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ニュース番組でも度々耳にする用になった「アベノミクス」という単語。しかし、言葉を知っていても肝心の中身を知らなくては意味がありません。アベノミクスがどんな経済政策なのかを知れば毎日のニュースがより分かるだけでなく、経済の動向も少しだけ予測できるようになります。もしかしたら、投資で勝つきっかけになるかもしれません。

今回は記事が少し長くなりそうなので、前編と後編に分けたいと思います。前編(この記事)はアベノミクスの必要性、後編はアベノミクスの中身です。

アベノミクスは第2次安倍内閣の経済政策

アベノミクスは2012年12月26日に発足した第2次安倍内閣の目玉である経済政策の一つです。安倍首相の安倍と、経済を意味するエコノミクスを併せた造語です。過去にはアメリカのレーガン大統領がレーガノミクスと呼ばれる経済政策を行っています。

アベノミクスの目的はデフレからの脱出と経済成長です。

デフレと低成長は何が問題なのか?

アベノミクスの評価はまちまちですが、デフレからの脱出と経済成長という目的自体に異を唱える人は殆どいません。では、デフレと低成長は一体何故いけないのでしょうか。

デフレとは簡単に言えば物価が下がり、なおかつ個人や企業の所得も下がることです。対義語はインフレで、こちらは物価が上がり、なおかつ個人や企業の所得が上がることです。物価が3%下がって賃金も3%下がれば実質的な購買力は変わらず、また物価が3%上がって賃金が3%上がればやはり購買力は変わらないのだからどっちでもいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、この考え方は正しくありません。

実際、多くの経済学者は緩やかなインフレが最も健全なあり方であると考えています(どうやって緩やかなインフレを招くかについては様々な議論があります)。デフレは、借金のかさが大きくなり、格差が増大するという欠点があるためです。

物価が下がると貯金の価値は増し、ローンの負担も増える

デフレが発生すると物価が下がりますが、それまでためておいたお金は減りません。お金の量が変わらないまま物価が下がるのですから、実質的な購買力は上がります。

一方、デフレが発生して個人や企業の所得が下がっても、ローンの残額は減りません。ローンの残額が減らないまま所得が減るのですから、借金の負担も大きくなります。つまり、デフレ下では貯金を持っている人が得をして、借金をしている人は損するわけです。つまり、格差が拡大するわけです。

デフレ傾向が続いている場合、個人や企業は借金をしたがらなくなります。今後もデフレが続き、借金の負担が大きくなるのを嫌うためです。個人が借金をしなければ車や住宅は売れませんし、企業が借金をしなければ設備投資が進みません。また、貯金の価値が上がり、皆が貯金に励むようになるので、投資も生まれません。必然的に企業の所得は低下し、それが個人の所得の低下を招き、ますますデフレを加速させることになります。

インフレが続けば借金の負担は小さくなるため、個人も企業も借金に対して積極的になります。すると車や住宅が売れるようになり、設備投資が進むので生産性が上がり、企業収益が上がって賃金も上昇します。むろん、実際の経済はこれほど単純なものではありませんが、デフレよりも緩やかなインフレの方がメリットが多いことはまず間違いありません。

デフレは雇用を悪化させる

正社員の給料は、実はデフレ下においてもあまり下がりません。労働者側の抵抗を受けるからです。言いかえれば、企業は正社員に対して高い給料を払っているわけです。一方、非正規社員の給料は景気に応じて弾力的に変化するので、デフレになると下がります。

このような環境下では、企業は正社員を減らし、非正規社員を増やすことを選びます。そちらのほうが安いからです。正社員と非正規社員の格差は拡大し、運よく正社員の座を手に入れられた人もリストラの恐怖に怯えることになります。

一方、インフレになっても正社員の給料はすぐには上がりません。経営者が反対するからです。一方で非正規社員の給料は上がるため、企業は正社員を増やして非正規社員を減らすことを選びます。そちらのほうが安いからです。正社員が増える一方で、非正規の給料も上がり、雇用環境が安定します。

低成長は何が問題なのか?

デフレの話はこれくらいにして、ここからは低成長の話を勧めていきます。日本で1年に生産された価値を国内総生産(GDP)と言います。GDPの大きさはそのまま一国の経済力の大きさを表します。

今年のGDPから去年のGDPを引き、それを去年のGDPで割ったものが経済成長率です。例えば、去年のGDPが100兆円で、今年のGDPが101兆円だった場合、GDP成長率(101兆円-100兆円)÷100兆円=1%となります。去年のGDPのほうが大きい場合、経済成長率はマイナスとなります。

経済成長率には名目経済成長率と実質経済成長率があります。名目経済成長率は物価変動を考慮しない経済成長率で、実質経済成長率は物価変動を考慮した経済成長率です。

例えば、1年間の間にGDPが100兆円から101兆円に増えた場合、名目経済成長率は1%です。しかし、去年と比べて今年の物価が0.1%上がっている場合、実質経済成長率は0.9%になります。通常は実質経済成長率が重要な指針となります。

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日本と世界各国の実質経済成長率はどれくらい?

以下の表は、日本、米国、イギリス、フランス、中国、韓国、インド、ロシアの2010年以降の実質経済成長率です。

 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
 日本 4.71 -0.45 1.74 1.36 -0.03 0.54 0.51
 米国 2.53 1.60 2.22 1.68 2.37 2.60 1.58
 イギリス 1.92 1.51 1.31 1.91 3.07 2.25 1.84
 フランス 1.97 2.08 0.18 0.58 0.64 1.27 1.33
 中国 10.61 9.50 7.90 7.80 7.30 6.90 6.59
 韓国 6.50 3.68 2.29 2.90 3.34 2.61 2.72
 インド 10.26 6.64 5.62 6.64 7.24 7.56 7.62
 ロシア 4.50 4.05 3.52 1.28 0.71 -3.73  -0.76

全体的に見て、先進国では低く、新興国では高くなっていますね。これは何故かと言うと、簡単に言えば新興国のほうが伸びしろが大きいからです。日本も1960年代には経済成長率が10%を超えたことが複数回あります。

しかし、他の先進国と比べてみても、日本の経済成長率は低くなっています。2015年の経済成長率0.54は世界160位で、G7参加国の中では最低となっています。

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経済成長はなぜ必要なのか

経済成長とは簡単にいえば実質GDPが増えることですが、実質GDPが増えるとどんないいことがあるのでしょうか。

実質GDPは国内で生産された価値(値段)の総和であると同時に、所得の総和でもあります。誰かが値段のあるものを買えば、その分のお金は誰かの所得になるからです。実質GDPの上昇は、そのまま所得の上昇とも言えるわけです(人口が変わらなければ、ですが)。

と、こういうことをいうと、お金なんかは重要じゃない、大事なのは精神的な豊かさだ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、行動経済学という学問の重鎮であるダニエル・カーネマン教授、所得と人生の幸福度は、年間所得が7万5000ドルになるぐらいまでは比例する(その後は所得が増えても幸福度は横ばいのまま)ことを調査で明らかにしています。

そして殆どのアメリカ人の所得は7万5000ドル以下ですから、すなわちほぼすべてのアメリカ人の所得と幸福度は比例することになります。

これはアメリカの場合ですが、日本でもおそらく同じようになるでしょう。お金があればとりあえず雨風がしのげる家に住めて、飢えの恐怖から解放されるのは米国も日本も一緒です。

ここまで読んでもなお、お金がなくても精神的な満足は得られる、と思われた方は、最低限必要な生活費以外の所得を私に全部贈与してほしいものです。あなたは贈与をしても満足を得られ、私はお金をもらったことで満足が得られるのですからWin-Winの関係のはずです。貯蓄に回す、ってのはダメですよ。貯蓄は将来に消費を先延ばしするだけの行為ですからね。

話が横道にそれてしまいましたが、要するに多くの人は所得が増えれば満足するんだから、経済成長は多くの人に必要である、ということです。それでもお金がいらない人がお金を放棄するのは勝手ですが、お金が欲しい人がそれを強要される筋合いはないわけで、経済政策の必要性は揺らぎません。

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金融・ 経済関連の記事をメインとしたフリーライターをしています。様々なジャンルの本を読み漁っていますので、 自分の記事が投資家の皆さんの利益となるように情報発信に努めていきます。