フランスの大統領選は大方の予想通りマクロン氏の勝利ということで、市場が恐れていたリスクがかなり後退したこともあり、大きな材料のなくなった金融相場はなぜか強い楽観ムードに包まれています。
米国の株式の恐怖指数を示しているVIX指数も10を割り込むほどでなんと1993年以来の総楽観相場が展開し始めています。
しかしこれまでこのVIX指数が大きく下落したあとには残念ながらろくなことが起きておらず、過去を知る市場関係者からは注意を喚起する発言が飛び交い始めています。
今回はこのVIX指数についてみていきながら今月(2017年5月)後半からの相場が果たしてどうなっていくのかについて考えてみたいと思います。
そもそもVIX指数とは何か?
VIXとは金融市場ではよく聞く言葉ですが、これはボラティリティ・インデックス(Volatility Index)の略称で、米国のCBOE(シカゴ・オプション取引所)が、アメリカの主要株価指数の一つであるS&P500を対象とするオプション取引の値動きを元に算出・公表している指数のことをいいます。
このVIX指数は将来の投資家心理を示す数値として利用されているもので、一般的にVIX指数の数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされているわけです。
このVIX指数は別名・恐怖指数とも呼ばれており、株価のボラティリティが高くなるとこのVIX指数の数値も高くなります。
ボラティリティとは株価の変動率ですから上昇と下落を激しく繰り返す銘柄が増えれば当然ボラティリティが高くなり、VIX指数は上昇することになるというわけです。
ある意味ではVIX指数が低いということはリスクが少ないとも読み取れますが、それも限度問題であり、40を過ぎれば売られすぎですが、逆に0を下回れば安易に相場に安心しすぎの状況になっているといえるのです。
過去の低VIX指数の状況
※VIXチャート
引用元: Bloomberg
今月8日のこのVIX指数はなんとざら場では9.67でその後9.77で引け、1993年以来の低い水準をつけることとなりました。
市場関係者の間では、米金利見通しの不透明感が払拭されつつあることや地政学的リスク増大に対する警戒感が低下していることがVIX指数の低下につながっているのではないかとの楽観的な見方も広がっていますが、実はこのVIX指数は低くなりすぎると過去にはそのあとろくなことがおきていないことでも有名であり、特に低い数字が出てから比較的すぐに株価が暴落するような事態が起きていることがなんとも気になるところです。
※低VIX指数が示現した時期
93年の場合は翌年に米国とメキシコの金融危機が起きていますし、2006年12月に9.39をつけたときも翌年すぐにサブプライムローンの問題が起きています。
さらに2007年2月、既にサブプライムの問題が顕在化してつけた9.7のあとにはリーマンショックがおき、この年の10月このVIX指数は史上最高値の89.53をつけることとなるわけです。
このようになぜか10を割り込み始めるとその後大きな相場の変動が起きることが多いことから市場関係者の間では不気味な兆候として囁かれ始めているのです。
またこの数字が10を切っても翌日株価が暴落するというわけではなく、ほどなくしてとんでもない事態になるのも過去3回では共通しており、このタイミングに低VIXが登場するということは何かを示唆しようとしているのかも知れないともとれることになります。
市場はなぜここまで楽観視するのかが問題
それではどうしてここまで市場は総楽観の状況に陥っているのでしょうか?
たしかに北朝鮮の暴発問題はまだ残されていますが、目先のリスクがほぼ解消されて大きなテーマにならないことや米国経済が比較的安定的な状況にあることなどで、すっかり相場が過信し始めている可能性が考えられます。
NYダウもNASDAQも高値の警戒感はあるもののジリ高が継続しているうちは通常大きな下げにはならないもので、とくに米国の株式市場は6月のFOMCで都合4回目にあたる利上げが行われることが織り込まれてもまったく株価が下がらないという特異な状況になってきている点が非常に気になります。
これまでの米国の利上げでいいますと合計3回までの追加利上げではほとんど市場に影響がでないものの、4回目を超え始めた途端に企業業績に顕著に影響がでたり消費にかげりが出たりして株価を圧迫し始めることから、決してプラスには働かないはずで、これをまったく織り込んでいないとなると、実際に金利が上がってから騒ぎが大きくなることも十分に考えられるわけです。
そもそもサブプライムローンの問題が発覚するまでは米国の金融市場も指標的に絶好調であったことを考えますと、表面的に調子がよく見えることと、内実とは一切関係ないのが現実であり、今の妙にリスクを意識しない相場の動きは非常に嫌らしい状況ともいえるのです。
債券市場のほうは、利上げを意識して金利が短期から長期まで上がり始めており、こちらも株価には本来影響があるはずなのですが、今のところ株式市場はほとんどこの債券の状況を意識しているようには見えません。
だいたい、市場全体がそろそろ下落ではないかと注意しながら相場が継続しているときというのは暴落は起きないものですが、みなが上方向を見て買い始めたりするとおしまいは近いことになります。
株式相場はまだ走り始めていないが一部の為替はやりすぎ
現状でいいますと、株式相場は暴落の前兆として価格が上昇して走り始めるとかなり危ないことになりますが、そこまでには至っていないところを見ると、まだ下落には時間的な猶予が残されていることがわかります。
ただ、為替のほうではクロス円、とくにユーロ円が驚くほど価格を上昇させる局面がでてきており、若干やりすぎ感が目立ち始めていますし、ポンド円も同様で相当短期間に大きく上昇しているところが気になります。
※ユーロ円1時間足
※ポンド円1時間足
ドル円はドルの上昇が顕著になる中でクロス円が頭を抑えるような動きとなっていることから114円台にかなり急ピッチに上昇はしてきたものの、ここからどうなるのかはいまひとつよくわからない状況です。
上述の米国10年債ものの利回り推移が上昇傾向にあることから考えれば政治的に上値を抑えられない限りドル円も6月のFOMCまではまだ上昇軌道にあるものと思われます。
ただ、こうした動きも6月に入りますと多少状況が変化する可能性が高まりますので、できれば5月中にできるだけ利益を上げて、ポジションは長く持ち越さずに利益は短期で積み上げていくことを心がける必要がありそうです。
実際5月8日からの5日間のドル円の動きを見ていますと、投機筋に加え、機関投資家が休み明けから積極的に買いを入れてきたのかドル円は112円台から113円台を一気に飛び越えて114円台初頭まで上昇しましたが、週の中で二度ほど大幅下落をしてはまた基に戻るといったロングもショートも切らされるような展開をしていますので、チャートだけから見ているほど簡単な相場にはなっていないことがわかります。
上昇することを見極められても、確実に利益がでたときにはリカクして確保しませんと何度も利益喪失を繰り返しかねない状況ですから、とにかく欲張らずに目先の実現益をしっかり確保する姿勢が大切になりそうです。
図5ドル円1時間足ボリンジャーバンド
相場の状況を俯瞰的に眺めていますと、このままの良好な状況で秋まで進んでいくとはとても思えないのが正直なところで、6月15日、日本時間では16日の午前3時のFOMCの結果発表で利上げが正式に発表されてからは相場展開が大きく変調をきたすことも十分に視野に入れた売買を行っていきたいところです。
足元の総楽観市場はこうしたリスクを我々に教えてくれようとしているのかもしれません。
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