株式投資においては、売買の取引成立から実際に証券口座の資金が動くまで日数がかかる。決算期末時点などで株式を保有していれば配当や優待をもらえるが、決算期末日などより前に取得の注文を行う必要がある。
また一般NISAは、決済日ベースで1月1日~12月31日で120万円分だけ投資できるが、年末年始休業期間等も踏まえると、取引の日で言えば例年12月25日前後で年度が切り替わる。
配当・優待においては、取引日ベースでこれらの権利を得られる最終日とその翌日に、株価の値動きが大きくなる。注文から決済までの決済期間をよく理解しておきたい
注文から決済までは日数がかかる
株式の売買取引成立(約定)から実際の決済(受渡)までは、2019年7月12日までの取引に対しては3営業日、2019年7月16日以降の取引に対しては2営業日かかる。
例えば2019年7月12日(金)に株式を購入した場合、土日祝は営業日でないので、3営業日後は7月18日(木)である。7月17日(水)に売却が成立した場合は、2営業日後の7月19日(金)に受渡が行われる。
配当の権利確定日と権利付き最終売買日の違い
株式を保有しているともらえる配当であるが、もらえる基準は権利確定日時点で保有していることである。
日本企業においては、配当は中間配当と期末配当の年2回支払う企業が多い。期末配当の権利確定日は本決算期末(例えば3月決算企業は3月31日)、中間配当の場合は中間決算期末(3月決算企業は9月30日)としている企業がほとんどである。
権利確定日には購入注文が確定しているだけでなく、証券口座からの決済も完了していなければならない。このため配当を得る権利を得るためには、決済期間を見越して取引を行う必要がある。
権利確定日に株式を行うために、株式の購入取引が必要な日が権利付き最終売買日となる。例えば2月決算企業の2019年期末配当の権利確定日は2019年2月28日であったが、権利付き最終売買日は3営業日前の2月25日であった。
権利付き最終売買日の翌日を「権利落ち日」と呼ぶ。
配当の権利確定は優待にも影響
株主に対して金券やサービス券、飲食料品などを送る株主優待制度を実施している上場企業がある。優待の権利は配当の権利とリンクしているが、期末時点のみ優待を実施している企業もある。
よって優待狙いで株式を購入する場合にも、決算期や権利確定日、権利付き最終売買日を意識して取引を行うことが重要である。
例えば2月決算企業の2019年中間配当・優待の権利確定日は2019年8月30日(31日は土曜のためその前日金曜日に)のため、権利付き最終売買日は2営業日前の8月28日である。
権利付き最終売買日前後の値動き
各企業の決算日や配当政策・優待制度により権利付き売買最終日は、銘柄ごとに異なる。各銘柄の権利付き最終売買日には株価が大きく上昇し、その翌日には下落することが多い。
配当や優待をもらえる日には保有しておきたいというのが、投資家心理である。配当性向や配当利回りの高い高配当銘柄や、魅力的な優待を用意している銘柄ほど、権利付き売買最終日に上昇しやすい。
しかし単に配当・優待狙いで短期間に売買を繰り返していると、値上がりしている権利付き売買最終日に購入し、翌日に値下がりした段階で売却することになる。これでは、売却損を生み出しやすくなる。
損失をおさえるための優待クロス取引
配当・優待狙いの売却損を抑えられる方法もあり、「優待クロス取引」などと言われることもある。この方法を取るには、現物株の口座だけでなく信用取引ができる証券口座が必要なことにも注意したい。
配当・優待狙いで権利付き売買日に購入した銘柄に対し、信用取引の売り注文(いわゆる空売り)を行う。つまり現物買いと信用売りを同時に行う。
そして翌日の権利落ち日は、現物売りと信用返済買いを同時に行う。このようにすると現物取引で損失が出ても、空売りの買い戻しでは売り値より買い値が高くなって利益を出せる。利益と損失をほぼ相殺する形で配当や優待を狙える。
クロス取引の注意点
ただし、現物取引の損失をさほどカバーできないケースもあることに注意したい。
信用取引のうち6カ月以内で反対売買を求められる制度信用取引では、空売りを行うと株の調達代にあたる逆日歩を支払う。空売りは、証券会社が調達した株を借りて売るからである。
優待クロス取引も知られてきており、権利付き最終売買日頃には株の調達が難しくなったために逆日歩が高くなる銘柄も出る。
この逆日歩は、空売りした株を買い戻すまでの日数に応じて高くなる。受渡日ベースで計算することと、土日のような休場日をまたぐ場合は休場日を含むことも気をつけたい。
例えば3月期決算企業の中間期末は9月30日の火曜日になるが、その2営業日前は前週の26日木曜日になり、土日を挟んでいる。
制度信用取引でない信用取引(一般信用取引)では逆日歩がかからないが、利用できる証券会社や銘柄は限定される。
また権利付き最終売買日と権利落ち日をまたぐ空売りでは、配当を得る権利とは逆に配当金相当額の支払(配当落調整金)が発生する点も気をつけたい。
NISA・課税口座の年度替わりも決済期間が影響する
株式取引を行う一般の証券口座(多くの投資家は年間取引報告書が発行される「特定口座」を利用)においては、売却額から取得額を差し引いた譲渡所得に対し、20.315%の所得税・住民税が課税される。
NISA口座であれば、このような譲渡所得に対する所得税・住民税は非課税である。
証券口座を複数開設していた場合、ある口座では年間で損失が出ていても、別の口座では年間で黒字となっている場合は確定申告に行うことで通算される。特定口座においては年間取引報告書で年間の損益がわかるが、この「年間」も決済期間を意識することで正確に理解できる。
所得税と住民税の計算期間になる年間は、1月1日~12月31日の暦年である。特定口座においてこの暦年は受渡の日を指し、さらに12月31日は平日であっても株式市場は休場である。
このため、税金対策に関係する約定の日は前倒しして考える必要がある。例えば約定の日で考えた2019年分とは、2018年12月26日~2019年12月26日である。
2018年12月25日は2018年大納会が行われた12月28日の3営業日前であり、2019年12月26日は2019年大納会が予定されている12月30日の2営業日前である。
課税口座における税金対策の注意点
税金対策の利益確定や損だしは年末ギリギリまでやれば間に合うと思いがちだが、大納会の日に売買成立しても翌年分の所得に影響する。
2019年7月16日からは決済期間が短縮されて若干の余裕はできたが、クリスマス頃までには税金対策は済ますといった、漠然とした考えでもいいから持っておくべきである。
なお譲渡所得を自身で計算する一般口座の場合は、毎年継続して適用することを要件に、約定日で1月1日~12月31日(年末年始の定例休場日を除外すれば1月4日~12月30日)とすることも認められる。
NISAの注意点
NISAの場合は、投資できる額に影響するためにより注意が必要である。NISAには一般NISA・ジュニアNISA・つみたてNISAの3種類あるが、このうちつみたてNISAは定期的に資金を拠出し投資するため、決済期間をあまり意識する必要は無い。
しかし、一般NISAやジュニアNISAの投資タイミングは随時である。一般NISAは年間120万円・ジュニアNISAは年間80万円の非課税投資枠があるが、こちらも約定の日で考えた2019年分とは、2018年12月26日~2019年12月26日である。
NISAの非課税投資枠は、使いきれなかった枠があったとしても翌年への繰越はできない。2019年12月27日に投資した分は、2020年の非課税投資枠を使用することになる。
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