住宅ローンの総返済額を減らす方法は大きく2つに分類することができます。一つは現時点の借入先の債務を金利が低いところから借りたお金で返し、残った方の債務を返済していく「借り換え」、もう一つが毎月の支払いに更に上乗せして払うことによって元本を減らし、将来の利息を減らす「繰上返済」です。

どちらも行わないよりは行ったほうがいいことに変わりはありませんが、仮に両者を選べる立場になったらどちらを選ぶのが正解なのでしょうか。

借り換えによるメリットは数百万円になる場合もある

まずはわかりやすい借り換えに付いて考えていきましょう。住宅ローンの金利は金融機関によってまちまちです。仮に今よりも低い金利で借りることができれば、総支払額を減らすことができます。

住宅ローンの金利なんてどこもだいたい同じなんじゃないの?と思われるかもしれませんが、住宅ローンは通常のカードローンなどと比べて総借入額が大きくなるため、金利が少し下がるだけでも総支払額を大きく減らすことができます。

例えば、元本が3000万円、返済期間が30年、固定金利の場合、金利が2.0%だと毎月の返済額は11万885円、総支払額は3991万8769円になります。一方、金利が1.0%だと毎月の返済額は9万6491円、総返済額は3473万6908円になります。

金利が1.0%下がるだけで、総返済額を500万円以上も差減らせるのです。したがって、現時点で割りと高い金利のところから借りている場合は、より安い金利のところで住宅ローンの借り換えをすれば返済がかなりと楽になる可能性が高いです。

現状よりも低い金利のところで借り換えなければ意味がない

また、言うまでもないことだと思われるかもしれませんが、借り換えは現時点よりも金利が低いところで行わなければ意味がありません。低金利の変動金利型を選んだ場合、当初は毎月の返済額がかなり少なくなったものの、その後の市場の変動による金利上昇の影響でトータルでは損をしてしまうことも十分に考えられます。借り換えの効果をより確実に得たいのならば、固定金利のものを選んだほうがいいでしょう。

借り換えには数十万円の費用がかかる

住宅ローンの借り換えには費用がかかります。借り換えの三大費用が保証料手数料団体信用生命保険料です。それ以外にもいくつか諸費用がかかります。金利負担が減っても、諸費用がそれ以上に増えてしまっては損をするので気をつけましょう。

保証料は住宅ローンの返済が滞った時に、信用保証会社に一時的に立て替えてもらう権利を得るための料金です。ただし、これはあくまで立て替えサービスであって、利用した場合は信用保証会社に立て替えてもらった分を支払わなければならないため注意が必要です。どうせ返済義務がなくならない以上は入る意味がないサービスとも言えるため、最近は保証料を取らない金融機関も増えてきています。

手数料は金融機関に支払う事務手続きの手数料です。都市銀行の場合は融資額にかかわらず数万円程度担っていることが多いですが、ネット銀行だと融資額の1.08%と言った感じで多額の手数料を取ることも多いので注意が必要です。

団体信用生命保険料は、住宅ローンを借りた本人が死亡したり、後遺障害が残って働けなくなってしまった場合などに、住宅ローンの残債を相殺できるだけの保険金が下りるローンです。民間の金融機関の場合は保険料が予め金利に組み込まれていますが、フラット35の場合は別途加入が必要です。加入は任意ですが、万が一の際に家族に多額に住宅ローンが残ったら困るため、殆どの人が加入しています。

保険料は年に1回、その時点での残債×0.358%を支払います。仮に残債が3000万円、30年ローン、三大疾病保証あり、金利1.0%の場合、総支払額は約260万円となります。

その他の諸費用は印紙税、登録免許税、司法書士に支払う報酬などで、合計で10万円程度です。

特にフラット35で借り換える場合は、団体信用生命保険料が高くなりがちなので注意が必要です。仮に利息の支払いが300万円減っても、諸経費が400万円かかってしまっては意味がありません。必ず事前に減らせる総支払額と諸経費を比較しましょう。

借り換えは早めに行ったほうが得

借り換えの初期費用が十分に確保できた場合は、その時点で一刻も早く実行に移すべきです。借り換えは基本的に早期に行うほど支払総額の圧縮幅が大きくなるからです。

実際にシミュレーションしてみましょう。借り換え前の金利は2.0%、借り換え後の金利は1.0%と仮定します。仮にローン残債が2000万円、返済期間が20年の時点で借り換えを行った場合、諸経費を含めた借り換えのメリットは約160万円になります。

一方、ローン残債が1500万円、返済期間が15年の場合、借り換えのメリットは約74万円です。ローン残債が1000万円、返済期間が10年の場合、借り換えメリットは約19万円です。

借り換えが遅れるほど将来発生する子息の圧縮幅が小さくなってしまうため、総返済額の減少幅が小さくなってしまうのです。借り換えを行う場合は、出来る限り早めに行いましょう。

繰上返済は全額元金に充てられるため、効率的

ここからは繰上返済の話です。繰上返済とは、毎月の返済とは別に追加で返済を行うことです。将来の支払いを繰り上げて行うので繰上返済と呼ばれています。

繰上返済の良いところは、返済した金額が全額元金に充当されることです。毎月の返済はすべてが元金の返済に当てられているわけではなく、一部が利息の支払いに当てられているため、なかなか元本が減っていきませんが、繰上返済ならばより効果的に元金を減らせます。

元金が減れば将来支払う利息も減るため、総支払額が減らせる、という仕組みになっています。

繰上返済には期間短縮型と返済額軽減型がある

繰上返済は、返済期間を減らせる期間短縮型と、その後の毎月の返済額を減らせる返済額軽減型があります。

例えば、期間短縮型を選んだ場合は、残りの住宅ローン支払期間を15年から14年にしたり、10年から7年にしたりできるわけです。ただし、繰上返済前後で毎月の返済額は変わりません。

一方、返済額軽減型を選んだ場合は、それ以降の毎月の返済額を10万円から9万円にしたり、13万円から11万円にしたりすることができます。ただし、返済期間は変わりません。

期間短縮型は毎月の返済額を減らすものではないため支払いが楽になるわけではありませんが、総支払額を大きく減らすことができ、返済も早く終わるため老後が楽になります。

例えば、3000万円の住宅ローンを金利1.0%、返済期間30年で組んだ場合、繰上返済を一度もしなければ返済総額は約3474万円、返済期間は30年となります。

一方、返済から5年目と10年目でそれぞれ300万円ずつ期間短縮型の繰上返済をした場合、返済総額は約3337万円、返済期間は23年7ヶ月となります。

2度の繰上返済によって返済総額は137万円減り、返済期間も6年5ヶ月ほど短くなりました。

一方、上記の条件で返済額軽減型を選んだ場合、総返済額は約3370万円になり、返済総額は74万円しか減らないことになります。総返済額を大きく減らしたいのならば、期間短縮型のほうが有利、ということになります。

実際の負担感は期間短縮型でも返済額軽減型でも変わらない?

ただし、これは賃金上昇率を無視した計算です。将来インフレが発生し、賃金の額面が増えれば相対的に返済期間後半の負担感は少なくなるため、実質的な負担感はどちらを選んでも余り変わらない事が多いです。

どちらを選んでも実質的な負担感が変わらないので、引退後のリスクを大きく見るならば期間短縮型、現役時代のリスクを大きく見るのならば返済額軽減型、と言った感じで使い分けるといいでしょう。

なお、繰上返済はどちらを選んでも、一時的に手持ちの資金(ストック)が急激に減ります。過剰に期間短縮型の繰上返済をしてしまうと、手元の資金がなくなり急な出費に対応できず、住宅ローンより遥かに金利が高いカードローンやキャッシングを利用する羽目になってしまいます。繰上返済は生活資金ではなく、余剰資金で行いましょう。

返済期間が短くなると住宅ローン控除が受けられなくなることがある

住宅ローン控除は、その年の年末時点での住宅ローン残高の1%が所得税から控除される制度です。所得税が大きく減る有益な制度ですが、総返済期間が10年を下回ってしまうと利用できないというデメリットもあります。

期間短縮型を選び、返済期間が短くなると、住宅ローン控除が受けられなくなってしまうこともあるので注意しましょう。

繰上返済には手数料がかかることがある

金融機関によっては、繰上返済に手数料がかかることがあります。多くの金融機関では一部繰上返済は無料、全額繰上返済は5万4000円としている場合が多いです。ただし、フラット35の場合は手数料は無料です。

また、金融機関によっては最低返済額が設定されていることがあります。例えば、イオン銀行の場合、イオン銀行ダイレクトでの申込みならば1万円、店頭での申込みならば50万円が最低返済額になっています。

フラット35の場合は100万円です。最低返済額が高いとなかなか繰上返済ができないので、なるべく最低返済額が低いところを選びましょう。

借り換えと繰上返済、どちらがお得?

借り換えと繰上返済、どちらがお得かは一概には言えません。その人の置かれた状況、借りているローンの残額や金利によって答えは変わってくるからです。現時点での条件がわかっている場合は、以下のサイトでシミュレーションしてみてください。

住宅ローン – お借換試算 住信SBIネット銀行
繰上返済シミュレーション – 日本住宅ローン

ただし、これでシミュレーションして減らせる返済額が大きい方が絶対に正解であるとは限りません。シミュレーションだけでは、数字に出ない部分は評価できないからです。

例えば、借り換えと繰上返済では、借り換えのほうが圧倒的に手間がかかります。もう一度住宅ローンを組まなければいけないのですから、当然といえば当然です。一方、繰上返済は殆どの銀行はネットで完結するのでとっても楽です。この点においては、借り換えに優位性があります。

一方、繰上返済をすると、その返済した金額だけ手持ちの資金が減ります。例えば、500万円を繰り上げ返済する場合は、万が一の際に使えるお金が500万円減ってしまうわけです。

一方、借り換えの場合は諸経費は自分の持ち出しとなりますが、その金額はせいぜい60万円~70万円程度なので、手持ちの資金がいきなり数百万も少なくなってしまうことはありません。この点においては、繰上返済に優位性があります。

こうした数字に出ない点までしっかりと考慮して、より自分にとって有利な選択をするように心がけましょう。

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金融・ 経済関連の記事をメインとしたフリーライターをしています。様々なジャンルの本を読み漁っていますので、 自分の記事が投資家の皆さんの利益となるように情報発信に努めていきます。