iDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)といった言葉もかなり定着してきたようです。
共に政府が個人の資産形成を助けるために設けた制度で、税制上の優遇措置が受けられます。人生100年時代と謳われ、家計資産の寿命に不安を感じる人が増えており、こうした制度の利用も広がってきているようです。それぞれの制度については細かく解説しているサイトが数多くあるので、ここでは制度の詳細は他に譲るとして、お得な制度でも始める前に知っておくべきデメリットをお伝えしたいと思います。
IDECOで気を付けるべきデメリット
デメリットの前にまずメリットをあげると、それは最強の節税効果です。資金を拠出した時(拠出金額を所得控除)、運用益が出たとき(利益に非課税)、年金として受け取るとき(退職金控除や公的年金等控除)の3段階で優遇されます。NISA(積立NISA含む)でも運用益が出たときは制度が定める期間内なら非課税となりますが、運用資金の所得控除などはありません。一方で気を付けるべきデメリットとなるのが、拠出した資金は最低でも60歳までは引き出せないということです。運用期間が10年未満の場合は、その期間に応じて受給開始年齢はさらに最高65歳まで遅くなります。受給開始年齢の手前で急に大きな資金が必要となっても、iDeCoの資金をあてにすることはできません(国民年金の保険料免除者になるなどの一定の要件を全て満たした場合、例外として認められる場合もあります)。想定される大きな出費だけでなく、思わぬ急な出費にも対応できるだけの余裕があるかどうかを検討しながら、拠出を始めるタイミングや拠出金額を決めることが重要といえます。まずは最低限の備えとなる貯えを優先するべきケースもあるでしょう。
またiDeCoを始めた後に、想定外の収入減少に見舞われるケースも考えられます。その場合、資金の拠出を減額、或いは停止するという方法もとれますが、停止した場合でも既に拠出している金額の運用自体は続ける必要があります。そして金融機関への手数料も引き続き発生します。ネット証券や大手金融機関では拠出停止の場合の手数料を月々64円と少額に設定しているところが多い一方、400円以上となっているところもあります。iDeCoを利用する際に使える金融機関は1つだけなので、取扱商品だけでなく、こうした手数料も最初に確認したうえで取引金融機関を選ぶことが大切です。
さらに受給開始年齢になっても、その時の相場環境が非常に悪く、保有していた商品が値下がりしている場合もありえます。受給を開始する時点で運用資産はいったん全て売却して現金化することになりますが、損した状態では売却したくないと思うかもしれません。そうした場合、受給開始は最高70歳まで延ばすことができます。ただし、実際にそうした選択ができるのは、市況回復までの生活資金が他にある場合だけでしょう。そうした事態も想定するなら、IDECO以外でも資産をある程度作っておく重要性はさらに高いと考えられます。
積立NISAで気を付けるべきデメリット
今年から始まった積立NISAも、iDeCo同様、長期の資産形成のために設けられた国の制度です。先に始まったNISAとの大きな違いは、運用期間と積立可能総額です。非課税で運用できる期間がNISAの場合は最大10年間(ロールオーバーと呼ばれる新たな非課税枠への移し替えを利用した場合)であるのに対し、積立NISAは20年間です。運用可能総額はNISAの最高600万円(年間120万円×5年)に対し、積立NISAは800万円(年間40万円×20年)となります。資産や収入の少ない若い世代などには、非課税期間がより長い積立NISAの方が資産形成には向いていると言われます。
ただ、NISAでは上場株式や国内投資信託などの中から幅広く投資対象を選べるのに対し、積立NISAでは金融庁が選別した投資信託の中からしか選ぶことができません。これはメリットにも、デメリットにもなりえます。まずメリットといえるのは、金融庁は手数料が低いことを重視して投資信託を選別していることです。通常、投資信託に投資すると、購入時の販売手数料に加え、信託報酬(運用管理費用とも言います)という手数料が保有期間中にかかってきます。しかし、積立NISAの投資対象となっている投資信託では販売手数料はかかりません。また信託報酬も平均的なものと比べて非常に低く設定されています。言うまでもなく、運用において手数料が低いことは非常に重要です。