為替市場とは、国際経済社会の根本とも言える舞台です。
世界中で逐一起こる国同士のパワーバランスの変化が、そのまま為替相場に反映されます。
言い換えれば、世界で起こる全ての出来事は為替市場を動かす要因に成り得るという事です。

これらを総称してファンダメンタルと呼びます。ただしファンダメンタルに対して市場がどの様に反応するかは、神のみぞ知るところであり誰にも判りません。

何故なら市場は人間心理の集合体であり、常に気まぐれだからです。
ただしセオリーというものはあります。
もちろん気まぐれなので必ずそのとおりになるものではありませんが、ファンダメンタルのセオリーを知っておくだけでも、FXトレードにおいて頼れる指標を持つ事になります。

経済指標に対する市場の反応とは

相場を動かす一因として、国々が定期的に発表する経済指標というものが在ります。
経済指標とは主に、その国の項目ごとの一定期間中の景況を伝えるイベントです。
中でも市場が一番注目するのが、毎月第一金曜日に発表される米国の雇用統計です。

米国の雇用統計

雇用統計とは、失業率と非農業部門雇用者数の統計から構成されています。
経済指標は事前に市場の結果予想が発表されます。
この予想に対し結果がどうであったかが主に相場の動意となります。
基本的に予想より結果が良ければその国の通貨は買われ、悪ければ売られ、予想通りであれば乏しい反応となるのがセオリーです。

また、予想と結果が乖離している程、市場の反応は大きく、小さければ乏しくなります。
さらに、過去何ヶ月の発表内容に対し、今月の発表内容が逆転した場合などにも市場の反応は大きくなります。

例えば、1月、2月、3月の結果は悪化の一途だったにも関わらず、4月の発表で好転した場合などです。

いわゆる市場は予想外のサプライズに対し敏感に反応するという事です。
逆を返すと結果が良くても、その結果を市場が既に織り込んでいたら相場の値動きは乏しくなります。
こういったところが、相場は生物で気まぐれと言われる所以であり、また雇用統計も含め経済指標とは複数の項目で構成されている事が多いので、判断を一層複雑にさせています。

市場参加者のイベント前の期待と懸念

前述では事前予想と発表された結果の対比によって市場が反応するという事を紹介しましたが、発表前から事前の予想や目論見で市場が反応するケースもあります。
それが顕著に表れるのが政策金利の発表です。

日本では日銀金融政策決定会合、米国ではFOMC、欧州ではECB理事会などそれぞれ呼び方は違いますが、この会議で政策金利を決定します。

こちらは発表時の市場の反応ももちろん大きいですが、上がる、下がるという思惑が事前に市場に蔓延するため、その思惑で相場が動きます。
つまり利上げしそうだという期待感があればその国の通貨は買われやすく、下がるという失望感があれば売られやすくなります。

そして実際の結果の発表時には思惑との対比により市場が反応します。
利下げ思惑で結果が利上げ、利上げ思惑で結果が利下げ、という事はほぼ有り得ませんが、セオリーとしては、利下げ思惑で据え置きであればその国の通貨は買われ、利上げ思惑で据え置きであれば売られます。

ただ市場は悪い結果の方が回避本能が働くため、相場の動きは大きくなる傾向があります。
また政策金利に対する事前の思惑は、発表前の他の経済指標の動向等により変動します。

いわゆる「期待が遠のいた」「失望が和らいだ」という様な事であり、該当国の通貨もそれにより売られたり買われたりします。

時に歴史的なショックを市場にもたらす外的要因

政権交代、恐慌、戦争、天変地異などの突発的な事象です。

政権交代

政権交代といえば記憶に新しいのがトランプ大統領が誕生した米国の大統領選です。
開票時はリアルタイムで放映されていたためその時の為替相場は揺れに揺れ、トランプ氏優勢となるとドルは暴落し、安値圏を推移していました。

トランプ氏優勢となるとドルは暴落し、安値圏を推移基本的に市場は変革を嫌います。
昨今の例で言うと、フランスの与党出身であるマクロン氏が選挙戦で優勢となった時は、ユーロが強い地合いとなった事でも解ります。

トランプ氏の当選が確定した後は米ドルも買われましたが、与党のクリントン氏と対峙する立場にあった彼はいわゆる米国の不穏材料であったという事になります。

経済恐慌

恐慌という言葉自体が経済用語なので今更説明の必要はないかもしれません。
世界中で昔からいくつもありましたが、近年で一番馴染みがあるのがリーマンショックを含む2007年から勃発したサブプライム住宅ローン危機でしょう。

この時は米国でバブルとなっていた証券化された住宅債権の焦げ付きが発端でした。
その証券はリーマンブラザーズをはじめとした世界中の金融機関が保有していたため、世界的な金融危機を誘発させる事となりました。

恐慌は総因として需給のバランスの過度な歪みによって起こります。
歪みが出た市場は急速に収束向かう性質があります。
2007年前半までバブル化していた証券市場化は、この収束により急激に縮小してしまいました。

証券化市場の推移証券化市場の推移言うまでもなくこういった時は市場が逃避に回るため、米ドルなどのリスク資産から円や金などの安全資産にシフトが起こります。

戦争、テロ、天変地異

これらは不測の事態である事が多く、市場にも強烈なインパクトを与えやすいです。

昨今の米国は複数の国交関係に暗雲が立ち込めていますが、もしどこかの国と戦争という事になればその国の状況悪化は無限の可能性を孕む事になります。

そうなれば米ドルは一斉に売られる事となるでしょう。
またそれが途上国という事であれば、国内の困窮による信用不安から過剰なインフレに陥り、その国の通貨自体の存亡に懸念が出てくる可能性もあります。

米国の同時多発テロの時は、不測の事態で市場への衝撃が大きく、米国の株式市場は一時閉鎖しました。
為替市場でも、ドル/円が一気に6円も下落しました。

9.11同時多発テロ時のドル/円の推移

9.11同時多発テロ時のドル/円の推移天変地異は大きな地震やハリケーンなどの自然災害が主ですが、為替市場に影響を与えるとなると相当な大災害です。
東日本大震災の時は、まさに4日間にわたり円高に触れました。

また農作物輸出が主産業であったりすると、強烈なハリケーンなどはその国の財政に打撃を与える可能性もあるので、その影響が長引けば国の信用力低下により、不安定な通貨に成り下がる可能性もあります。

実際のトレードでの対応

まず経済指標の発表時は見送るのが最良かと思われます。
中には指標発表時だけを狙うトレーダーも存在しますが、非常に難儀な手法です。

激しく売り買いが交錯しますので、望むところで約定されないため、高値買い、安値売りとなる可能性があります。

やはり値動きが落ち着いて次の相場の方向性が出てから、参戦するのがよろしいかと思います。
同様に政策金利発表や、その後の総裁や理事長の発言時も見送った方が良いでしょう。

ただ事前の思惑が出ている時には一方的に相場が進む傾向があるので、その流れに乗って参戦すると、容易に利益を取り続ける事も可能となります。

恐慌などの不意をついた経済的事件には、為替に限って言えば急激な円高になりますので、FXトレーダーにとっては空売り(ショート)で絶好の収益機会となります。

しかしその分の反動も大きいので、一定の逆行で損切る設定は必要でしょう。
戦争や天変地異での値動きは、ケースによって全く異なってくると思われるため、一概には言えません。

基本的には円高に進むでしょうが、そのトレンドが続くのか、瞬間的な動きなのかも判りませんし、何より突発的な報道となるでしょうから狙うのは難しいでしょう。

さらにこういった事象は、報道される前に相場が動くケースが殆どです。
何故なら世界には、世間が周知するより早い段階で情報を得る事ができる人達が沢山存在からです。
ヘッジファンドのスタイルの一つにイベントドリブンという手法があります。

いわゆる、これまで紹介してきた様な事象が起こった時を狙って相場に参戦するというものです。
イベント時は値動きが大きくなるため、たしかに大きな利益を採れるチャンスではあります。
しかし同時にリスクも高く、百戦錬磨のディーラーでも失敗する事が多い手法です。

反動が大きい事もそうですが、こういった局面では相場の流れが読めなくなるので、非常に難解です。
今回はファンダメンタルに対する為替市場の反応に関するセオリーを紹介してきましたが、必ずそのとおりになるという事ではありません。

やはり通常時の相場の方が流れを読みやすく、手堅いトレードができるのではないかと考えられます。

«記事作成ライター:神川 龍人»
大手邦系証券会社にて国際事務部門・FXブローカーにてフロント業務、及びカバーディーリング業務に従事・邦系ファンドにて運用業務に携わる。
現在はプロップハウスにてトレーダーとして従事しながら、マーケットに経済系セミナー等の講師も随時務める。

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