老後資産の形成と節税を両立できる制度として、iDeCo(個人型確定拠出年金)の存在が挙げられる。
投資をすることも大きな特徴であるが、掛金の拠出上限額が職業や加入している年金制度によって変わってくる点も重要だ。掛金の拠出上限額や節税メリットを理解するには、年金制度の理解も欠かせない。
iDeCoの積立可能額と節税メリット
iDeCoで掛けることのできる金額には上限があり、下記のとおりまとめられる。
年金の加入形態 | 確定給付型年金 | 企業型確定拠出年金 | 掛金上限 | |
月額 | 年額 | |||
第1号被保険者 | 6.8万円 | 81.6万円 | ||
第2号被保険者(公務員) | 1.2万円 | 14.4万円 | ||
公務員以外の第2号被保険者 | 未加入 | 未加入 | 2.3万円 | 27.6万円 |
加入 | 1.2万円 | 14.4万円 | ||
加入 | ||||
未加入 | 2万円 | 24万円 | ||
第3号被保険者 | 2.3万円 | 27.6万円 |
表1:iDeCoの掛金上限額
加入している公的年金制度によってまず分類され、会社員や公務員など国民年金第2号被保険者(厚生年金加入者)は、職業や企業年金制度の加入状況によっても細かく分かれている。
節税メリットであるが、iDeCoで拠出した掛金は所得税や住民税の課税所得を引き下げる。
課税所得に税率をかけ、一定の税額控除を差し引いて税額計算がされる。住民税の標準税率は10%であるものの、所得税率は課税所得により5%~45%と変動する。このため、節税メリットが人により変わってくる。
掛金が同じ年18万円でも、所得税率+住民税率が20%であれば3.6万円の節税になるが、30%なら5.4万円と大きくなる。課税所得が高くなるほど、国民年金第1号被保険者のように掛金の上限が高くなるほど、節税メリットは大きくなる。
公的年金被保険者の種類(第1号~3号)
公的年金制度の被保険者(加入形態)は、第1号から第3号までの3種類に分かれる。
国民年金第1号被保険者は、国民年金加入者である。20歳以上60歳未満で、主に自営業者や失業者が該当し、国民年金第2号被保険者の要件を満たさない非正規雇用の社員も該当する。
国民年金第2号被保険者は、厚生年金加入者である。原則として週30時間以上(正社員の勤務時間が週40時間でなければ、正社員の4分の3)・雇用期間2ヵ月超の雇用契約になっている場合に該当する。
また従業員数500人超の事業所では、週20時間以上・雇用期間1年以上・月収8.8万円以上の雇用契約でも国民年金第2号被保険者となる。
国民年金第3号被保険者は国民年金第2号被保険者の配偶者で、年収130万円(障害者は180万円)未満かつ(第2号被保険者である)配偶者の半分未満の場合に該当する。
該当すると、年金保険料は免除される。ただし上記国民年金第2号被保険者の要件に該当してしまうと、国民年金第3号被保険者にはならない。
国民年金第2号被保険者・第3号被保険者いずれの要件も満たさない場合は、国民年金第1号被保険者となる。
国民年金基金・付加年金
国民年金基金・付加年金は、国民年金加入者である第1号被保険者に対する上乗せ年金制度である。付加年金は国民年金本体の受給を手厚くするための制度であるのに対し、国民年金基金は本体とは別に掛金と受給額を設定する。なお、両者に併用して加入することはできない。
付加保険料は、月400円である。老後にもらえる付加年金は月額で「200円×納付月数分」であるため、40年間納めた分は2年でもとが取れる制度と言われる。
国民年金基金は、各都道府県におかれた国民年金基金(東京都国民年金基金など)と士業・医業など特定業種が加入する職能型国民年金基金があったが、2019年4月1日に全国国民年金基金に加入先が統合された。
国民年金基金の掛金は月6.8万円を上限とするが、老後の給付額を決めて掛金を設定する(確定給付型)。iDeCoと異なり税金計算上は社会保険料控除に該当するが、全額所得控除は共通している。
掛金上限額
国民年金基金・付加年金の併用は不可能だが、iDeCoと国民年金基金、iDeCoと付加年金の併用は可能である。
ただし国民年金第1号被保険者には、iDeCoと国民年金基金・付加年金の掛金上限があわせて月6.8万円と設定されている。
確定給付型企業年金
企業が福利厚生として導入している上乗せ年金制度で、将来の給付金額を約束しているものである。iDeCoと異なり企業が運用を担うが、損失を出した場合は企業の責任で補てんし、労働者には約束した給付額を確保する。
掛金は、原則として企業が負担するが、全体の半額以下であれば労働者に負担させることも可能である。
確定給付型企業年金の労働者負担分は、iDeCoと異なり生命保険料控除となり、かつ全額が所得控除となるわけではない。また会社員がiDeCoと併用している場合は、併用していない場合に比べiDeCoの掛金上限額が14.4万円まで下がる(表1)。
厚生年金基金
従業員が老齢年金に加えて上乗せ年金を受け取れるように、上乗せ部分だけでなく老齢厚生年金の一部も日本年金機構(旧・社会保険庁)に代わって支給し、その分厚生年金保険料と上乗せ部分をあわせた掛金を厚生年金基金が徴収する。
厚生年金基金は、企業が単独で設立した基金もあれば、複数の企業が共同で設立したものもある。
厚生年金保険料は日本年金機構に支払うのと同様に、企業と労働者が折半負担するが、上乗せ部分は全て企業が負担する。
厚生年金基金に加入している場合は、確定給付型年金に加入しているものと同等の扱いを受け、iDeCoの掛金上限は月1.2万円(年間14.4万円)に下がる。
なお厚生年金基金の多くは運用難で退職者への支給がおぼつかないことから、存続が認められた基金を除き、2019年3月までに基金を解散することが決められた。厚生年金基金から確定給付型企業年金に基金型で移行した基金も多い。
厚生年金基金に加入している場合のiDeCoの掛金上限額は、未加入の場合に比べて下がる。厚生年金基金は確定給付型年金と同じ扱いになる。
企業型確定拠出年金
確定拠出年金に関してはiDeCoのように個人で加入できるほか、福利厚生として実施している企業もある。運用を行うのは企業ではなく労働者であるため、損失発生時に企業は追加負担を求められない。
確定給付型企業年金と異なり、掛金の上限が下記のように存在する。iDeCoの加入状況によっても変わってくる。
iDeCo | 確定給付型年金 | 上限月額 | 上限年額 |
未加入 | 未加入 | 5.5万円 | 66万円 |
加入 | 2.75万円 | 33万円 | |
加入 | 未加入 | 3.5万円 | 42万円 |
加入 | 1.55万円 | 18.6万円 |
表2:企業型確定拠出年金の拠出上限額
確定給付型年金未加入でiDeCo・企業型確定拠出年金両方加入の場合、iDeCoでは月2万円・企業型確定拠出年金は月3.5万円と、企業型のほうが掛金上限は多くなる。
さらに確定給付型年金加入した場合は、iDeCoでは月1.2万円・企業型確定拠出年金は月1.55万円と、こちらも企業型のほうが掛金上限は多くなるが若干の差である。
なお労働者に掛金を負担させる「マッチング拠出」も可能だが、企業負担と労働者負担の合計に関して、上記の限度額が適用される。
iDeCoプラス
無くなりつつあり加入者が減少している厚生年金基金と異なり、加入者が増えている新しい制度もある。
iDeCoプラスと呼ばれるもので、確定給付型企業年金や企業型確定拠出年金などの企業年金を実施していない従業員100人以下の小企業が、福利厚生として(iDeCoの掛金にプラスする形で)掛金を負担する制度である。
労働者の個人負担と企業負担の合計額上限は、月2.3万円(年27.6万円)である。
投資した資産の持ち運び
iDeCo以外にも多数の年金制度があり、特に確定給付型企業年金や企業型確定拠出年金はiDeCoと同様に、運用の成果である資産が個人ごとに積み立てられる。
企業が掛金を拠出する企業年金に関しては、従業員が退職すると、企業は掛金拠出を行ってくれなくなる。また積み立てられた資産がこのままでは宙に浮いてしまうし、転職後に同じ企業年金制度に加入するとも限らない。
退職後に脱退して一時金を受け取ることも可能である(確定拠出年金の場合は要件が厳格)が、確定給付型企業年金・企業型確定拠出年金・iDeCoの間では、積み立てられた資産の移換(持ち運び)は可能である。
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