投資を初めてする人にとっては大変心強いNISAという制度。しかし、名前は知っていても具体的にどのような制度なのか知らないという方も多いのではないでしょうか。今回はNISAという制度の概要、利用方法から、他の投資手段と比べたときのメリット・デメリットまでをまとめてご紹介したいと思います。
NISAは投資で得た運用益に税金がかからなくなる制度
NISAとは、株式投資や投資信託などで得た運用益にかかる税金が、一定額まで非課税になる制度です。NISA用の専用口座を開設し、そこで得た運用益にかかる税金が0円になるため、一般口座で投資をするよりもよりお得に利益を挙げられます。NISAは日本に居住する20歳以上の人ならば、原則誰でも開けます。イギリスのISA(アイサ、Individual Saivngs Accountの略)という制度を参考に作られたもので、ISAはイギリスでは概ね高い評価を得ています。
通常の普通口座などで投資をした場合、その運用益の20%の税金がかかります。例えば、100万円分株式を購入し、それが120万円になった段階で売却した場合、20万円の利益なので20万円×20%=4万円も税金で取られていってしまいます。しかし、NISAという制度を利用すれば、この税金を0円にすることが可能になります。
NISAの上限額は120万円
ただし、無制限に運用益が非課税になるわけではありません。現時点では非課税の枠は1年に付き120万円までと定められています。この120万円という枠は投資元本の枠であり、売却益の枠ではありません。例えば120万円を元本に1000万円の運用益を上げた場合は全て非課税となります。元本が120万円を超えるものには投資できません。
また、非課税枠は来年以降に持ち越すことはできません。例えば2017年の非課税枠を50万円しか使わなかった場合、余った70万円を翌年に持ち越して、2018年は190万円分非課税にする、といったようなことはできません。前年どれだけ非課税枠を使ったかに関係なく、2018年の非課税枠は120万円です。
そして、非課税枠は売却をしても再利用はできません。例えば2017年3月に100万円の金融商品を買って4月に105万円で売った場合、2017年はあと20万円分しかNISAの枠の中では投資できません。
非課税枠は5年まで使える
例えば、2017年に120万円の非課税枠を使って株を買ったとします。この株をずっと売却せずに持ち続けることはできません。5年経ったら(2022年になったら)、その時点で売却するか、2022年分の非課税枠に移すか、一般口座に移すかを選択しなければなりません。ただし、2022年時点での金額が120万円を超えている場合は、その部分は2022年分の非課税枠には移せないので、売却か一般口座に移すかしなければなりません。
NISAの制度はいつまで続く?
NISAは2023年までは少なくとも続くことが決定しています。特に制度に変更が加えられなかった場合、2014年1月1日以降にNISA用の口座を開設することはできないので注意が必要です。ただし、これは現時点での話であり、今後伸びる可能性もあります。
NISA口座はネット証券で作るのがオススメ
NISAを始めるためには、銀行や証券会社などの金融機関で、NISAのための口座を作る必要があります。普通の口座で勝手に投資をして、あとでNISAの枠を使いたいと申し出ても通らないなので気をつけてください。
また、NISA口座は原則として1人1口座しか持てず、金融機関の変更も1年に1回しかできません。手続きも面倒なので、なるべく制度終了までずっと使い続けられる金融機関を選ぶようにしましょう。
金融機関を選ぶポイントはいくつかありますが、特に重要なのは取り扱っている金融商品の数と手数料です。銀行は投資信託の取扱はあるものの株式や債券の取扱がなく、また投資信託の本数も少ないうえに手数料も高いので、基本的にはおすすめできません。
証券会社は投資信託、株式、債券など様々な金融商品を取り扱っているので、基本的にはこちらを選びます。
特に楽天証券やSBI証券などのネット証券は取扱本数が多く、なおかつ手数料も少ないですが、その分サービスは簡素で、店まで行って証券会社の社員にアドバイスを貰うようなことは通常はできません。一方、店舗型証券は手数料が高めな代わりに対面での説明が受けられます。
ただし、証券会社の社員は投資家に有益な情報を渡すとは限らず、むしろ証券会社にとって都合のいい情報を提供してくる可能性もあります。当サイトではネット証券で口座を開設し、投資に関する勉強は自力で行うことをおすすめします。
NISA口座開設の手順
NISA口座開設の手続きの方法は金融機関によって違いますが、ネット証券の場合はまずはネットで申し込み、その後送られてくる申込書に必要書類を添えて郵送で提出する、という流れが一般的です。
提出する書類も金融機関によって多少違いますが、個人番号カード、マイナンバーの通知カード、住民票の写し、運転免許証、保険証などが必要になることが多いです。事前に金融機関のホームページで流れと必要書類を確認しておきましょう。
なお、口座開設申請の書類を郵送しても、すぐに口座が開設されるわけではありません。NISAは1人につき1個しか持てないものであり、税務署が重複して口座を開設していないかの確認作業を行うためです。作業には1週間~3週間程度かかることがありますので、NISAを始める予定がある人はなるべく早めに申込んだほうが良いでしょう。
口座開設後は、金融商品を決める
口座を開設したら、いよいよ投資の対象にする金融商品を選んでいきます。どの金融商品を買えば値上がりするかは誰にもわかりませんが、投資のスタイルに応じて選ぶべき金融商品と避けた方がいい金融商品があるのは確かです。
投資初心者で、あまり大きなリスクは負わずに投資を勉強したいという方には、積立投信がおすすめです。積立投信とは投資信託の中でも、毎月一定額を積み立てて行うものです。通常の株式投資などと違い、最初にまとまったお金を用意する必要が無いため、比較的気軽に参加できます。
また、毎月一定額を積み立てていくため、基準価額(投資信託の株価のようなもの)が安い時はたくさん買い、高い時は少しだけ買うようになり、平均購入単価を避けられるというメリットもあります。
また、投資信託には様々なファンドがあります。ファンドとは投資信託で買える金融商品のことで、株式や債券、不動産投資などの詰め合わせのことです。例えば国内株式ファンドを買うということは、国内株式の詰め合わせを買うということです。
実際にどのような株式を詰めていくかは、運用のプロであるファンドマネージャーが決めてくれます。投資家が決めるのは、どのような詰め合わせを買うのかだけです。ファンドマネージャーでも間違うことはありますが、素人よりはその可能性が低いです。
ファンドには複数の性質の金融商品を詰め合わせたものもあります。このようなファンドをバランスファンドと言います。例えば、外国株式、外国債券、国内株式、外国債券をそれぞれ25%ずつの割合で買う、と言った感じのファンドです。
むろん、外国株式ファンド、外国債券ファンド、国内株式ファンド、外国債券ファンドをそれぞれ別々に買っても良いのですが、4つもファンドを選ぶのは面倒です。バランスファンドならば1つでリスク分散が図れます。
ファンドによってリターンとリスクは異なる
ファンドによってリターン(予想される平均利回り)とリスク(平均利回りから外れた結果が出る可能性)は異なります。基本的にはリターンとリスクは比例する関係にあります。
なので大きく稼ぎたい場合はリスクを許容せざるを得ず、逆にリスクを取りたくない場合はリターンを犠牲にせざるを得ません。あちらを立てればこちらが立たず、が投資の原則なのです。自身のリスク許容度に応じて、ファンドを選んでいきましょう。
個別投資はハイリスクだが、当たれば大きい
ファンドのような詰め合わせでなく、特定の企業の株式や債券を購入する投資スタイルを個別投資と言います。個別投資はファンドと違い一つの銘柄に資金を投入するため、必然的にハイリスクになります。ファンドはたとえ詰め合わせ内の銘柄が1つ暴落しても全体に与える影響は少ないですが、個別投資はその銘柄の暴落が致命傷になりえます。
ただし、逆の立場から考えた場合、ファンドの詰め合わせ内の銘柄が1つ暴騰しても大した利益にはなりませんが、個別投資はその銘柄の暴騰の恩恵を100%完全に受けることができます。個別投資はとにかく当たれば大きいのです。特に中小企業の個別株は株価が変動しやすく、その傾向が強いです。
NISAでは変えない株もある
なお、個別投資の注意点として、120万円の枠に収まらないケースが出てくる可能性があることが挙げられます。
株式投資には単元株という単位が定められています。株式投資では、単元株の整数倍での取引しか行なえません。例えば単元株が100株と定められている場合、100株や300株、1000株での取引はできますが、50株や120株、777株での取引はできません。
単元株は通常100株、もしくは1000株です(1株の場合もありますが稀です)。そのため、例えばある時点での株価が2000円で単元株が1000株の場合、投資をするには最低でも200万円が必要になり、NISAの枠をはみ出してしまうため買うことができないという欠点があります。この場合は別の銘柄を買うか、NISA口座ではない一般口座で買うしかありません。
また、株価が700円で単元株が1000株の場合、1000株は70万円なので買えますが、2000株は140万円なので買えません。1000株買った場合、120万円の枠の内50万円が余ってしまいもったいなく感じるかもしれません。枠を使い切りたい場合は、この部分に投資信託を入れるなどして柔軟に対応していきましょう。
確定拠出年金 vs NISAどちらがよりお得?
NISAと同じく運用益が全額非課税になる制度に、個人型確定拠出年金(iDeCo)という制度があります。確定拠出年金は毎月自分で決めた掛け金を拠出して自ら投資信託を行い、元本に運用益を加えた額を将来年金として受け取れる制度です。どちらも運用益が非課税になりますが、違いもあります。
確定拠出年金は最大月間6万8000円、年間81万6000円までしか掛けられない
NISAは年間120万円までしか運用できません。仮に積立投資をする場合、月間では10万円まで拠出することができます。
一方、確定拠出年金はその人の立場によって掛け金の上限が変わってきます。
例えば、企業年金がない会社の会社員、および専業主夫は月間2万3000円(年間27万6000円)まで掛け金を拠出できます。企業年金がある会社の会社員は、企業年金の拠出額にも左右されますが、月間2万3000円を超えることはありません。
一方、自営業者や経営者の場合は月間6万8000円(年間81万6000円)まで拠出できます。ただし、国民年金基金に入っている場合は、そちらの掛け金と合算で月間6万8000円までとなります。例えば国民年金基金の掛け金を毎月2万円払っている場合、確定拠出年金の掛け金は4万8000円までとなります。
確定拠出年金は原則60歳まで引き出せない
確定拠出年金の特徴として、60歳までは原則として引き出せないことが挙げられます。確定拠出年金は年金ですから、途中で引き出せてしまっては意味がありません。
どうしても掛け金が払えない場合などは中途脱退することはできますが、脱退しただけで掛け金が戻ってくることはありません。脱退一時金がもらえるのは非常に稀なケースであり、基本的には60歳までもらえないものと思ったほうがいいでしょう。
一方、NISAはそうした制約はないので、いつでも引き出したい時に引き出せます。これだけ見るとNISAのほうがより優秀に見えますが、一概にそうともいい切れません。確定拠出年金は60歳まで引き出せませんが、これは見方を変えれば無駄遣いしてしまう可能性がないともいえます。一方、NISAは好きな時に引き出せるので、せっかく上がった利益を無駄遣いしてしまうかもしれません。
将来使うことになるであろう年金資産を作るには、原則途中で引き出しができない確定拠出年金のほうが向いているという一面もあります。
確定拠出年金は掛け金が全額所得控除の対象になる
確定拠出年金の最大のメリットは、掛け金が全額所得控除の対象となり、税金が安くなることです。
所得税や住民税は収入から経費を差し引いた「所得」から所得控除を差し引いた「課税所得」に税率を掛けて計算します。所得控除が増えれば課税所得が減り、税金が安くなるのです。
所得控除とは、一定の条件を満たした場合に課税所得が減る仕組みのことです。例えば、同じ所得がある人でも、健常者と障害者では税負担能力が違います。より税負担能力が低い障害者は、「障害者控除」という所得控除を利用することによって自身の税負担を健常者よりも低くすることができるのです。
そして、所得控除の一つに「小規模企業共済等掛金控除」と言うものがあります。確定拠出年金に加入した場合、掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。例えば毎月5万円、年間で60万円の掛け金を拠出した場合、課税所得が60万円減ります。仮に所得税率が20%とした場合、60万円×20%=12万円ほど所得税を減らせます。住民税は原則一律10%なので、60万円×10%=6万円安くなります。
一方、NISAにはこのような制度はないため、いくら投資をしても課税所得は減らず、税金も安くなりません。
NISAは若い時に使う資金を作るのに最適!
このようにNISAと確定拠出年金にはいくつかの違いがあります。年金資産を築くためには所得控除の対象となる確定拠出年金のほうが有利ですが、NISAは自由に引き出しができるため、若い時に使う資金を作るのに向いているというメリットがあります。もちろん、投資に失敗する可能性はありますが、少なくとも普通口座よりはNISAで投資をしたほうがずっとお得です。
そう遠くない将来に備えたいのならば、NISAを使うことをおすすめします。
関連記事:
→海外投資/オフショアファンドの窓口【IFA無料紹介サービス】
→日本と世界の学資保険比較!元本保証140%の海外積立商品
→海外積立投資メイン3社の比較と評判
→ヘッジファンドは投資信託比較で手数料10倍!でもリターンは3倍!?