いよいよ2017年、新年度相場に突入ということになりますが、為替相場のほうはどうも明確な方向感が見えず、新年度といってもどう売買していくか試行錯誤を繰り返さざるを得ない状況になりつつあります。
そこで足もとで考えられる新年度相場に影響を与える材料をまとめてみました。
ご覧いただきますとわかりますが、不確定な要因満載の4月相場ということができそうで、依然として注意しながらの取引を進めることが必要になりそうです。
1.フランス大統領選挙
4月もっとも市場が注目しているのはフランスの大統領選挙(4月23日(第1回投票))です。
現状ではルペン候補はかならずしも優勢な状況にはなっていないので、大きな変化が起こらない可能性も高まっていますが、昨年のBREXITや米国大統領選挙の事前予想を考えますと、いかにこうした調査による見通しが甘くて実態とあっていないかとを痛感させられているだけに、結果がでるまでは安心できない状況です。
英国のEU離脱交渉もとうとうスタートしましたが、フランスがEUから離脱などということになればEU自体の存続が危ぶまれるだけに、この結果は為替にも大きな影響を与えることになりそうです。
仮にルペン候補が大統領になったとしてもフランスは英国に比べる簡単には離脱できない仕組みが整っています。
そのため大統領が替わったから即EU離脱には結びつかないものと思われます。
しかし、EUというコンセプトやユーロという共通通貨の構想はフランスが作り出したものですから、当のフランスがEU離脱となれば、根幹の枠組みを崩すことに繋がるのは間違いなく、この選挙結果はEU全体にとって相当重要なものになることは言うまでもありません。
2.トランプ版貿易円滑化及び権利行使に関する法律制定の可能性
2015年のオバマ政権時代に貿易円滑化及び権利行使に関する法律というものが制定されたことがありますが、トランプ大統領も同様の法律を制定するのではないかとの見方が強まっています。
内容はオバマ政権のものとはまったく異なり、保護主義的な事柄を明確にしたかなり貿易相手国にとってよろしくない内容になりそうで、4月に開催される米中首脳会談でもそれに沿った話しあいがされるであろうことから、米国の通商政策がらみで為替相場に影響を与えるものがかなり多く登場しそうな状況です。
減税の大きな原資として期待されたオバマケアの廃案が議会でまったくうまく行かなかったことから、通商関連での歳入増加はトランプにとって、より重要な案件となりつつありますから、この領域で厳しい内容が登場することは覚悟しておかなくてはならず、とくに為替のレートに関して米国が周辺国にどのような内容をつきつめてくるかにも関心が集まりそうです。
当然日本にも大きな影響がでるものだけにトランプの発言次第ではドル円が円高方向にいきなり巻き戻されるリスクも考えておく必要がありそうです。
3.ペンス副大統領とロス商務長官の来日
4月後半には日米通商対話が日本で開催され、ペンス副大統領に加え通商政策ではかなりの強硬派と見られるウィルバーロス長官も来日して具体的な日本との通商交渉が開始される予定です。
会議の詳細はもちろん明かされることはないと思われますが、米国サイドが具体的に会見でその一旦を開示するようなことがあれば、こちらもいきなりドル円でドルが売られる要素のなることが考えられ、非常に注意が必要となります。
2月の安倍トランプ会談で国内的にはすべて丸く収まったかのような錯覚を起こしていますが実際の交渉はこれからで、とくに自動車セクターにとってはかなり厳しい条件を突きつけられることが予想され、株価の下落がドル円の下落に繋がるリスクも考えておかなくてはならない状況です。
4.米国の北朝鮮爆撃
ここへきて国内外のメディアで取り上げられはじめているのが米国による北朝鮮の各施設への空爆破壊の可能性です。
3月、エクソンモービルのCEOから国務長官に任命されたティラーソン氏が日本、韓国、中国を歴訪し、どうもこの北朝鮮爆撃について調整に動いたのではないかという憶測が飛び交い始めていますが、4月末まで行われる米韓軍事演習もそれを確実に想定したものだという指摘もあり、米中首脳会談で中国が納得すれば本当に米国が北朝鮮に空爆をしかける可能性がでてきています。
こうなりますと、非常に心配になるのが海を挟んで対岸にいる我々の国の問題で、朝鮮戦争以来これだけ厳しい地政学リスクに直面することはなかっただけに、本当に一戦交えることになったときに国内の株と為替がどのようなリスクオフの動きになるかが危惧されるところです。
本来地政学リスクの当事国の通貨は売られるべきものですが、日本株が売られることになれば連動してドル円も円高に動く可能性は高く、これまでにまったく想定していなかったテールリスクがいきなり示現することになりそうです。
そもそも一方的な空爆で終焉すればそれに越したことはありませんが、米系の軍事評論家によっては北側からの反撃で韓国などにも大打撃が与えられる可能性があるとの見方も広がっていますので、予断をゆるさない状況といえます。
これまで歴代の米国大統領はこうした攻撃のリスクのほうを重視して一切現実化しなかったわけですがトランプ大統領は何をしでかすか判らない部分もあり、非常に注目されるものとなってきています。
5.ECBやBOJの金融緩和巻き戻し
今、世界的な相場の大きな下落をもたらすきっかけになるのではないかとして心配されているのが、日欧の中央銀行による金融緩和の巻き戻しの実行、つまり出口戦略の履行です。
債券の帝王と呼ばれたビルグロスは3月のFOMCの利上げが行われた直後に米国CNBCのテレビに登場し、ECBの資産買い入れや日銀のマイナス~ゼロ金利釘付け政策が引き続き続いていることが膨大な流動性を供給する源となっており、この2つの中央銀行の政策に変化が生じれば世界の金融循環は大きく変わることになり米国の金融市場にも変化が生じると指摘をしています。
彼の見通しでは、ごく近い将来ドラギがテーパリングを本格的にはじめ、BOJも低金利のキャップを外すことになれば債券市場は大混乱に陥ると予測しているわけです。
トランプの政策はまだこれからなので株価は下落しないという見方も
ここまでいろいろ予想される材料を並べてみますと、そのほとんどがドル円を上昇支援するものでないところがなんとも気になりますが、その一方で、まだトランプ政権の政策がすべてご破算になったわけではないことから、米国の株価も4月早々に大きく下げることはないのではないかという若干楽観的な見方も広がっています。
そういう意味ではドル円もユーロドルも比較的幅広いレンジ相場を継続させる可能性は高く、一方的な下げが出るとすればここにご紹介したような決定的な材料が本格的に炸裂したときではないかとも思われます。
いずれにしてもこうしてご紹介してきた材料はどれもかなりリスクの高い問題ですから、ひとつが大きな問題になっただけでも相場をかなり激しく揺るがす原因になりかねません。
ドル円でいえば年中ショートだけもっているのなら別ですが、ロングのポジションはいつ何が起きてもいいように常に適正なレベルにストップロスを置いて、まさかのときの準備をしておくことが重要になります。
今年の相場はトランプ相場などと呼ばれて年初は比較的簡単そうにも思われましたが、実際に3ヶ月経過してみますとかなり上下にぶれる相場状況であり、迂闊にポジションを持つと買っても売ってもやられる動きになっています。
それだけにエントリーポイントはかなり精査して売買していくことが求められそうです。
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