1998年の金融ビッグバンの一環である「外国為替および外国貿易法」で個人でも為替取引が可能になってから既に16年が経ちます。ですが、実際に日本でFXが本格的に浸透してきたのはここ10年位の事でしょう。

特にサブプライム問題が勃発する前の2007年前半までは円安基調が続いていたため、メディアも「株式に代わる投資媒体」としてFXを推していました。

元々現物の株式投資に馴染んでいる日本人にとって、当時の「外貨を買っておけば儲かる」というメディアの触れ込みは強烈なインパクトがあった事でしょう。

特に「FX投資を始めた人達の成功体験談」は投資未経験者の間でも広く認知され、市場に飛び込んでいく日本人は増大の一途を辿りました。

FX取引業者が台頭してきたのもこの頃で、この取り込みには大きく寄与しています。しかし2007年の7月以降、FX投資家も取引業者も大きな転機を迎える事となります。

米国の住宅バブルの崩壊です。その根幹となる証券化されたサブプライムローン債権が焦げ付き、一気に円高に転換しました。

信用取引や先物取引をこなしてきた投資家ならまだしも、FXの様な証拠金取引は大半の日本人にとって馴染みがありません。したがって損切りという概念に乏しく塩漬けにしてしまう傾向が強いです。しかし証拠金取引では一定以上の損失を含むと追証とロスカットが発生します。

ここで多くの損切りの出来ない投資家は止む無く損失を確定させられる事になり、資金の大部分を失ってしまいます。ましてサブプライムショックは歴史的な世界恐慌ですので、そこに到達するのもあっと言う間でしょう。

そんな事態に直面した投資家達には、FXに対し「怖い」という印象を持った筈です。恐らくこの時期の相場が、今日まで言われている「FXは怖いもの」というワードの起源かと思われます。

恐怖と絶望に駆られた投資家達は、FXの相場から雪崩の様に撤退していく事になります。ただその後のリーマンショックをはじめとした世界金融危機を経て、日本人の間にも「FXとはこういうもの」という事が認知されていきました。

「こういうもの」の中に「FXは下げ相場でもチャンスとなる」があります。いわゆる「空売り」という事ですが、これが現物主体であった日本人にとって馴染まないところだったのでしょう。

この頃「リーマンショック時に空売りで大儲け」などという触れ込みがメディアから頻発していました。そしてまた、FXの市場に回帰する日本人が増える事となったのです。

取引業者の第二次顧客取り込み施策

リーマンショックの市場への衝撃が一服していた2009年。

この年は金融庁によるFX取引業者への様々な規制が始まり、それまで横行してきた悪徳なFX取引業者などが淘汰されていきました。ただし規制はまっとうな取引業者にとっても、この規制は手痛い内容が含まれていました。

代表的なのがレバレッジの規制です。日本国内の証拠金取引業者で設定できるレバレッジの上限を20から30倍までに引き下げるという内容です。

この規制は投資家サイドにも反感を買い、多くのFX投資家は日本の取引業者を離れ、レバレッジ規制のない海外の取引業者に流れる投資家が続出しました。

そこで国内の各業者は顧客獲得のため、スプレッドの縮小に乗り出します。

元々規制前のFX業界は無法地帯であったため、ドル/円が10銭などという法外なスプレッドを設定している取引業者も存在していました。

ですので適正水準に向かうのであれば市場にとっても良い事なのですが、この競争は過度なものとなっていきます。

どこかの業者が0.1銭下げれば、別の業者がさらに0.1銭下げるといった様に、まるで一時期の牛丼屋チェーンの低価格競争を彷彿とさせるものでした。

その結果、ドル/円のスプレッドが0.3銭という破格のスプレッドが誕生しました。今やそういった取引業者はザラに存在しています。

FX取引業者の儲けのカラクリ

現在の日本のFX取引業者の設定するスプレッドは、世界でも群を抜いて安価です。それどころかインターバンクレートのスプレッドすら下回っている業者が存在します。

インターバンクレートとは銀行間で行う為替取引を行うレートで、いわゆるFX取引業者が提示している2WAYレートの元値となります。

インターバンクレートにもスプレッドが存在し、FXの取引業者はそこに利益とするためのスプレッドを上乗せして顧客に提示しています。

いわゆるインターバンクレートのスプレッドはFX取引業を行う上での仕入れ価格となるわけです。しかし日本の一部の取引業者の提示スプレッドは、その仕入れ値すら下回っています。

こうなると、顧客が取引をする度に取引業者が損失を被るという事になるため、本来有り得ません。

では、どうしてこの様な現象がおこっているのでしょうか。

これにはまことしやかに世間で言われている「FXの取引業者はノミ行為をしている」が鍵となります。

取引業者は顧客から注文を受けた時、自身が取引相手となって逆売買を行う事により顧客の注文を約定させます。そして取引業者は、インターバンクに顧客と同注文を出してリスクヘッジをします。

この行為をカバーと呼びますが、それを行うディ-ラーの腕が良ければ顧客からの受注からカバーディールまでのタイムラグで利益を得る事ができます。

これが本来のFX取引業者の業態なのですが、中にはカバーを行わない事も往々にあります。

例えば、顧客同士の注文を合わせて約定させるケースです。この場合は、取引業者はノーリスクとなります。

そして、もう一つが顧客と反対のポジションを取引業者がホールドするケースです。いわゆるこれがノミ行為と言われる所以でしょう。しかし実は、FX取引業者には「ノミ行為をしてはいけない」という規制などは無いのです。

先述の顧客と相対取引をする業態をDD(ディーリングディスク)方式と呼び、いわゆるノミ行為でも堂々と出来る裁量を持っています。しかしその場合、損益が逆というだけで取引業者も顧客と同等のリスクを背負う事になります。

では何故取引業者はこんな賭けをするのでしょうか。それは「FX参加者の9割強は負けている」という統計があるからです。

相対取引でカバーをしない場合、顧客の損失は取引業者の利益となります。したがって顧客と逆の取引をしていれば、9割強の確率で利益を得られるという事になります。

これならスプレッドを安くしてでも顧客を増やせば、その何倍もの利益が得られる公算となるはずです。

他にもある取引業者の介在による不振点

「取引業者がノミ行為を行っている」という事自体は、顧客にとっての不利益はありません。

何故ならそれは、顧客の取引によって取引業者側がどの様に損益が発生させるかの話であって、顧客の損益には関係ないからです。しかし中には顧客の損益に影響を及ぼす取引業者も存在していると思われています。

先述では、「顧客と逆のポジションを保有していれば9割強の確率で利益になる」と書きましたが、唯一取引業者の脅威となり得るのが、相場の急変動と顧客が大きい数量での取引をする時です。

これで顧客が利益を取る事になるとしたら、取引業者にとっては痛手です。

現にスイスショックでは、多くのDD方式を採用している取引業者が倒産する事となりました。

このような事から世の中では下記の現象を、「取引業者が介在しているために起こっているのではないか」という疑惑が蔓延しています。

スリッページ

発注と約定の間に明らかなタイムラグが発生するという現象です。
これにより、利益減少、損失拡大、損失転換などの不利益が発生するというものです。
またこれは予め値段を設定している指値注文でも起こります。

約定拒否

注文が弾かれる現象です。
特に取引数量が大きい注文を出した場合や、超短期取引を行っていると起こる傾向があります。

ストップ狩り

設定している逆指値(損切り)のポイントに向けて長い髭が出て、損失を確定させられてしまうという現象です。
これは市場に参加している大資本の機関投資家などが、ストップが多い相場の水準に向けて行う事もありますが、取引業者がストップ狩りをした場合、出ていたはずの長い髭が後から見たら消えている事があります。これら以外にも疑惑となるケースは多々存在します。

しかし為替相場自体の動きや、通信環境が原因である場合もあるので、「取引業者が操作している」とは一概に言い難い部分もあります。

DD方式以外の取引業者

ここまで紹介してきたのは、店頭取引のDD方式を採用している取引業者の内容でしたが、これとは別に、異なる業態を採用しているFX取引業者も存在します。

店頭取引

DD(ディーリングディスク)方式
ここまで紹介してきた業務形態であり、日本の取引業者の殆どが採用しています。
取引業者の裁量の範囲が大きいため、スプレッドやスワップの優遇や、キャンペーンの開催といった独自のサービスが展開されている事も多いです。

NDD(ノンディーリングディスク)方式
海外の取引業者に多い業務形態です。
顧客の発注が取引業者を経由して自動的にインターバンクに流れます。
顧客との相対取引もせず、カバーディールも無いため透明性はありますが、その分取引業者の利益となるスプレッドは高くなります。

◆取引所取引

主に東京金融取引所が行っているくりっく365の事を指します。
取引所を通すので信頼性は高く、様々な制度のもと運営されているためDD方式の様な不透明さもほぼありません。
逆を返せば、スプレッドもスワップも業者毎に横並びであり、DD方式にある様な独自サービスは皆無です。

どんな形態を採用している取引業者でもやはり一長一短です。やはり自身がFX取引に臨むにあたり、何を重視するかという事が問われてきます。

現在は海外業者も含め沢山の選択肢があるので、自身に合う取引業者は必ず見つかると思われます。

«記事作成ライター:神川 龍人»
大手邦系証券会社にて国際事務部門・FXブローカーにてフロント業務、及びカバーディーリング業務に従事・邦系ファンドにて運用業務に携わる。
現在はプロップハウスにてトレーダーとして従事しながら、マーケットに経済系セミナー等の講師も随時務める。

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