自営業者は会社員や公務員と違って、公的年金の2階部分であり、なおかつ強制加入である厚生年金には加入できません。
その代わりになるのが国民年金基金ですが、こちらは任意加入の年金であるため、国民年金基金に入っていない自営業者も少なくありません。しかし、国民年金以外に何の備えもないまま老後に突入するのは大変危険です。自営業者の方には、一度は加入を検討することをおすすめします。
国民年金基金には終身年金と確定年金が在る
公的年金の1階部分である国民年金は原則として、終身年金しかありません。終身年金とは、本人が死亡する限り年金が貰える仕組みです。
一方、国民年金基金は終身年金と確定年金(有期で年金がもらえる)があります。さらに終身年金と確定年金にも幾つか種類があります。具体的な給付パターンは以下のとおりです。
- 終身年金A型・・・65歳支給開始(15年保証付)
- 終身年金B型・・・65歳支給開始(保証期間なし)
- 確定年金I型・・・65歳~80歳支給(15年保証付)
- 確定年金Ⅱ型・・・65歳~75歳支給(10年保証付)
- 確定年金Ⅲ型・・・60歳~75歳支給(15年保証付)
- 確定年金Ⅳ型・・・60歳~70歳支給(10年保証付)
- 確定年金Ⅴ型・・・60歳~65歳支給(5年保証付)
なお、掛け金には口数があり、最初の1口目は必ず終身年金を選ばなければなりません。また、必ず終身年金による受取額が確定年金による受取額を上回るように設定しなければいけません。
また、給付パターンによっては保証がついてくることがあります。これは本人が保証期間中に亡くなってしまった場合に、遺族が一時金を受け取れる仕組みです。例えば終身年金A型の場合、15年の保証がついてきます。ただし、その場合は毎月の掛金も高くなります。
国民年金基金には地域型と職能型がある
国民年金基金には、地域型と職能型があります。地域型は各都道府県ごとに47、職能型は職業ごとに25の基金がそれぞれ存在しています。
職能型には歯科医師国民年金基金、漁業者国民年金基金などがあります。当然、職能型に入る場合は、その職業に従事していなければなりません。途中で転職・退職した場合は、地域型に特別加入するか、基金を脱会するかします。
一方、地域型はその都道府県内の住民しか入れません。住所を変更した場合は、手続きをすれば転居先の基金に加入できます。
なお、地域型と職能型、どちらを選んでも、掛け金に相違はありません。選べる立場にある人は、将来の引っ越しや転職の可能性などを考えて決めてください。
国民年金基金は積立方式
年金には賦課方式と積立方式があります。賦課方式とは、現役世代が高齢者世代のために保険料を支払うという仕組みです。国民年金はこちらを採用しています。
一方、積立方式とは、年金の原資を自ら保険料として支払って、あとで年金をもらうというものです。国民年金基金はこちらを採用しています。積立方式のいいところは、世代間ごとの不公平が少なくなることです。
掛金は確定拠出年金と併せて6万8000円まで
国民年金基金には掛け金の上限があり、原則として1ヶ月に付き6万8000円まで掛けることが可能です。ただし、個人型確定拠出年金にも別途加入している場合は、両者を合算して1ヶ月で6万8000円までとなります。例えば、すでに個人型確定拠出年金で掛け金を月額4万円払っている場合、国民年金基金に掛けられる金額は2万8000円までとなります。
国民年金基金、確定拠出年金ともに、あとで掛金を変更することは可能です。ただし、掛け金を0にすることはできません。つまり途中の脱退はどちらも原則不可能なのです。
国民年金基金は物価スライド方式ではないため、インフレに弱い
確定拠出年金に関する話が出てきたので、ここで両者の違いを比較してみましょう。
両者を比較して場合、国民年金基金の最大のデメリットは物価スライド方式ではないことです。物価スライド方式とは、将来物価が上昇/下落した場合にその上昇/下落率に応じてもらえる年金が増える/減ることです。国民年金基金は利回りが最初に確定しているため、その後物価が上がろうが下がろうが、将来もらえる年金額は変わりません。
仮に現役時代に物価が急激に上がってしまった場合、実質的な受取額は少なくなってしまいます。インフレに弱いわけですねもちろん、物価が下がれば実質的な受取額は増えるのですが、物価は長期的には上がるものなので余り期待はできません。
なお、現時点での国民年金基金の確定利回りは1.5%ですが、今後変わる可能性はあります。
一方、確定拠出年金は最初に利回りが確定せず、運用実績に応じて将来もらえる年金額が変化します。一般的に物価が上がれば運用実績も上がるはずなので、実質的には物価スライド方式であるといえます。
ただし、逆に考えれば物価が下がった場合は運用実績も下がってしまい、最悪の場合元本割れする可能性もあります。運用に自身がなく、利率を確定させたいならば国民年金基金、リスクを負ってでも増やしたい場合は確定拠出年金、といったところでしょうか。
国民年金基金は自分で運用方法を決められない
国民年金基金は、国民年金基金連合会が運用します。運用の方針も彼らが決めてくれるため、加入者はただ掛け金を支払うだけでOKです。
一方、確定拠出年金の場合は運用方針を自分で決めなければなりません。株式中心にするか、債券中心にするか、あるいは定期預金などの安全資産中心にするかなどを、全て自分の意思と責任で決めなければならないのです。
一見他人が運用してくれる国民年金基金のほうがメリットが多いように見えますが、一概にそうとも言えません。国民年金基金連合会が運用に失敗した場合、利回りの引き下げや掛金の増額が行われるかもしれないからです。
国民年金基金には信用リスクがある
信用リスクとは簡単に言えば、破綻や年金減額などのリスクのことです。上記の通り、国民年金基金には信用リスクがあります。リーマンショックの余波が残っていた2011年度の段階で、国民年金基金の積立不足(年金資産が給付に必要な原資を下回る状態)は約1兆4000億円ほどでした。
その後の景気回復で2014年度には積立不足は約5200億億円まで減りましたが、依然として解消はしていません。これは国民年金基金の大きなデメリットと言えます。
一方、確定拠出年金は個人で掛金を運用し、その結果に応じて年金を受け取るものなので、信用リスクはありません。仮に証券会社や資産を預かる信託銀行が破綻した場合でも、資産は保全されます。
国民年金基金と確定拠出年金は税制で優遇される
最後に、国民年金基金と確定拠出年金に共通するメリットも見ていきましょう。一番のメリットは、税制上の優遇を受けられることです。まず、両者の掛け金は全額所得控除になります。
所得控除とは、所得税や住民税を計算する際の課税所得を減らせる仕組みのことです。所得税と住民税はどちらも「課税所得×税率」で計算されるため、課税所得が減るとその分税金も安くなるのです。
例えば、課税所得500万円の人が毎月5万円掛け金を払っている場合、年間掛け金は60万円となります。課税所得が500万円の人の所得税率+住民税率は約33%なので、60万円×33%=20万円ほどの節税が可能になります。仮にこれを30年間続ければ、600万円の節税になります。
一方、民間企業の私的年金の掛け金は殆どの場合全額控除とはなりません。
また、国民年金基金や確定拠出年金は受け取り時にも税制の優遇が受けられ、公的年金等控除が受けられるため大幅に税金が安くなります。
一方、私的年金は公的年金ではないため公的年金等控除は受けられません。つまり、国民年金基金や確定拠出年金は、支払い、受け取りの両方で私的年金よりも優れているのです。
また、国民年金基金と確定拠出年金は、どちらも支給年齢引き下げの予定がありません。国民年金は将来70歳まで引き下げられる可能性がありますが、こちらはその点問題ありません。
私的年金に入るくらいならば国民年金基金に入ろう
国民年金基金にはインフレ耐性の無さや信用リスクなどのデメリットもありますが、それでも少なくとも私的年金よりは利回り、税制面どちらも有利に設計されています。私的年金に入るよりは、国民年金に入ることをおすすめします。
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