今から26年前、バブル真っ只中1991年の定期預金金利をご存知だろうか。
日本銀行公式HPの統計(預金種類別店頭表示金利の平均年利率等)で検索すると、1991年10月の平均預金金利は2年定期300万円以上でなんと年率約6%!300万円預ければ2年後には税引前336万円に。1,000万円なら2年後に1,120万円、2,000万円なら2240万円になる。何ということだ。
振り返って現代、2017年3月最新の預金平均金利は2年定期で0.016%、1,000万円以上ならばどっこい0.017%である。数字にして約375倍。そんなとてつもない金利が元本保証の定期預金に付く時代があったのだ。
そんな時代に生きていればどんなに良かったことだろうか。筆者、現在の全財産は約1,300万円ほど。この全額をノーリスクの定期預金で運用しても2年で156万円増える計算になる。月あたりにすると6.5万円の不労所得を得られる算段である。あぁバブルとはなんて素晴らしい時代だったのだろうか。
どんなに嘆き叫んでもそんな時代は戻って来ないので、現代の金利0.017%を受け入れてこれまた全財産の1,300万円を全額ノーリスクの定期預金で運用したとすると、2年間で得られる金利は4,420円。繰り返す、4,420円!月あたり約184円の不労所得を得られる算段である。
何ということだ。184円なんてコンビニでちょっとイイおにぎり、例えばイクラのおにぎりを買って終わりである。あぁなんて悲しき低金利時代。1,300万円の定期預金の対価が毎月1個のイクラおにぎりだなんて・・・
それでも元本保証の定期預金。増えはしなけれど、下手に運用して減らすよりはよっぽどマシ!と考える向きもあるかもしれない。が、実は決してそんなことはない。定期預金も減るのである。
定期預金は減る
世の中に出回るモノの値段を数値化した消費者物価指数という数字がある。この数字の増減で物価の上昇・下降を知ることが出来るのだが、今から約37年前のそう遠くない昔、1980年の消費者物価指数は74.5という数字だった。大卒初任給が約11.8万円の時代だ。その当時において月11.8万円という金額は、贅沢は出来なくとも生活は充分に出来る金額で、すなわちそれだけ周りのモノの値段、物価も安かった。
現代において月11.8万円、年収にして141.6万円という金額では最低限の生活を維持することさえ困難だろう。それだけ物価が上昇した訳で、現に2016年の消費者物価指数は99.9。1980年から比べて34%の上昇である。2016年の大卒初任給は約20万円だから、36年経って「生活の維持に必要な金額」は約8万円も増えたのである。つまり36年前のお金の価値と現在のお金の価値はまるで違うという事だ。同じ10万円でも36年前と今とではそのお金で出来ることがまるで違う。昔はひと月暮らす事も出来ただろうが、現代でそれはほぼ不可能。36年前の10万円と現代の10万円は額面は同じでも価値はまるで違うのだ。
もし同じ事がこれからの未来にも起こったら?
例えば今1,000万円の預金があるとしても、20年後30年後に同等の価値を保っている保証は無い。定期預金金利が年0.017%しかないのに消費者物価指数が毎年2%ずつ上がっていったら?
ここ数十年間、消費者物価指数がどんどん上昇していった傍らで肝心の預金金利はどんどん低下していった。結局、この間の定期預金は実質的に大きく目減りしていった事になる。
投資で物価上昇を超えろ
という訳で自分の全財産を預金性資産だけで持つのは非合理的なのである。「定期預金=減らない」という公式は長期的に見れば決して正しいとは言えず、むしろ間違っていた。と言える環境にあったのが事実だ。
あなたはそれでも預金100%で未来に向かいますか?
もし仮に1980年〜2016年のように今後も平均して消費者物価指数が1%ずつ上昇していくとすると、最低でも年利1%で運用出来る商品じゃないと「元本保証」とは言えないのでは無いか。このご時世において年利1%の預金性商品はあるにはあっても大抵がキャンペーン性の物で、恒常的に継続されるものでは無い。
そこで必要になるのが証券への投資。中でもおすすめしたいのは投資信託を使ったインデックス投資である。インデックス投資というのは市場平均を示す株価指数=インデックスに連動する成果を目指す投資手法のことである。「手法」と言うとなんだか小難しい印象を抱くかもしれないが、何のことはない。要はそういう投資信託を買えばいいだけの話である。
インデックス投資とは?
世の投資信託を大きく二分すると
- インデックス型投信
- アクティブ型投信
に分けることが出来る。株価指数に連動する成果を目指すのがインデックス型投信、市場平均である株価指数を更に上回る成果を目指すのがアクティブ型投信。と聞くと「アクティブ型の方が良いではないか」という事になるが、世の中そう甘くはない。インデックスを大きく上回る「価値ある」アクティブ型投信があるのは事実。しかし、インデックスさえも下回ってしまう「残念な」アクティブ型投信が数多くあるのもまた事実。
消費者物価指数の上昇を上回る成果を基準とするならば、インデックス型投信で充分にその目的は達成されるばかりか、もしくはそれにお釣りが来る成果を期待してもなんら不自然ではない。
代表的な株価指数=インデックスと言えば、いずれも日々のニュースで耳にする機会が多い「日経平均株価」「TOPIX」「NYダウ平均株価」あたりだろうか。これらは平均株価の名の通り複数銘柄の平均値を表す指数。
- 日経平均→東証1部225銘柄の平均
- TOPIX→東証1部銘柄全部の平均
- NYダウ平均→NY証券取引所の優良30銘柄平均
という様にそれぞれ違えど「ある条件に則した銘柄の平均値」という事で、インデックス投資=その市場全体を買うようなイメージである。
もちろんこの他にも
- 日本以外の先進国株式
- 新興国株式
- 日本債券
- 先進国債券
- 新興国債券
- 日本不動産
- 海外不動産
という様に様々なジャンルのインデックス=指数が存在し、それらを複数組み合わせることで分散を図りながら進めていくのがインデックス投資の要諦である。
インデックス投資のリターン
ではそのインデックス投資で一体どれくらいの収益を期待できるのか、各インデックスの過去リターン値を整理してみよう。過去は過去、未来の成績を保証するものでは無いので、あくまで参考までに。
いずれも過去10年の年率平均リターン(my INDEXより)
- TOPIX(日本株) 0.7%
- NYダウ(米国株) 3.9%
- MSCI コクサイ (先進国株日本除) 4.2%
- MSCI エマージングマーケット(新興国株)2.1%
- NOMURA-BPI 総合(日本債)2.3%
- 東証REIT(日本不動産)2.9%
- S&P グローバルREIT(海外不動産)1.9%
「過去10年の年率平均」だから、かのリーマンショック期も含んだ数値はかなり下振れした印象を持つ。が、それでもざっと概ねこのような成果をインデックス投資で得られるとイメージして頂いて良い。他にも先進国債や新興国債、新興国不動産など様々なインデックスが存在し、それらに連動するインデックス型投信を買い付けて保有するだけで楽に物価指数の上昇を超える事が可能となる。
とは言え、この中から一体どれを買えばいいのか。
答えは簡単。全部買えばイイ。それならどれが騰がっても下がっても資産が分散されるから取りこぼしなく、やられっぱなしも無い。その代わり〇〇ショックのような世界的大恐慌がくれば一定期間全インデックスが下降に転じることはあるが、それでも5年〜10年もすれば回復に転じる。リーマンショックを含めた10年の年率平均リターンがプラスであるように。
複利効果も絶大
そして忘れてはならないのが複利効果の絶大さ。例えば元本300万円を年利5%で30年運用する場合、単利ならば毎年15万円ずつしか増えていかないのに対し、複利ならば利息も含めた額から5%、更に5%と増えていくから年々増加率が加速していく。
グラフにすると一直線の単利に対して、徐々に上向きカーブを描きながら上昇していくのが複利。単利の場合元本300万円が30年後に750万円になるのに対して、複利は最終的に約1,300万円。その差550万円。
一般的な預金性商品はほぼ単利だから、複利で増えていく証券投資と比べるとこれだけでもかなり不利だと分かる。加えて、リターン自体の差もあるから、長い目で見るとその差は歴然となる。
そして複利の効果は横軸の時間を長く取れば取るほど加速度的に増加していく。例えばその期間を30年から50年に延長してみるとグラフはこうなる↓
上昇カーブは徐々にキツくなり資産は後半どんどん増えていく。300万円を5%で50年運用するとなんと約3,400万円に達する。つまり複利の効果を最大限得るには時間が必要なのだ。10年より20年。20年より30年。30年より・・・と、長ければ長いほどその効果は絶大。人間何もかも若ければ若いほどイイ訳ではないが、こと投資のスタートは「若ければ若いほどイイ」。
アインシュタインも唸ったこの「複利の効果」のすごさに筆者が気付いたのはちょうど31歳に差し掛かった頃だっただろうか。遅くもないが全く早くもない。遅くとも社会人になった23、24の齢に始めていれば・・・と何度思ったことか。
気を取り直すと31歳からでも定年60歳までは約30年、いよいよ老いが本格化する70歳までは40年もの時間を横軸に取ることが出来る。80歳の齢で何が出来るのかはわからないが、そこまでカウントすれば一応は50年の歳月を取ることも出来る。つまり、この複利の効果を得るにはやっぱり何としても30歳までにはスタートを切っていた方があとあと絶対的に有利なのである。失われた時間は絶対に取り戻せない。
もしこれを読んだあなたがまだ20代ならばこれ幸い。充分なアドバンテージを得ることが出来る。30代ならばまだなんとか。今すぐにスタートを切って欲しい。40代ならば・・・それでも俄然やる価値はある。
(記:モッティー)