に達したプロジェクトの98%が成功しているということなので、期間内に目標金額の60%を達成しているプロジェクトであれば成功する可能性は大きいであろう。

資金調達成功後には、Indiegogoの「InDemand」と類似した「Spotlight」というサービスがある。「Spotlight」では、キャンペーンページで製品を紹介したり、製品のホームページ誘導するようにリンクを貼付することができる。

Kickstarterの人気カテゴリーはゲーム関連で、資金調達額の約20%がゲーム関連の製品が占めている。

IndiegogoとKickstarterの比較表

  Indiegogo Kickstarter
ファンディング方式 ① Fixed Funding
② Flexible Funding
All or Nothing
プロジェクトカテゴリー 24種類
※人気カテゴリーは、テクノロジー、デザイン、アート、映画、健康
※寄付やチャリティー関連も多く、Kickstarterが対象としない分野も幅広く取り扱っている
15種類
※ダンス、写真、舞台、コミック、アート、ファッション、出版、音楽、モノづくりなどクリエイティブ系のプロジェクトを対象としている
※ゲーム関連のプロジェクトに強い
手数料 ① Fixed Fundingの場合
成功報酬:4%
クレジット決済手数料:3%
合計:7%
② Flexible Fundingの場合
成功報酬:4%(目標額達成)
成功報酬:9%(目標額未達成)
クレジット決済手数料:3%
合計:7%~12%
①②:アメリカ以外のプロジェクトの場合、別途25USドル
成功報酬:5%
決済手数料:3~5%
アマゾンペイメント又は、クレジット
合計:約8~10%

上述したように、IndiegogoとKickstarterの大きな相違点は、ファンディング方式と、対象とするプロジェクトのジャンルである。また、成功報酬等の手数料にも違いがあるようだ。

IndiegogoとKickstarterの成功プロジェクト事例

予想外の大成功『Flow Hive』(フローハイブ)

2015年には、オーストラリアの養蜂家であるスチュアート・シーダー氏とその息子アンダーソン氏が考案した『Flow Hive』というミツバチ用の巣箱が、Indiegogoで1300万ドル以上(約14億円以上)もの資金調達に成功し話題となった。

『Flow Hive』(フローハイブ)

人はバルブを捻るだけで安全で簡単に、そしてミツバチにはストレスをかけずに蜂蜜を集められる発明品として、養蜂家や養蜂を趣味としている人たちから絶大な支持を受けた。

現在は世界中から注文が殺到し、オーストラリアで最も権威があるデザインの賞である2016年グッドデザイン賞も受賞した。このビジネスで予想以上の成功を収めたスチュアート・シーダー氏と息子のアンダーソン氏の親子の生活は一変したようだ。

クラウドファンディング史上最大の成功『Pebble』(ペブル)

Kickstarterを利用し最大の成功を収めたのは、スマートウォッチ『Pebble』のプロジェクトだ。

『Pebble』は、カリフォルニアの優秀な若者たちによって開発された腕時計型ウェラブルデバイスだ。2012年にkickstarterにプロジェクトを掲載すると、ネット上では瞬く間に話題となり、開始わずか2時間で目標である10万ドルを達成し、最終的には1,000万ドルもの資金を集めることに成功した。そして、6.8万人以上の人がこのプロジェクトを支援した。

まとめ

IndiegogoとKickstarterのどちらも魅力的なクラウドファンディングプラットフォームではあるが、比較してみると相違点も多い。上述したように、Indiegogoは審査が緩く誰でも容易に出展できることが大きな魅力だが、その反面Kickstarterよりも成功率に劣る。しかしながら、Indiegogoにプロジェクトを掲載したことで『Flow Hive』のように予想外の大成功を収める家族もいる。

一方でKickstarterは、厳しい審査を乗り越えたプロジェクトのみが出展できるので成功率が高く、成功プロジェクト数はIndiegogo の2倍以上である。2014年にはその承認ルールを簡素化したということで、今後も取扱いプロジェクトが拡大することが期待される。

また、日本国内にもクラウドファンディングサイトが多数存在するが、その中でもMakuakeやCampfireが急成長しているようだ。どちらも購入型のクラウドファンディングで、支援したプロジェクや事業からのリターンとして、製品・商品やサービスを受け取ることができる。Makuakeの資金調達額は、サービス開始から3年目の2016年には累計15億円を超え、設立時から10倍に成長した。1,000万円以上調達したプロジェクトは業界最多であり、業界最速の成長スピードとして話題となっている。

クラウドファンディングという仕組みは、国内外において急速に市場を拡大しており、今後も事業者や個人の有益な資金調達の手段として、また新たな投資手段として活用されていくであろう。

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