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iDeCo(個人型確定拠出年金)や会社員が加入する企業年金は、公的年金に上乗せする年金資産形成のための制度である。しかし年金形式で分割で受け取るよりも、退職金のような形で一括受取する人が多いという調査結果もある。

これは税制・社会保障制度上の理由が大きく、実際に一括受取の恩恵は大きい。ただそれ以外の面を見ると分割がデメリットだけと言うわけでもない。

分割受け取りの所得分類

分割受け取りの場合の所得税・住民税での取り扱い(所得分類)は雑所得に該当する。企業年金やiDeCoの受け取りに関しては、公的年金と同様に公的年金等に係る雑所得に該当する。

私的年金でも民間保険会社の個人年金は、その他の雑所得に該当し必要経費の扱いが変わる。

公的年金等に係る雑所得においては、必要経費は年収額に応じて公的年金等控除額が下記のように定められている。

その他の雑所得に該当する個人年金において必要経費は、簡単に言えば支払った保険料総額を受け取る年分だけ割るような形で計算される。

例えば年間50万円の年金を10年間で受け取るが、保険料総額は450万円の場合、個人年金の必要経費は45万円であり、雑所得は差し引き5万円である。

これが保険料総額が550万円の場合、必要経費が55万円となって、雑所得はマイナス5万円である。このような元本割れの場合、他に雑所得があれば5万円差し引けるが、そうでない場合は他の所得と通算できないので0円とみなされる。

一括受け取りの所得分

退職所得となるケース

一括受け取りを行った場合の所得分類は、企業年金・iDeCoの場合は退職金の性格をもつものとみなされ、退職所得に該当する。

退職所得の計算式は、原則として下記のとおりとなる。

( 収入の額 - 退職所得控除額 ) ÷ 2
※退職所得控除額 = 1年分の控除額×勤続年数(掛金拠出年数)

1年分の控除額は、勤続年数(掛金拠出年数)が20年までは40万円、21年以降は70万円である。例えば21年かけてたとすれば、40万円×20年+70万円×1年=870万円と計算される。

退職所得控除額は大きく、掛金額が年40万円を超える自営業者でない限り、退職所得がプラスになることは少ない。ただし他の退職所得にあたるものも同じ年に受け取った場合は、合算されて退職所得が計算される点には注意が必要だ。

退職所得控除額が大きいだけでなく、2分の1をかけることによる税制優遇もある。ただし、退職所得控除額の計算が将来変わる可能性もあるので注意したい。

一時所得となるケース

民間保険会社の個人年金を一括で受け取った場合は、所得分類は変わり一時所得となる。満期保険金と同じ扱いである。

一時所得の計算式は下記のとおりである。

( 収入の額 - 支払保険料総額 - 50万円 ) ÷ 2

支払った保険料の額だけでなく、50万円も差し引け、さらに退職所得と同様に2分の1をかける税制優遇もある。

所得税における取り扱いの違い

所得税の場合、通常は給与所得・雑所得・一時所得などすべての所得を合算したうえで、扶養控除などの所得控除を差し引いた課税総所得金額に対して、下記のように税額を計算する。

 

ただし合算されない所得もあり、退職所得はその1つである。退職所得の場合は、課税退職所得金額だけで上記の表に当てはめて所得税が計算される。

例えばiDeCoで21年間掛けていて一時金で1,000万円を受け取る場合、退職所得金額は(1,000万円―870万円)÷2=65万円となる。所得税は3.25万円である。

65歳以降に公的年金で年150万円、iDeCoで年51万円(受取期間20年間)受け取るとした場合、公的年金等に係る雑所得はiDeCoの上乗せで51万円純増となる。

所得税率が5%だとしても、年間の所得税が2.55万円増え、2年間の累積だけでも退職所得にかかる所得税を上回る。

通常は支給する側が源泉徴収するため、所得を得た人が退職所得の所得税を計算することはない。

所得が大きくなるほど税率が上がるため、分割受け取りで雑所得としたほうが不利になるケースが多い。雑所得以外の所得(給与所得・不動産所得など)があるケースも多いからだ。

なお一時所得の場合は、給与所得・雑所得などと合算されて所得税が計算されるので、退職所得と扱いは異なる。

所得税の取り扱いの上で合計所得金額の計算上は、退職所得も含めて合計する。

住民税における取り扱いの違い

住民税の場合、税率は所得の大きさに関わらず一定である。多くの自治体は都道府県分と市区町村分をあわせて10%であり、一部自治体では税率が若干変わる。

この税率は、株式等譲渡所得など分離課税の譲渡所得・雑所得に対しては変わってくるが、私的年金の受け取りで該当する雑所得・一時所得・退職所得に対しては変わらない。

住民税率では一括受取が優遇されることはないが、一時所得金額・退職所得金額の計算は所得税・住民税で共通するため、2分の1計算されるという優遇は住民税でも生きる。

またiDeCoからの給付を一時金で受け取る場合には、一般的に金融機関に対し「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要がある。この場合、退職所得の住民税は現年分離課税の特例があるため支給時に徴収され、前年の所得に対して納めるわけではない。

その意味では、資金繰りに困ることは無いという利点はある。

所得合計の取り扱い

支給時に住民税が徴収された(現年分離課税の)退職所得は、所得税と異なり合計所得金額には含まれない。

このことで、給付金の所得制限で有利な取り扱いがされる。また例えば退職所得以外に38万円以下の所得しかない場合は、住民税において扶養控除の対象になる。

なお一時所得や雑所得については、所得税・住民税共に合計所得金額の対象になる。

国民健康保険などにおける取り扱いの違い

国民健康保険においては、合計所得金額から株式取引・FX取引などの繰越控除(過去3年分の損失)を差し引いた金額に対して、保険料の所得割がかかる。

国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料の算定基準においても、分離課税の退職所得は含まれない。

高齢者の場合、所得税・住民税・保険料率をあわせて20%を超える。

例えば65歳以降に受給できる公的年金が年間180万円・iDeCoによる上乗せ年金が年間50万円とした場合を考える。iDeCoによる年金があっても無くても、現行税制では公的年金等控除額120万円であることに変わりない。

iDeCoで積み立てた分を分割で受け取った場合、上乗せした50万円に対して2割程度の税・保険料がかかって目減りする。

一時金として受け取った場合は、退職所得となるためこうした目減りを防止できる。

一括受取はあらゆる面で有利だが注意点も

これまで見てきたように私的年金の一括受取は制度面で有利ではあるが、デメリットもある。

一括受取は年金として受け取る分の前受になるが、給付額が定められている私的年金において前もっての払いとなる場合、額面は下がる。

未来に対する支給は、運用利回り分を上乗せするのが一般的だ。逆に前倒しで支給する場合、将来に対する運用利回り分だけ逆算で割り引くことになる。

なおiDeCoを年金で受け取る場合は、投資した金融商品を売却してから受け取るため、投資信託のようなリスク資産の場合、実際には受取時の時価に年金額が左右される。

このため、年金の受取時期によって給付額が大きくなることも小さくなることもありえる。これを防ぐために、給付開始の何年か前に投資信託のようなリスク資産を定期預金に換えておくことで、給付額を見積もることは可能だ。

また一括で受け取って使い込んでしまうタイプであれば、税・社会保険料負担が生じるとして分割で受け取ったほうが、計画的に資金を使えることも考えられる。

なおiDeCoにおいては、分割と一括を併用することも可能である。例えば、60~64歳は分割で受け取り、残額は一括で受け取ってしまうようなことも可能だ。

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