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金融庁が求める「顧客本位の業務運営」とは

1998年の「日本版ビッグバン」以降、投資信託や保険商品等の銀行窓口販売が解禁され、2014年には「日本版ISA(NISA)」が導入されるなど、顧客が資産形成を実現するための選択肢が増えた一方で、顧客の利益につながっているのかどうかには疑問がある。

そんな中、金融庁は平成28事務年度金融行政方針において、金融行政の重点施策として「活力ある資本市場と安定的な資産形成の実現、市場の公正性・透明性の確保」を掲げた。また、「活力ある資本市場と安定的な資産形成」の実現に向けた金融機関等に対する取組みとして、金融機関等による「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」の確立と定着を提言している。

金融庁の方針によると、金融機関等において「顧客にリスクを十分説明しなかったり、手数料の高い金融商品ばかりを売りつけたりする営業現場」の実状を踏まえ、「国民の安定的な資産形成を促進していく観点からは、金融機関において、顧客のニーズや利益に真に適うサービスや良質な商品の提供等、顧客本位の業務運営が行われることが重要である。このことは、顧客の満足度の向上につながり、金融機関自身の安定的な収益基盤の構築にもつながると考えられる。」とした。

銀行などの金融機関等が、今後の営業活動の在り方を見直していくことで、市場や顧客にはどのような利点や影響があるのだろうか。

銀行窓販の問題点

投資信託や保険商品等の銀行窓口販売の解禁は、「貯蓄から投資へ」の流れの中で、顧客の利便性向上や、日本の金融・資本市場の国際化、競争力の強化などのメリットがあった。しかしながら、顧客からの手数料を銀行へ集中させ、国として銀行の収益力をバックアップする方針であったように思える。

銀行において、投資信託販売額や収益が増加してきた一方、残高や保有顧客数は伸び悩んでいる。今なお日本の家計金融資産の約52%を現金・預金が占めており、株式・投信等は約15%しかない。

営業現場の実状は、販売手数料の確保を優先する金融機関が、新しい商品が出るたびに、一括での投信購入を勧めることを繰り返している。投資信託が短期的なリターンを狙う回転売買の商品として使われ、長期的な資産形成に資する商品としては十分活用されていないのだ。また、営業担当者が販売手数料率の高い商品に偏った提案を行い、残高目標を重視するあまり、投資信託やファンドラップの解約申し出に簡単に応じない事例もある。

こうした状況を踏まえ、金融庁としては、国民の安定的な資産形成を促進していくためには、これまでのノルマ営業を改め、「顧客本位の業務運営」を行う必要があるとし、顧客の利益を最優先する営業への転換を金融機関に求める方針を打ち出したのだ。

 国内の投資信託と米国の比較

そもそも、日本国内で販売されている投資信託は、家計の安定的な資産形成に適しているのであろうか。

日米で販売されている投資信託を比較すると、日本の投資信託は、米国のものに比べ、1銘柄当たりの規模が小さく、短期運用が多く、販売手数料・信託報酬等は5倍も高くなっている。さらに、運用結果(収益率)を長期的(過去10年の平均)に見ると、米国は5.2%であるのに対して、日本の主要投資信託はマイナス運用になっているのだ。

日本国内で販売されている投資信託の多くが、投資信託の規模が小さいために、管理コストが割高になり、顧客が支払う信託報酬等の手数料も高くなるものと考えられる。こうした状況を踏まえると、 家計にとっては長期的な資産形成を行うために最適な環境にあるとは言えないであろう。

やはり、金融機関が短期的な手数料収入等の足元の利益を優先させ、顧客の長期的・ 安定的な資産形成への貢献は二の次という姿勢であることが明白であるように思える。

また、2014年に導入された「日本版ISA(NISA)」については、口座数が順調に増加しているようだが、投資未経験者の中には口座開設後も実際の投資に踏み切れていない。このことは、資産形成を行うにあたってはリスクよりも堅実を求める国民性であるようにも感じられるが、投資への知識不足が要因であることが大きい。

諸外国では、投資の知識について、より実践的な投資教育等が行われているが、未だに日本国内においては投資の知識がないがために、「投資はリスクがあり怖い」という認識がある。

さらには、金融機関が勧める内容を鵜呑みにし、顧客自身で選択する能力が不足しているのである。今後、金融機関等が「顧客本位の業務運営」を実現するにあたっては、金融・投資教育が重要になってくるであろう。

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顧客ファーストの投資商品のあるべき姿

これまでの金融機関においては、短期的な利益を優先させるあまり、「顧客ファースト」ではなく「自社利益ファースト」の営業を行っている状況にあった。今後、金融庁の「顧客本位の業務運営」の方針が浸透すれば、顧客の利益に結びつかないような投信販売は減るであろう。

そうは言っても、これまでの金融機関の営業体質が容易に変わるとは思えないが、安定的な資産形成に役立ちそうな新しい商品が登場している。

その中でも注目されているのは、個人型確定拠出年金(iDeCoイデコ)だ。2017年1月から個人型確定拠出年金(iDeCoイデコ)の加入対象が広がり、公務員や専業主婦を含め基本的に20歳以上60歳未満のすべての人が利用できるようになった。個人型確定拠出年金(iDeCoイデコ)は毎月積み立てを行い、60歳まで解約できないため、長期的な資産形成に有用な商品である。拠出金や受け取り時は税額控除の対象となり、運用益も非課税という税制優遇措置がとられている。

さらに、金融庁が創設を要望していた、少額からの積立・分散投資に適した「積立NISA」が、2018年1月より開始される。「積立NISA」は、投資額の上限が120万円から40万円に下がるが、非課税期間がこれまでの5年から20年に伸びる。長期・分散投資のメリットを十分得られるような制度となっている。

「貯蓄から投資へ」の取り組みがなされてからかなりの年数を経て、金融庁が「国民の安定的な資産形成」のために本腰を入れ始めたように感じる。今後、顧客の利益最優先となるような商品や制度の登場が期待される。

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 海外の投資信託購入も視野に

一方、国内の投資信託にこだわらないのであれば、海外投資信託(ETF)や海外ファンドにも目を向けるべき時代に来ている。1000万円以上の資金は必要になるが、海外のファンドラップ口座を活用すれば非課税で運用することができ各手数料も安い。選択できる銘柄も世界中の商品7,000本からポートフォリオを組むことができる。申込には、海外専門の投資顧問会社との契約が必要だが、このプライベートバンクと同様のサービスを受けることができる「海外ファンドラップ口座」は、国内証券会社の口座と比較、検討する価値がありそうだ。

参考:
平成 27 事務年度 金融レポート
金融庁 平成29年度 税制改正要望項目
FCA Pressrelease

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