近年問題になっているのが若者の貧困。最近では若者向けの貧困支援活動も増えてきているものの、これらの活動はなかなか周りの大人たちからの賛同が得られていないというのが現状だ。「若いのにお金がないのは怠けているからだ」だとか、「大人に甘えているだけだ」などといった意見も絶たない。要するに、「若者なのだから努力すればどうにかなる」という図式はとっくに壊れているのに周りの理解が追い付いていない状況なのだ。この状況が続けば、今までの大人が作り上げてきた贅沢品が若者に見捨てられるという未来が近づいてくるのだ。
働けばどうにかなる、という考えが根付いている社会
現代において、働いていればどうにか生活ができるはずだし、働けば自立できるはずだ、という考え方は全くの間違いだ。もちろん学生が就職する際には自分が自立できるような会社、もしくは安定している会社を志望に選ぶはずだし、事実、毎年就職希望が多いのは一部上場企業や公務員である。しかし、すべての人間がこれらの企業に勤められるわけは到底なく、全ての就職している人間がまともに賃金を得て自立して生活を行うということも不可能である。事実、最近ではブラック企業と呼ばれる会社が増えてきており、非正規雇用で賞与や昇給も望めず、福利厚生も全く充実していないという会社が問題になっている。いわゆる「ワーキングプア問題」である。どれだけ働いても生活が豊かになることはない。むしろ、一生懸命働くのが馬鹿らしくなってくるほどの賃金しかもらえないのだ。そうなってくるとどうなるか。若者の労働意欲が奪われていき、頑張って働いても苦しいのなら頑張らずにこの貧困生活に慣れてしまおうと適応を始める。結果的に贅沢品を買わなくてもよい生活が定着し始めるのだ。
若者の考える贅沢品とは
若者が貧困に慣れたうえで捨ててしまう贅沢品というのは、一般的に考えられてきた贅沢品とは少し異なる。最近増えてきた若者の○○離れ、という言葉も、若者の考える贅沢品がこれまでの一般常識とは異なっているということを指している。例えば、ブランド品。一昔前までは自分が舐められないように、自分のプライドや地位を保つためにはブランド品を持ち歩くことが当たり前あったし、車を持っているということは一種のステータスとされていた。だが現在は違う。ステータスが当たり前であり、たくさんのモノに囲まれ、何不自由なくそれらを使用する時代に育ってきたはずの若者が、それらの物を切り捨て始めているのだ。時代が周りの目を大事にするという流れから自分の価値観を大切にするという流れに変わったというのもあるが、何よりも若者が将来に希望を持つことができないということが大きな理由だ。現在では安定した雇用、安定した給料というのは一握りの人間しか掴めない遠い夢だということを皆が知っている。先のことが見えず、将来の不安を抱える若者にとって、高級品を切り捨てるというのは当たり前のことだろう。
「ない」状態に慣れればお金が入っても買うことはない
今贅沢品があまり売れないのは、全体的に経済が停滞していて不景気だからだ、と考える人もいるだろう。だが問題はそんなに簡単なものではない。現代は「ミニマリズム」という、本当に必要最低限のものしか置かずに生活するという生活スタイルが流行の兆しを見せており、沢山の若者たちがミニマリズムに挑戦している。その結果、極限まで日常に必要か、必要でないかを切り捨てる術を身に着けている若者が増えているのだ。今は貧困によって、経済が停滞していて贅沢品に手を伸ばせないという人間も多いだろう。しかし、その貧困に慣れてしまえば生活に贅沢品は一切必要でなくなる。昔のように雇用条件が右肩上がりに上がって行っても、給料がどんどん増えていっても一度必要でなくなったものをわざわざ買おうとする人間はいない。結果的に今貧困によって若者がどんどん極限まで断捨離を進めているということが、一つのモノを消してしまうということに繋がる可能性があるのだ。
いずれ結婚も贅沢に?
そして、将来に不安を抱えているからこそ切り捨ててしまうものもある。それが結婚だ。少子化が叫ばれている現在、なぜ結婚できないかというと、生活に必要でないうえに、将来が不安な人間にとって結婚というのは危ない賭けでしかない。もし結婚して共働きをするとしても、万が一子供が生まれてしまえば生活が破たんする、と考えている若者も多いようだ。終身雇用も、確実な昇給も夢物語である若者にとっては、結婚など夢のまた夢という状況になっている。このまま若者の結婚離れが進めば、どんどん結婚年齢が上がっていき、ますます少子化に拍車がかかるのは間違いない。そしていつの日か、結婚すらも一部の成功した人間、もしくはお金持ちの道楽として認識される日が来るかもしれない。
結局、今の貧困に慣れてしまうという生活は恐ろしい未来を引き起こす。それらをしっかりと阻止するためには、今の社会が甘えている「使い捨てられる若者」という状況を変えるしかないのだ。若者たちから夢を奪い、子供のころから将来のことを現実的に考えなければならないという今の状況を変えない限り、最悪の未来はすぐそこまで迫っているのだ。
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