買い物で貯めたポイントを投資信託や株に交換できるサービスが注目を集めている一方で、日本の投資に向けられる家計の比率は、欧米と比較し低いままだ。今回は、国内の家計の状況やFintechがもたらす新しい投資手段についてレポートしてきたい。
米・英国と比較する日本の家計の金融資産の状況
家計に占める金融資産比率は米国の45.4%、英国の35.7%に対し日本は18.8%と低く、代わりに貯蓄比率が高い(51.9%)傾向となっている。(参照:金融庁レポート 2017年)
各国の家計金融資産の推移
家計の金融資構成の影響が、米国・英国と比較し、日本は金融資産の伸びが緩やかなものになっていると考えられる。
運用リターンによる各国の家計金融資産の推移
実際、日米英の家計金融資産の伸びを、ネットの資金流入と運用リターンとに分けた場合、
日本の運用リターンは、株式・投信等の比率が比較的高い米英と比べて、相当に低い水準で推移していることがわかる。
各国の家計金融資産の推移
金融庁は「貯蓄から資産形成へ」のスローガンを掲げ、今、積立型NISAやiDeco(個人型)といった商品が登場し、より投資が身近になってきている。特にiDecoは口座開設数30万(2017年9月1日現在)と、積立額に応じた非課税枠があり、個人事業主や会社員に人気が出ている。
日本で家計の投資比率は向上するか
金融庁長官が「金融機関が販売する投資信託はまともな商品がない」といった銀行窓販などリテールの金融業界を名指した身内批判とも取れるコメントを発表し、話題を呼んだ。
このことからも金融商品を購入する際には、自己責任の範疇で、投資へのリテラシーを身に着ける必要があるが、実際には投資判断を自らできるレベルの複雑で幅広い金融の知識を身に着けるのはそう簡単ではない。そのため、より手軽でより安全性の高い資産運用サービスが登場しない限り、日本国内での家計の投資比率は向上しないのではないだろうか。しかし、今、Fintechが投資環境を一変させようとしている。
投資へのハードルを下げる投資環境が整いつつある
「金融×テクノロジー」を融合したFintechの流れから、AIが資産運用するロボアドバイザーやソーシャルレンディング(投資型クラウドファンディング)など、従来の株式投資や投資信託といった金融商品を購入する手段からより手軽に、より簡単に投資ができる環境が整ってきている。さらに普段の買い物で自然に溜まったポイントを投資に向けることができるサービスも各社から提供され始めている。
買い物で取得したポイントを投資に回す
クレディセゾンでは、クレジットカードのポイントで投資信託を購入できる仕組みの提供を始めている。また、STOCK POINT(東京都千代田区)では、好きなお店の商品を買って貯まったポイントで、その会社の株主になれる仕組みを2017年中に始める予定だ。
STOCK POINTの仕組み
STOC KPOINTの仕組みは、株価に連動してポイントの価値が毎日変動してくのが特徴だ。購入した商品の企業の株価と連動しており、株価によってポイントの価値が上下し、さらに貯まったポイントを実際の株式と交換することができるという。
企業のメリットとは
企業は商品だけでなく、事業戦略や価値観にも興味を持ってもらうことで、安定株主を獲得することが期待できるという。業績や株価だけで短期売買する株主よりも、自社の商品(サービス)・理念に共感してもらえ、長く自社を応援してくれる株主が増えることは、企業としても目先の利益よりも顧客満足度の向上や新商品の開発、成長への投資といった、中長期で取り組むべき課題にも株主の理解を得やすい環境ができるかもしれない。
STOCK POINT株式会社の土屋清美代表によれば、「”投資をするぞ“という肩に力を入れることなく、日々の生活の中で、自然に投資活動が始まり、投資によって新しい気づきを得たり、ユニークな体験が提供できるサービスにしていきたい」という。
土屋清美代表の略歴
東京工業大学理学部卒業。電通国際情報サービスにて、銀行の市場系や海外系のシステムの開発と立ち上げに従事。その後、ネット金融機関向けの金融情報提供サービスをメインに行うベンチャーに所属した後に、2006年、Sound-Fを設立。2016年、STOCK POINTを設立。
「ポイント×投資」が日本の投資ハードルを下げる
ポイントを投資に向ける一番のメリットは、日々の生活で貯まったポイントで投資ができる点だ。
投資へ踏み出せない人に共通しているのは、「まとまった資金がない」「手続きが面倒」「投資リスクが怖い」といった理由が投資へのハードルになっていることは想像に難しくない。
しかし、日々獲得できるポイントを使って投資を始められれば心理的なハードルがなく、投資への第一歩を踏み出すことがえきるのではないだろうか。
また、株価に連動するポイントなら株主として、会社の業績やビジネスモデルへの興味はもちろん、株価に影響を与える経済や政治など、あらゆるニュースにも興味が沸き、自然と投資家としての基礎を身に着けることにつながるかもしれない。
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