欧州では、イギリスに続き、フランスでも「ユーロ離脱の動きが強まるのか」とヤキモキし、日本の近隣でも連日、きな臭い話しで持ちきりです。世界の主要国では、株式も不動産も金余りで高値圏での動きが続いていて、持っている投資家は売り時に思案し、持っていない投資家は「下がって割安になったら買いたい」とにらみあい。
金利上昇が想定されるときに債券投資は適当でない
本来であれば、困ったときの受け皿として債券投資が注目されるところですが、欧州も日本も、マイナス利回りの債券で、「買って償還まで持ったら損が確定してしまう」投資対象なんて、まともな投資家であれば買いません。であれば、消去法で、一番安心して保有できる通貨「米ドル」建て債券か・・・、と思いきや、FRB(米連邦制度理事会)は、2015年12月、2016年12月に続き、今年3月には3度目の利上げに踏み切り、完全雇用と良好な住宅市況を背景に、年内にあと2回引き上げると予想する専門家も多く、「金利上昇が想定されるときに債券投資は適当でない」という意見も多い。
あれもダメ、これもダメ。だから分散投資でいいのか?
ここからは株式投資はダメ、不動産投資はダメ、そして債券投資もダメではどこに投資したらよいのかと八方ふさがり状態です。そこで売れているのが、バランス型投信、ファンドラップ。「何を買ったら良いかなんて、プロでもわからない。ここは一つのかごに盛るよりも、複数のかご。分散投資しかない」と、セールストークが勢いづく。
「どれも高値圏にあって、どれがその中でまだ買えるのか」を自分では判断できないからとプロに分散投資をゆだねることが正しい選択なのか。投資の格言に「休むも相場」とあります。そういうときは、投資をしないと考えるのがまっとうだと考えます。
「現在が高値圏にあり、この1,2年のうちに2割以上下落するときがあるのでは」と不安に思って投資する資金があるなら、その資金を減らさないように大事にして、2割以上下落する場面をじっくり待ったらよいのだと思います。今ここで無理をして、値上がり益を期待して2割以上値下がりする憂き目に遭うよりも、2割下がった場面で確実に投資すると準備したほうがよいに決まっています。2割下がったものに投資するということは、2割の利益を儲けたのに等しい効果です。ただし、2割下がったときは、ずっと下がるときを待っていたわけですから、「もう少し下がるのを待とう」と躊躇してはいけません。もし勇気がなかったら、当初考えていた投資金額の半分でも構わないからリスクを減らしてでも投資を実行することをお勧めします。
お勧めはドル建て債券投資、そして今はドル建て債券を投資対象にした投資信託
ただし、そうは言っても、このゼロ金利時代に円資産で放っておくのも不安だという人はやはり多いのだと思います。その方には、やはり米ドル建て債券をお勧めします。「金利上昇が想定されるときに債券投資は適当でない」という見方は確かにありますが、私は米国の長期金利がそれほど大きな金利上昇にはならない、10年国債利回りで、せいぜいあっても2.8%程度、ここから0.5%程度上昇する程度で上昇幅は知れていると想定しているからです。
主要国の中で高金利通貨債券と聞いて、どの国を思い浮かべますか?多くの人はオーストラリア、イギリス、カナダではないでしょうか。この中で米国国債よりも利回りが高いのは、オーストラリアだけ、それも利回りでわずか0.3%程度しか変わりません。
米国は主要国で唯一、金融緩和策を解除し、政策金利を引き上げて、異常事態から抜け出して正常な国に向かいだしている国。金利は主要国では高金利の部類に入り、しかも、消去法で安心して持てる通貨の筆頭が米ドルであることは疑う余地がありません。
高金利で相対的に安全通貨である米ドル建て債券の金利が上昇していく場面を想像してみてください。金利上昇で魅力を増していく米ドル建て債券が投資対象として注目されないわけがありません。加えて、ドルの為替水準まで口先介入を入れてくるトランプ大統領ですから、金利が急上昇するような局面で黙ってみているようにも思えません。さらに、米国以外の国で金融危機が発生しようものなら、FRBは政策金利の引き上げを停止し、逆に、再び金融緩和策に戻ることもあり得ます。
流動性の高さを重視した投資がお勧め
今後も投資環境に影響を及ぼすようなことがいつどこで起こっても不思議でない状況が続くものと思われ、そういう環境下だからこそ、米ドル建て債券は投資対象の選択肢として外せないものと考えます。
ただし、何が起こるかわからない環境での投資ですから、償還まで何年も保有する前提で行うドル建て債券への直接投資ではなく、ドル建て債券を投資対象にした投資信託で取り組み、「売却して現金化する」流動性の高さを重視して投資することをお勧めします。