低金利が続く日本。低金利どころか「マイナス金利」の文字が紙上を躍る昨今、個人の資産運用についてもさまざまな投資スタイルが模索されています。

膨らみ続ける赤字国債への不安、少子高齢化なる構造的問題もあり、国内から国外へ投資の目を向け始める人はますます増えています。
2000年代ごろから始まった日本人の海外不動産投資も、こうした流れのひとつ。まだ歴史は浅いものの、資産の分散投資の広がりによって、特別な人だけのものではなくなっているようです。
とはいえ、分からないことだらけの海外不動産投資。“イチ”から学ぶために、まずその歴史から調べてみました。

2000年代の中国で不動産投資が活発化

日本における海外不動産投資ブームは、2002年ごろ、上海などの中国都市部に始まります。
当時の中国は市場経済の導入が進み、急速に経済が成長。まさに世界の経済大国に向かってばく進する過渡期に不動産投資ブームは幕開けします。

中国には「土地は国家のものである」という独自の考え方があります。「国家所有」=「全人民所有と集団所有」=「労働大衆集団所有」という二元的公有制の現行法の下、国が使用権という形で土地を事業者に払い下げ、大規模な開発が始まるようになります。また、1998年には、国による住宅支給制度は終わりをつげ、ローン普及をはじめとする住宅取得促進政策の進行や、海外企業の進出を受け、大都市部は建設ラッシュに沸いていきました。

不動産高騰。バブル崩壊を食い止める政策を講じるものの

そして、2003年ごろから中国国内の不動産価格は一気に高騰し、2006年ごろには投機的な取り引きも増大します。その前年の2005年には、中国政府は海外政府からの圧力もあり、人民元の2.1%の切り上げを実施。固定相場制から管理変動相場制へと移行したことにより為替メリットが増大し、日本人投資家でも“大儲け”をした人も少なくありませんでした。
しかし、不動産高騰による弊害も見え始め、中国政府は住宅価格抑制策などを打ち出し、バブル崩壊を食い止めるべく政策を講じます。近年では、外国人による不動産購入の規制が緩和されていますが、次第に海外投資家の目線は、東南アジアの不動産市場へと向かっていきました。

住みたい国No.1のマレーシアに、世界中から投資家が流入

2010年ごろから第2次海外不動産投資ブームとして、マレーシアが注目されるようになります。
マレーシアは長い間、外国人の不動産購入に対して厳しい規制を設けていたため、海外マネーの流入もなく物件は格安な状態が続いていました。しかし2006年ごろにはこうした規制が解除され、海外投資家に門戸が開かれるようになります。

さらにマレーシアでは、非居住者でも現地銀行ローンを利用できるメリットがあり、中国での成功体験に後押しされるように世界中から投資家が流入するようになっていきました。
マレーシア政府は、「第10次マレーシア計画(2010年~2015年)」「第11次マレーシア計画(2016年~2020年)を進め、クアラルンプールなどは急速な都市化を遂げていきます。実質GDP成長率は5%前後で堅調に推移。一人あたりの名目GDPは1万ドル近くになり、個人消費も拡大。その理由は様々で……、●住宅価格が割安 ●インフラが整備され自然災害が少ない
●物価が安い  ●親日的  ●英語が通じやすい
こうした環境は投資家に好まれ、また長期滞在ビザの取得も簡単であったことから、海外投資家がどっと流れ込むことになります。

不動産価格高騰後、一時期の過熱ぶりはひと段落

しかし、不動産価格が高騰し、住宅がマレーシア国民の手の届かないようになった現状を懸念した政府は、2014年に「100万リンギット(約3000万円)以上の物件でなければ、外国人は購入できない」という規制を設けました。それ以降、以前は簡単に取得できた長期滞在ビザも、一定金額以上の財産証明が必要になるなどハードルが上がっています。住宅価格は年5%で緩やかに上昇している人気のマレーシアですが、こうした規制により一時期の過熱ぶりはひと段落しています。

政治経済的にみると、2016年に起きた原油安に端を発したリンギット安による経済の不安定感や、インフレ率の上昇などの問題もあります。とくにインフレ率の抑制がマレーシア経済の発展とリンギットの上昇には欠かせないため、その推移を注視していく必要がありそうです。

ASEAN諸国の中で大人気のフィリピンは、人口ボーナス期に突入

マレーシアをはじめとするいくつかのASEAN諸国(東南アジア諸国連合)で不動産投資が人気なのは、かつての日本の高度経済成長期のように、高い経済成長と人口増加が見込め、将来的な不動産価格上昇による大きなキャピタルゲインまたは高いインカムゲインが期待できるからにほかなりません。

現在ASEAN諸国のなかでも、特に人気が高いのがフィリピンです。
フィリピンの人口は1億人を突破。平均年齢は23歳と若く、国連中位推計によれば人口増加は2091年まで続くと予測されています。
人口ボーナス期の入り口に入ったところで、実質GDP成長率も約6%で堅調に伸びています。ちなみにフィリピンではマレーシアのような規制がないため1000万円前後の物件の投資も可能で、相対的に手の届きやすい投資物件が多いといえます。不動産投資先としては魅力的であり、成功すれば高利回りの安定収益を生む物件を手に入れる可能性もあります。

中長期的に住宅需要は衰えることがないと思われていますが、建設ブームに沸く首都マニラでは、投資用に適した1000万円程度の物件が供給過多になっているとの声も聞かれ始めています。人気の地でも物件選びには慎重になる必要があるでしょう。

── これから成長する国で格安に不動産を購入し、値上がりを期待するのが新興国投資といえます。成功例も失敗例もさまざまな要因がありますが、歴史が教えてくれるのは、新興国投資において購入のタイミングの見極めは不可欠であり、国の事情に精通していることや自分でさまざまな角度から下調べすることがとても重要だという点です。経済成長や人口増加メリットもさることながら、その国の政治状況や地政学的リスクなども加味して考えていくことが、いつの世も大切であることに変わりはないでしょう。

経済成長と人口増が需要を生む

海外不動産投資とは、これから成長が期待される開発地などの物件に投資して、実際に値上がりしたところで売却することで利益を得る「キャピタルゲイン」、賃貸物件として貸し出すことで家賃収入を得る「インカムゲイン」を指します。

いずれにしても経済が安定的に成長しているとともに、消費拡大、国民所得増、人口増加、住宅価格や家賃収入の上昇……といった側面から高いリターンを得る可能性があるところをいち早く見つけることが、利益を得るための必要条件になります。

たとえば人気のフィリピンをみると、人口は1億人を突破。平均年齢は23歳と若く、国連中位推計によれば人口増加は2091年まで続くと予測されています。人口ボーナス期の入り口に入ったところで、実質GDP成長率も約6%で堅調に推移。経済成長と人口増による不動産需要が見込まれるうえ、1000万円前後の投資物件も多く、相対的に手の届きやすい価格帯が多いと言えます。
しかしいずれにしても、海外での不動産投資ゆえのリスクについて十分に理解して投資をすべきであることはいうまでもありせん。

一部地域では供給過剰も

たとえば、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム、カンボジアなどのアジアの国々は、近年インフラも整備され、投資用マンションも多く建設されるようになりました。東京都心と同等程度の立地にあるコンドミニアム(高級マンション)でも、価格は約3分の1から4分の1と相対的に安価であり、心動かされる物件も多く存在します。

しかし、多くの投資家が殺到すれば、需要と供給のバランスが崩れるのは当然のことであり、地域によっては供給過剰で空室が目立つようになっています。
また、マレーシアの南部ジョホールバルで「イスカンダル計画」と言われる大規模な開発が進められ、経済成長率も確実に上昇している一方、首都クアラルンプールでは不動産価格が高騰し、一部は住民の手の届かないものになりつつあります。いくら成長が見込める地域とはいえ、買い手や借り手がつかなければ、「宝の持ち腐れ」になることは言うまでもありません。

売却という最終目標を達成するために、どのような環境的リスクが存在しうるのか、自分の皮膚感覚で確認し、情報収集を怠らないことは重要なことと言えるでしょう。

管理、運営、売却は誰に任すのか

海外不動産投資では、情報収集も含めどのような会社とつき合うかがとても大事になります。失敗する要因として、
●購入後の管理や運営を誰に任せたらいいのか
●売却までの道筋をどのように立てたらいいのか……が分からなくなってしまうことにあります。

日本の場合、物件購入の際に大手デベロッパーに任せておけば、購入後もきめこまやかなメンテナンスや手厚いフォローを行ってくれる印象があります。しかしながら新興国の場合、不動産仲介会社は売買契約を結んだら引き渡しまでで、その後のアフターフォローにはタッチしないケースが多く見られます。また仲介会社がメンテナンス等の力になってくれたとしても、担当者が代わってしまった場合、対応があいまいになってしまうケースも。

さらに東南アジアには、工事が着手される前に物件を購入できる「プレビルド(Pre-build)」と言われる前払い方式があり、その方法を採用すれば割安で物件を購入することができます。しかし、前払い金を支払ったにもかかわらず、計画が途中で破綻してしまい、お金も戻ってこないというトラブルも聞かれます。

高利回りの安定収益を得るために

信頼できる不動産仲介会社を選ぶ……。
これはある意味、当たり前のことかもしれませんが、海外での不動産投資でリターンを得る可能性を高めるためには、さまざまなリスクを想定し、それらを回避するための実行力のあるエージェントを見つけることは必要不可欠です。

こうした点を考慮してもなお、海外不動産投資が魅力なのは、日本の高度経済成長期のような成長を見せる国で、立地や時期、物件選びなどを見極めて投資を実行したことで、確実にキャピタルゲインを得た成功者がいるからでしょう。

物件購入を考える際には安易に飛びつかず、おつき合いする会社がどこまで確実に対応してくれるかを見定め、その信頼性について時間をかけてきちんと確認していくことが必要です。また、仲介会社任せにすることなく、自分自身でその国について調査し、情報収集を怠らない……。こうした姿勢がリスク軽減につながることは間違いない、といえるでしょう。

≪記事作成ライター:ナカムラミユキ≫
石川県金沢市在住。広告制作会社にて、新聞広告を手がける。映画、舞台からメーカー、金融まで幅広い記事広告を担当。著名人インタビューや住宅関連、街歩きコラム、生活情報まで興味の赴くまま執筆しています。

- スポンサーリンク -
- スポンサーリンク -
- スポンサーリンク -

関連記事:

海外投資/オフショアファンドの窓口【IFA無料紹介サービス】
日本と世界の学資保険比較!元本保証140%の海外積立商品
海外積立投資メイン3社の比較と評判
ヘッジファンドは投資信託比較で手数料10倍!でもリターンは3倍!?